【ホンダ フィット 新型試乗】「柔よく剛を制す」走り、Bセグのベンチマークに…片岡英明

優しい顔つきに個性、新HVも目玉の4代目フィット

走りの印象は「柔よく剛を制す」

Bセグ・コンパクトカーのベンチマークになる

ホンダ フィット 新型
ホンダ フィット 新型全 16 枚

2001年に登場し、コンパクトクラスを代表する2BOXにのし上がったのがホンダの『フィット』だ。成功作となった理由のひとつは、革新的なパッケージングにある。

歴代のフィットは、独創的なセンタータンクレイアウトの採用により、クラスを超えた広いキャビンスペースを実現した。しかも全幅を小型車枠の1700mm以下に収め、全高も立体駐車場を使える高さに抑えるなど、日本のユーザーを第一に考えたボディサイズとしている。これも好評を博している理由のひとつだ。

優しい顔つきに個性、新HVも目玉の4代目フィット

ホンダ フィット 新型「クロスター」ホンダ フィット 新型「クロスター」
その4代目は、2019年10月に開催された東京モーターショーでワールドプレミアを果たした。驚かされたのはデザインである。3代目はウエッジシェイプの男性的なデザインで、好き嫌いが分かれた。これに対し4代目は、フランス車を思わせるキュートなルックスに生まれ変わった。顔つきも2代目のように優しい。ボディサイズは発表されていないが、3代目に限りなく近いはずだ。新型フィットは5つのシリーズで構成され、SUV感覚のクロスターも設定するなど、個性を強めている。

インテリアは、先代より開放的なデザインで、水平基調のインパネは高さ方向を低く抑え込んだ。インパネ上面が平らだし、2本スポークのステアリングだから新鮮な感覚である。前方と側方の視界もいいからリラックスしてステアリングを握ることができた。

ホンダ フィット 新型「HOME」(東京モーターショー2019)ホンダ フィット 新型「HOME」(東京モーターショー2019)
ルーミーなキャビンは、広さに関してもライバルを相手にしない。フロントシートは満足できるサイズで、厚みも増している。ドライビングポジションも改善され、自然な姿勢で座れた。リアシートはリクライニング機構を省いたが、こちらもクッションの厚みを増しているから座りやすい。膝もと空間も次期『ヤリス』より10cmくらい余裕があった。ラゲッジルームも広く、形状がいい。

パワーユニットは2種類に絞り込まれている。1.5リットルの直列4気筒DOHCエンジンにモーターのハイブリッドシステムは一新された。鳴り物入りで登場した「e:HEV」は、『インサイト』などに使われている2モーター式のi-MMDスポーツハイブリッドをフィット用にアレンジしたものだ。優れた熱効率の1.5リットル直列4気筒DOHC・i-VTECエンジンに駆動用と発電用、2つのモーターを組み合わせている。トランスミッションはツインクラッチDCTではなく、電気式の無段変速機(CVT)とした。

走りの印象は「柔よく剛を制す」

ホンダ フィット 新型ホンダ フィット 新型
その最終プロトタイプのステアリングを握ったのは、北海道にあるホンダのプルービンググラウンドだ。ハイブリッド車は、アクセルをジワッと踏み込むと、スッと軽やかに加速していく。先代のフィットと違ってEV走行の領域が広く、すぐにはエンジンがかからなかった。アクセルを強く踏み込むとエンジンで発電を行い、その電力を使ってモーターを駆動する。基本的には『ノート e-POWER』と同じシリーズハイブリッドだが、余裕と上質感は一歩上の印象だ。パンチがあり、応答レスポンスも鋭い。また、ツインクラッチと違い、変速ショックがなく、シームレスな加速を見せた。

自然なドライブフィールも新型フィットの美点に挙げられる。アクセルを踏み込むと、それと連動してエンジン回転も上昇した。だから違和感がない。静粛性も1クラス上と感じられた。バッテリーは小容量だから発電のためにエンジンがかかる場面は多い。が、遮音対策を上手に行っているから静かだ。高速走行時の風切り音とエンジン音が耳につかない。

ホンダ フィット 新型ホンダ フィット 新型
ガソリンエンジンは1.3リットルの直列4気筒DOHC・i-VTEC(可変バルブタイミング&リフト機構)だけに絞り込まれ、1.5リットルエンジンは消滅した。この改良型の1.3リットルエンジンにCVTを組み合わせている。ドライバビリティは先代の1.3リットルモデルより優れており、実用域のトルクも不満のないものだ。アクセルを踏んでいくと最適なゾーンに導き、低速走行を試しても扱いやすい。平坦路で1、2名乗車ならストレスのない走りを見せた。実用燃費も悪くないはずだ。が、登坂路ではちょっと非力と感じさせる場面があった。

走りの印象は「柔よく剛を制す」だ。シャシー性能とサスペンション性能を磨き、正確なハンドリングと軽やかなフットワークを手に入れている。サスペンションは、フロントがストラット、リアはトーションビームと、先代の形式を受け継いだ。ハイブリッド車は16インチタイヤを履き、可変ステアリングギアレシオをおごっていた。スポーティな味わいは薄れたが、自然な感覚で、狙ったラインに無理なく、正確に乗せることができる。コントロール性は大きく向上し、ワインディングロードでも意のままの走りを存分に楽しむことができた。

Bセグ・コンパクトカーのベンチマークになる

ホンダ フィット 新型ホンダ フィット 新型
ボディは見た目よりはるかに強靭だし、足の動きもいい。そして驚かされたのが、乗り心地のよさだ。路面の凹凸をしなやかに受け流す。ブレーキング時の挙動安定している。可変ステアリングギアレシオを採用し、16インチタイヤを履いたハイブリッド車と比べると、15インチタイヤの1.3リットルモデルは格下の印象を受けた。ハンドリングと乗り心地はよくなっているが、タイトコーナーでの一体感やトレース性、コントロール性は及ばない。荒れた路面での足の動きもと乗り心地も今一歩だ。

ホンダセンシングと呼ばれる運転支援システムは、大きくレベルアップした。全車速アダプティブクルーズコントロールとなり、安心感が増している。また、車線キープ支援システムも精度が大きく向上し、使えるレベルに達した。カーブでも上手に車線の中央を走り、操舵支援の修正アシストも上手だ。

スポーティグレードの設定がないのは不満だが、新型フィットは走りの実力だけでなく、快適性と安全性も大きくレベルアップさせ、ファミリーカーとして高い実力にあることを見せつけた。

4代目フィットは、先代と同じようにBセグメントのコンパクトカーのベンチマークになるだろう。それくらいトータル性能は高い。電動パーキングブレーキの不具合で発売は2月に先送りされた。だが、その間にブレーキ以外の弱点にもメスを入れ、商品性を高めてくるはずである。正式発売を楽しみに待ちたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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