“空の移動を当たり前のものに”次世代エアモビリティのプラットフォーマーを目指す…株式会社AirX 代表取締役 手塚究氏[インタビュー]

“空の移動を当たり前のものに”次世代エアモビリティのプラットフォーマーを目指す…株式会社AirX 代表取締役 手塚究氏[インタビュー]
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2020年の年初にモビリティ業界に一つのニュースが飛び込んだ。京浜急行電鉄がヘリを活用して三浦半島を周遊する観光サービスの実証実験を2月27~28日に実施するという。これは東京都内からヘリで直接三浦半島へ行けるというもので、移動時間の短縮や空のモビリティの新奇性から利用者を呼び込むことを狙っている。京急が選んだエアモビリティのパートナーが、ヘリコプターの相乗りサービスを提供しているAirXである。

MaaSとは異なるモビリティをひとつのサービスとしてつなぐ・利用できるサービスの概念であるが、これから急成長が見込まれているのが空の活用である。UberもUber Elevateというプロジェクト名(サービス名は「Uber Air」)でトヨタ含めた複数のグローバルパートナーと開発を急ピッチで進めている事業エリアである。日本においてエアモビリティの先駆者であるAirXは一昨年設立された「空の移動革命に向けた官民協議会」の構成員にも選ばれている。

空の移動革命とはどういったものか。AirXの取組むエアモビリティとはどのようなものか。海外と比べると遅れていると言われている、日本の短中距離移動領域での空の活用の将来はどのようなものか。今回AirX代表取締役の手塚究氏に聞いた。

手塚氏は、 1月30日開催セミナー【MaaS2020】陸・海・空~ネットワーキングセミナー~に登壇する。

なぜ空の移動というビジネスを選んだのか

---:手塚さんが交通分野、特に空の移動に関心を持たれたきっかけは?

手塚氏: 元々、交通分野には興味を持っていて、大学時代に主に鉄道、輸送、物流の最適化について、オペレーションズリサーチ分野における 輸送問題最適化に関する定式化・アルゴリズム設計の研究に従事していました。その後、大学院在学中に広告枠のリアルタイム取引(DSP/RTB)のソフトウェア開発を行う株式会社フリークアウトにジョインし、航空旅行業界の大中小様々な企業のマーケティングを支援や広告商品開発などを経験し、2014年のマザーズ上場を経て退職しました。その後、フリークアウトでの航空旅行業界の経験を元に、2015年2月に株式会社AirXを創業しました。

---:AirXとはどのような会社でしょうか?

手塚氏: 弊社は全国複数社のヘリコプター会社と事業提携し、サービスを提供しています。ビジネスモデルとしては、タイムズ、パーク24さんのような立ち位置を目指しています。つまり、タイムズさんが活用されていない土地を借り上げ、そこを駐車場として新たな価値を提供するビジネスモデルの空バージョンです。私たちは航空機も持たないですし、運航も行いません。

空の移動をもっと一般化したい

---:空の移動におけるプラットフォーマーを目指しているということですか?

手塚氏: はい。現在日本には稼働してない小型の航空機が800機ほどあります。そういう稼働していない航空機を弊社が飛行時間で小分けにし、ユーザーに向けてリーズナブルな価格で提供を行います。これにより利用者は空の移動がより身近になりますし、事業者にとっても、航空機の空きスペースの活用が促進されます。他の交通手段だと今まで行けなかったところや、距離や時間の制限があって今まで行けなかった場所により速く行けるようになります。

これが日常で使用できるようになると、普段の生活や、余暇の使い方など、ライフスタイルが変わります。私たちは空の移動をより一般化し、人々の生活圏を広げていきたいと考えています。そのために、エアモビリティ全体を今まで以上に有効活用できるような仕組作りをしていく必要があります。さらにそのために、デジタルも活用した交通プラットフォームの構築をし、事業者にとって、より収益が上がるようなお手伝いをしていきたいと思っています。

需要、供給サイドで一からやらないでいいような部分は、システムの活用により解決できます。そのためのシステム開発、システム提供を行っていきます。

---:現在はヘリコプターのプラットフォーム事業ということですが今後は他のエアモビリティ、例えば所謂「空飛ぶタクシー(eVTOL)」と言われている分野への展開も考えていますか?

手塚氏: 今後はヘリコプターだけなく、エアモビリティ全般を手掛けたいと考えています。小型のセスナ機やビジネスジェット機も取り扱いをスタートします。もちろん将来は空飛ぶクルマも、法制度が整えば運航をしていきたいと考えています。

---:競合他社はいるのですか?

手塚氏: 他社で同様のことをやっている企業は日本にはいません。事業者の中には、ドクターヘリや報道ヘリの手配などの国の仕事の合間の空き時間に民間に提供しているような事業者はいますが、弊社のように民間利用に特化している事業者はいません。

---:では提携会社やパートナーについてはいかがでしょうか?

手塚氏: 弊社だけで全てのリソースを持っているわけではないのでパートナーシップは大切です。ユーザーに空が移動手段だと思ってもらえるような離発着地を持たれている事業者さんは重要です。現在、30社ほどのパートナー企業がいます。旅客サービスとしては20社ほどサービス提供可能なパートナー企業がいます。パートナー企業は東京が多いですが、東京に限らず地域ごとに報道やドクターヘリのニーズはあります。各地域毎に強い会社がありますの、そのような企業と組むことを考えています。

空の移動のプラットフォーマーに

---:プラットフォーマーを目指されているということですが具体的にはどのようなビジネスプランを考えられていますか?

