【トヨタ ヤリス 新型試乗】ハイブリッドのメリット、そして『アクア』との違いとは…渡辺陽一郎

3気筒の不満を解消するハイブリッド

ノーマルエンジンとハイブリッド、選ぶ際のポイント

燃費、コスパ、『アクア』との違いは

トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)
トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)全 14 枚

3気筒の不満を解消するハイブリッド

トヨタ『ヤリス』はコンパクトカーとあって車両重量が軽く、1.5リットルノーマルエンジン車なら1トン前後に収まる。加速力に余裕はあるが、アクセルペダルを踏み増した時など、直列3気筒特有の粗いノイズを意識しやすい。

この不満を解消するのがハイブリッドだ。エンジン本体はノーマルタイプと同じ直列3気筒1.5リットルだが、反応の素早いモーターを併用する。この効果でアクセルペダルを踏み増すと、エンジン回転が下がった状態でも、モーターの駆動力が立ち上がり滑らかに速度を上昇させる。エンジンの負荷が抑えられてアクセルペダルを深く踏む機会も減り、静かで上質な走りを味わえる。

トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)
ハイブリッドのボディは1.5リットルノーマルエンジンに比べて60kgほど重く、カーブを曲がる時の軽快感は削がれるが、峠道を曲がりにくく感じる心配はない。新開発のプラットフォームを使ってボディ剛性を高め、全高を1500mmに抑えた効果もあって安定性は良好だ。

乗り心地は、14インチタイヤ装着車は硬めだから15インチのバランスが良いが、ハイブリッドは前述の通りボディが少し重い。そこで「ハイブリッドZ」(229万5000円)を選び、オプション設定の16インチタイヤ(8万2500円)を装着すると、乗り心地は少し硬いが操舵感の鈍さは抑えられる。スポーティな走りも味わえる。

ノーマルエンジンとハイブリッド、選ぶ際のポイントは

トヨタ ヤリストヨタ ヤリス
ハイブリッドとノーマルエンジンの価格差は、前者に標準装着されるバックガイドモニターなどの装備差を補正すると約35万円だ。ハイブリッドでは購入時の税金が非課税だから、実質差額は30万円に縮まる。

そこで実用燃費をWLTCモード、レギュラーガソリン価格を1当たり145円とすれば、ハイブリッドが30万円の実質差額を燃料代の節約で取り戻せるのは11万kmを走った頃だ。ノーマルエンジンも燃費が良いから取り戻せる距離は長くなるが、ハイブリッドには低燃費以外に走りの良さもある。

1年間の走行距離が1万km以内のユーザーも、購入時にはノーマルエンジンとハイブリッドを乗り比べて、グレードを決めると良いだろう。

燃費、コスパ、『アクア』との違いは

トヨタ アクアトヨタ アクア
なおコンパクトな5ナンバーサイズのハイブリッド車として、トヨタでは『アクア』も用意している。アクアのハイブリッドは世代が古く、直列4気筒1.5リットルエンジンをベースにしたタイプだ。JC08モード燃費は、大半のグレードが34.4km/リットル(「L」グレードは38km/リットル)で、ヤリスハイブリッドは実用燃費に近いWLTCモード燃費が35.4~36km/リットルになる。ヤリスハイブリッドの方が明らかに低燃費だ。

動力性能も、ヤリスは低回転域から余裕を感じる。エンジンノイズはヤリスにも3気筒の粗さが若干伴うが、アクアの透過音も小さくない。このほかステアリングの正確性、走行安定性、乗り心地も、プラットフォームを刷新してステアリングの支持剛性やサスペンションの取り付け剛性を高めたヤリスが上まわる。内装の質もヤリスが勝り、後席の居住性と荷室の広さは同程度だ。

トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)
衝突被害軽減ブレーキは、アクアも歩行者と車両を検知するが、ヤリスは夜間の歩行者と自転車にも対応した。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなども備わる。サイド&カーテンエアバッグは、アクアはメーカーオプションだが(4万4000円)、ヤリスは標準装着とした。

ヤリスで中級に位置する「ハイブリッドG」の価格は213万円、アクアの「G」は209万7700円だから、機能や装備の違いを考えるとヤリスが断然買い得だ。アクアのメリットは、ダイレクト感の伴うスポーティな操舵感と機敏な運転感覚だが、総合評価でヤリスを上まわることはない。

トヨタ ヤリストヨタ ヤリス

■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

《渡辺陽一郎》

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト 1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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