マツダ100周年、記念車のモチーフは戦後初めてのクーペ…デザイナーが手掛けたグッズも販売

マツダロードスター100周年記念車とマツダR360クーペ
マツダロードスター100周年記念車とマツダR360クーペ全 16 枚

マツダは2020年1月30日に創立100周年を迎えたことから、100周年記念車とマツダオリジナルグッズ、『マツダコレクション』を発表した。

あくなき挑戦のスピリット

2020年1月30日にマツダは創立100周年を迎えるにあたり、「この日を大事な分岐点と捉え、この100周年をどう迎えようか。皆さんにどう感謝を伝えようか。そして今後の100年にどうつないで行こうかについて多くのメンバーと話し合ってきた」と語るのは同社常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏だ。

マツダの歴史を振り返ると、「順風満帆の100年ではなかった」という。1920年、東洋工業として創業し、被災。そして、「被災地広島に復興の灯火を、という創業者の松田重次郎の思いが、東洋工業の本格的なクルマ作りに転じたきっかけになった。創業者が掲げた、工業で世界に貢献するというその志は、未だに我々の指針だ」と述べる。

「その後何度も挫折を味わい灯火が消えそうになったこともあったが、あくなき挑戦のスピリット、その精神に共感してくれた多くの方々の支えがあって何とか乗り越えてきた。その過去があって今があると思っている」と前田氏はいう。

東洋工業とマツダ

そこでまず創立100周年を表すものとして、「そのヘリテージと現代をつなぐシンボルを作りたいと考えた」。その結果生まれたのが100周年記念のグラフィックデザインだ。これは東洋工業とマツダをつなぐデザインで、ベースの東洋工業のシンボルデザインに現在のマツダのブランドシンボルを重ねたものだ。現在同社の社章にもなっており、マツダ全社員がつけているものだ。

「次にプロダクトでもその歴史のつながりを表現したいと考えた」と前田氏。1931年に生まれたマツダ初の自動車、『オート3輪』は、「“プライドオブ広島”というスローガンが示すとおり、広島の復興にかけた多くの市民の期待を集めたクルマだった」と紹介。1960年には、「多くの人に乗用車をという思いで生まれたのがマツダ初の乗用車マツダ『R360クーペ』」。「1967年、我々の挑戦スピリット、世界初のロータリーエンジン搭載車として登場させた『コスモスポーツ』」の3台を挙げ、「初という意味ではこの3台が歴史の礎だ」とコメント。

クーペが牽引するマツダデザイン

そこから、「デザイン的に最も特徴的、かつ画期的なクルマ」としてR360クーペが選ばれた。前田氏によると、R360クーペの開発責任者は、「ロータリーの父、山本健一だ。軽量化のためのエンジン、ボディの多くはアルミチタン合金。軽自動車初のV型二気筒4サイクルエンジン。日本初のトルコンなど画期的な技術がてんこ盛りだった」と説明。

その一方で、「何か癒されるクルマらしい人の手の温もりを感じる工芸的な良さもある」といい、「ある意味マツダのクルマ作りの源泉を感じるモデルだ」と話す。さらにR360クーペは戦後、日本初めて“クーペ”という呼称を使ったクルマでもある。「マツダは常にクーペのデザインには力が入る」と前田氏。「私がマツダで一番好きなデザインは『ルーチェロータリークーペ』であり、(デザインの)前世代を牽引したコンセプトモデル、『靭(SHINARI)』、現世代の『ビジョンクーペ』などクーペスタイルは常にマツダデザインを牽引してきた。これもR360クーペを選択した理由のひとつだ」とマツダデザインとクーペの強い絆を語る。

マツダR360クーペには赤ルーフに白ボディのツートーンというボディカラーとともに、赤いシートとカーペットのコンビネーションが存在した。「当時としては相当思い切った色使いであり、現代でもかなり勇気のいるチャレンジだが、このカラーをやってみよう、と。まず立体構成が近く描きやすい『ロードスター』からイメージ作りをスタートさせた」と述べ、「この2台を並べると過去と現在のつながりを感じてもらえると思う」とのことだ。

そして、「より多くの方々に興味を持ってもらうため」として、100周年記念車は全車に展開される。現在マツダは赤をブランドカラーとして統一表現しているが、今回はあえてボディカラーを白で統一。「全車を(カラーで)揃えた作り込みには実は結構苦労もあった。しかしこの作り手のこだわりがこのクルマの価値だと思っている」と語った。

マツダのデザイナーがデザインしたオフィシャルグッズ

同じくマツダ100周年を記念したオフィシャルグッズ、マツダコレクションも発表された。これはマツダ初の公式グッズで、「クルマ以外のプロダクトでもマツダブランドを感じて、カーライフを楽しんでもらいたいという思いで制作。インハウスのカーデザイナーが企画デザインした商品だ」と紹介。「クルマの持つ世界観と、そのイメージを合わせたグッズのデザインが特徴で、他にないユニークな価値だ」とのことだ。

前田氏は、「正直、もう少し簡単に作れると思っていたが、実際にやってみると知らないことだらけで、まるでアドベンチャーのようなものだった。しかし私自身は結構楽しんだ。たまにはクルマ以外のデザインをやるのもいいなぁといい刺激になった」とコメント。

グッズはTシャツ、タオル、マグカップ、ポストカード、写真集、モデルカーなど6アイテム20種類あり、6月25日にマツダオフィシャルサイト内に開設予定のMAZDA COLLECTION ONLINE SHOP で販売が開始されるとともに、8月上旬にはマツダ各ディーラーでも購入が可能になるという。

前田氏は最後に、「我々は今この状況を乗り越え、常にクルマのある生き生きとした暮らしを創出する。そのための“Be a driver”でありたいと考えている。クルマのデザインにおいてもまだまだできることはたくさんある。今月末からお客様に届けできるマツダコレクションをはじめ、今後さらに領域を広げマツダらしい社会、文化への貢献につながる活動に発展させていきたい」とその思いを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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