手塚氏: 重要なのは弊社のサービスで発着できる場所が増えることで、収益機会も増やしていくことです。これにより、利用者には様々なエリアの行きたい場所に、リーズナブルにいける機会を提供できることになります。

---:費用はどのように考えていますか?

手塚氏: 日本は空の移動にかかる費用は諸外国と比べて少し高い状況です。それは1機体あたりの飛行時間が短く、稼働率が低いからです。今まではヘリコプターが留まれる場所が少なかったため、移動サービスとしてやっていこうという引き上げがなされていなかったと考えています。利用者が増えれば、稼働率が伸び、固定費も下がります。これによってユーザーの費用負担も減っていきます。

空の移動は重力に逆らっているため、飛んでいる時間全てがコストになります。A地点からB地点への移動が終わった後、お客さんがいない帰りの時間もコストがかかるため、その分を最初のお客さんに請求するしかなかったという課題があります。それを例えば都内から箱根に、そして箱根から都内にという移動で別々のお客さんの需要をマッチングし、かつ乗り合いができるように利用率・効率性を上げることで、カラ輸送をしないような取組みをしたいと思っています。それにより、ユーザーのコストも下げることができます。

---:今後の展開について教えて下さい。

手塚氏: 2018年から経済産業省が国土交通省と合同で、日本における「空飛ぶクルマ」の実現に向けて、官民の関係者が一堂に会する「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げていますが、私も構成員として参加しています。この官民協議会でどのように新たな空の移動を航空法としても捉えていくか、そして、現状の航空事業の課題感や事業者のニーズを構成員として日本政府に伝えています。アメリカの連邦航空局(Federal Aviation Administration; FAA)の動きも見つつ、日本に合った形での法制度を他の構成員と共に作っていきたいと思っています。

---:ビジネスの展開はいかがでしょうか?

手塚氏: 既存の法規制でも飛ばすことができるヘリコプターや、セスナ、中型のジェットなどはまだまだ有効活用できると思っています。これらは海外では一般的に移動手段として使われていますので、日本でも可能性はあると考えています。また、運航エリアを拡げていくことや、既存のエリアでもシチュエーションにあわせてサービス多様化を図っていきたいと思っています。合わせて、今まではあまり力を入れてこなかったマーケティングもしっかりと取り組んでいきます。

実は日本のヘリポートの数は世界一なのです。ただ、数としては世界一ですが、ルールとして旅客申請用では申請が通らない状況にあります。そのあたりをどう変えていけるかがビジネス拡大にも関わってきます。Uberがニューヨークで行っているようなUberコプターみたいなことにも取組みたいです。

---:ユーザーの課題はありますか?

手塚氏: 日本人にとってヘリコプターなどでの移動はまだラグジュアリー感、高いというイメージを持たれている印象があります。ここに、ヘリコプターでの移動が提供できるセキュリティ感、プライベート感を理解いただくことで他の交通機関よりも安心して移動できる手段であると認識してもらえるように頑張っていきます。また東京都内の話ですが、現状では江東区新木場にある東京ヘリポートが最寄りなので、使い勝手が良くないですが、将来的に東京都内で離発着できると一気に使いやすくなると思います。

今は鉄道が生まれた100年前の時代と同じ

---:ありがとうございます。最後に、5~10年後の日本の空は移動の観点ではどうなっていると思いますか?

手塚氏: 弊社の事業を単に伸ばすということだけではなく、空を活用して移動していくという新しい移動手段を人類が手に入れるようになります。時短が進み、今まで交通アクセスが悪く、生活エリアとして認識されなかったエリアが生活圏になります。

弊社の試算では、将来、空の移動は鉄道と同じようなコスト感まで下がると出ています。都内から半径100km圏内の箱根など、今までは都内勤務者にとって住居の選択肢として見られてなかったり、観光地としても魅力が下がっていたりしたエリアが蘇ることになり、それらのエリアの不動産価値はあがると考えています。

---:まさに空の移動革命ですね。

手塚氏: はい。今は鉄道が生まれた時代と同じだと考えています。現在は鉄道の発展のおかげで、沿線上に不動産価値がありますが、空の移動という新しい移動手段ができると、価値の見直しやライフスタイルの見直しが起こると思います。空の移動が当たり前になると、今よりももっと日本を楽しめるようになります。その世界を早く形にしていきたいです。鉄道も最初は限定的なエリアから事業がスタートして路線距離が伸びていきました。空の移動も今はまだ限られたエリア、ルートでしか提供できていないですが、是非新しい移動を感じていただきたい。そしてそれが当たり前となるような選択肢にしていきたいと考えています。

空は可能性に満ちている

手塚氏: 空ってみんな、毎日見ますよね。その空に飛び立ち、上空300~800メートルを飛ぶ。そして、その空間に自分の身を投じたり、そこからの景色を見たり、という経験は今までほとんどなかったと思います。それが気軽にできるような機会を増やしていきたい。もっと多くの方が空に身を投じていただきたい。そこからまた新しいアイデアが生まれ、空の利活用につながっていくではと期待しています。そのためにまずは、一歩一歩、今のルールの中で、でもまだ世の中でできていない部分があると思いますので、そこをやっていきたいと思っています。

手塚氏が登壇する 1月30日開催セミナー【MaaS2020】陸・海・空~ネットワーキングセミナー~はこちら。

《安永修章》

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