かつて「クルマに灰皿」は当たり前の装備だった…90年代前後の灰皿事情をカタログに見る

典型的なクルマの灰皿。シガーライターとセットだった。日産『サニー』(4代目・1977~1983年)のカタログより
典型的なクルマの灰皿。シガーライターとセットだった。日産『サニー』(4代目・1977~1983年)のカタログより全 10 枚

2020年4月1日から、東京都では改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例が全面施行され、大勢が利用する施設内(屋内)では原則禁煙、指定たばこ専用喫煙室では加熱式たばこのみ喫煙が許されるなど、より厳しいルールが適用されるようになった。

クルマの世界でも、そうした世の趨勢(すうせい)に倣って……というより、むしろ先んじていて、今や“灰皿”を備える新車のほうが珍しい。とはいえかつては、クルマを運転するのは大人であり、勢い灰皿を備えるのは当然のことだった時代が長く続いた。

トップの写真は日産『サニー』(4代目・1977~1983年)のカタログに写されたもので、当時のクルマの典型例。インパネ中央の“一等地”に引き出し式の灰皿があり、その横にはセットでシガーライターがある。

マツダ『ボンゴ・フレンディ』(1995~2006年)のカタログとNA型『ロードスター』の灰皿マツダ『ボンゴ・フレンディ』(1995~2006年)のカタログとNA型『ロードスター』の灰皿
2例目は、マツダの『ボンゴ・フレンディ』(1995~2006年)のもので、カタログ写真でもわかるように、セミキャブオーバーの張り出したセンタートンネルの幅を利用したコンソールに灰皿を設置。容量もタップリとしたものだった。

カタログと一緒に写したのはその実物だが、実はこの灰皿はNA型『ロードスター』と共用品。筆者は『ロードスター』に乗っており、所有中になぜか灰皿の内部が錆びてしまい、(クルマはもうないが)スペアとして入手したこの灰皿だけ現在も手元に残っているというのが事情だ。

日産『プレセア』(初代・1990~1995年)のカタログ日産『プレセア』(初代・1990~1995年)のカタログ
また灰皿をポケットとして利用するケースも増えた。日産『プレセア』(初代・1990~1995年)にオプション設定されたのは「ノースモーカーボックス」。灰皿の内部に起毛のインナーを装着し、灰皿を小物入れに生まれ変わらせるというアイテムだ。

一方でマツダの『ペルソナ』(1988~1992年)では、灰皿とシガーライターを廃したクルマということが話題となった。“インテリアイズム”が同車のテーマで、カタログを見ていくと、(助手席側グローブボックスをなくし脚を組めるスペースを作ったこととともに)喫煙者の少ない女性への配慮との記述がある。灰皿のスペースは小物入れとし、シガーライターソケットにはキャップがかぶせてある。兄弟車の『ユーノス300』では、灰皿とシガーライターは標準装備されていた。

ホンダアクセスの携帯灰皿とホンダ『HR-V』(1998~2006年)のカタログホンダアクセスの携帯灰皿とホンダ『HR-V』(1998~2006年)のカタログ
時代が進み灰皿が非装着のクルマが増えつつある中、喫煙者向けの対応として別体(別売り)のカップホルダーに差し込んで使う灰皿を採用する事例も増えた。ホンダ『HR-V』(1998~2006年)では、斬新・先進的なコンセプトのクルマらしく標準状態では灰皿レス。そこでホンダアクセスが灰皿をアクセサリーで用意していた。写真はその実物で、ちょっとした事情で新車発売時に手に入れ今も筆者の手元にあるのだが、樹脂製ながらかなり肉厚で堅牢・重厚な造りのものだ。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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