激動!コロナ禍で揺れ動く輸送業界、解決への糸口としてタイヤメーカーが出した答えとは...

右からTOYO TIRE 株式会社 TB開発部の藤岡剛史氏、西尾泰一氏、モータージャーナリストの藤島知子氏
右からTOYO TIRE 株式会社 TB開発部の藤岡剛史氏、西尾泰一氏、モータージャーナリストの藤島知子氏全 19 枚写真をすべて見る

今、輸送用タイヤに求められることとは何か?藤島知子が迫る!

車体と路面の唯一の接点となるタイヤは、輸送の安全を支える上でとても重要なパーツ。重量の重いトラックやバスに装着されるタイヤとなれば、耐久性を担保した上で耐摩耗性が求められるとともに、積車状態の異なる環境でいかに対応できるかなど、各シチュエーションで性能を発揮することが求められる。

TOYO TIRE 株式会社 兵庫伊丹本社ビルと藤島知子氏

今回はTOYO TIREが新商品としてリリースしたトラック/バス用のオールウェザー(オールシーズン)タイヤ『M646』について、開発を担当された商品開発本部の西尾泰一氏と藤岡剛史氏にお話を伺う機会をいただいた。現在のトラックやバスに求められるタイヤの性能は一体どんなものなのか? また、これまで働く現場で定評を得てきた人気モデル『M636』と比べて、どんな点を進化させたのかを、兵庫県伊丹市のTOYO TIRE本社で伺った。

TOYO TIRE 株式会社 商品開発本部 TBタイヤ開発部 西尾氏(左)、藤岡氏(中央)、モータージャーナリスト藤島氏(右)

藤島:新商品のお話を伺う前に、そもそもトラック/バス用タイヤは、乗用車と比べて、どんな要素が求められるのでしょうか?

藤岡:トラック/バス用タイヤの場合、乗用車と比べて重い重量を支え、走行距離も長いために高い耐久性や摩耗性能が求められます。またタイヤを購入していただくお客様は運送会社様が多く、経済性という意味で価格や燃費が大事です。昨今では特に環境や安全性との両立も求められます。

TOYO TIRE 株式会社 商品開発本部 TBタイヤ開発部 パターン開発グループ パターン設計担当リーダー 藤岡剛史氏

トラック/バスでは偏摩耗を是正させるためにタイヤの位置交換をして長持ちさせることも一般的で、この位置交換の頻度を下げるために耐偏摩耗性の高いタイヤが求められます。また、十分なトラクションが得られないタイヤは安定性が劣るためドライバーにとってストレスとなる。従って様々な使用環境において高いトラクション性を向上することが求められます。

輸送業界の効率向上にタイヤでできることは何か!?

藤島:身近なところで考えてみても、最近ではネット通販の市場が拡大するなどして、物流のニーズはいっそう高まっていますよね。運送会社やバス会社として、安全で確実な輸送を行うことを考えれば、経済性と安全性は、どちらも譲れない要素ですね。ちなみに、実際にハンドルを握るドライバーのみなさんからは、どのような要望が上がっているのですか?

TOYO TIRE 株式会社 商品開発本部 TBタイヤ開発部 商品開発グループ 担当リーダー 西尾泰一氏

西尾:さまざまな運送会社やバス会社のみなさまに、これまで履いてきたタイヤに対する課題や、タイヤに求める性能についてご意見を伺う機会が多くあります。その中で「偏摩耗を抑えて欲しい」という要望が年々高まっています。タイヤをバランスよく長持ちさせるために位置交換を行いますが、車両の稼働率やメンテナンス効率を上げるため、位置交換を行う頻度をできるだけ減らしたい。偏摩耗を抑えることができれば位置交換の時期を遅らせられ、結果として回数そのものを減らすことに繋がります。

また、「荷物を載せていない『空車』で走るときのトラクション性能を高めてほしい」という要望もありました。積み荷では粉体や液体を運ぶケースや、車両ではトラクターヘッドも空車で走ることが多い条件の一つ。特に雨の日などの滑りやすい路面では、タイヤとの接地面が不安定な状態に陥りやすいからです。

インタビュアーの藤島知子氏

藤島:積車状態のときと空車状態でタイヤに掛かる重さの違いは変動が大きいでしょうし、タイヤの接地のしかたも変化しそうですね。なるほど、偏摩耗しにくいタイヤを目指すことはタイヤを長持ちさせて、コストや労力の負担を減らすことにも貢献できるのですね。

従来品よりも「動き出しの良さ」を感じて欲しい

藤岡:新開発のオールウェザータイヤ『M646』は、弊社の技術サービスや営業担当がお客様のそうした声をうまく拾い上げてきてくれた事がキッカケで生まれました。その声を受けて特に力を入れて開発を行ったのは、トラクション性能を高める『ウエット性能』と『耐摩耗性能』。背反する2つの性能を両立させることが最大のテーマでした。

藤島:タイヤが路面に接するトレッド面を従来のM636と見比べてみると、縦に刻まれている溝やブロックの構成が大きく変わりましたね。

藤岡:新製品のM646は、4本の主溝と3列化したセンターブロックが最大の特長です。従来のM636の場合、センター部分のブロックは2列配置とし、耐摩耗性を高めるために1つ1つのブロックを大きくとることで剛性を確保していました。

一方で、新開発のM646は、センターに従来よりも小さいブロックを3列にクロスして配置する多ブロック構成にしています。多ブロック構成にすることでトラクション性能を向上させながら、タイヤが路面に接地した時に、それぞれのブロック同士が大きな塊のように支え合うクロス配置にすることでロッキング効果をもたせ、ブロックの変形を抑制しています。

また、センター部分をワイドにすることで接地面積が増えるため、センター部分に集中していたタイヤにかかる圧力をこれまでよりも分散させることで、耐摩耗性を向上させることができました。摩耗ライフはM636よりも“+16%”向上し、ウエット路面でのテストでは、加速性能が“+19%”向上しました。

藤島:一見、細かく見えるブロックは、荷重を受けると共に支え合い、接地性が高まることでトラクションを稼ぎ、安心感も高まる。結果的には、摩耗が抑えられるという相乗効果が見込めるなんて凄いですね。

藤岡:センター部分の接地性が高まったメリットは、空車状態の時に顕著に表れます。空車で走る場合、タイヤに掛かる荷重が大幅に減ることでタイヤのセンター部分に力が集中し、接地感が薄れることで不安定な走りになりがちです。

M646は、タイヤ一本あたりにかかる荷重が減って接地面積が小さくなったときほど、M636に対してトラクション性能の向上を「安心感」という形でより実感していただけると思います。また、センター部分の剛性が高まったことで車線変更時の応答性など、従来よりも「動き出しの良さ」を感じていただけると思います。このような走行性能と摩耗・偏摩耗性といった経済性も他のタイヤと比較してご使用頂ければ、その違いがわかります。

ズバリ、スタッドレスタイヤとオールウェザータイヤは何が違うのか!?

藤島:TOYO TIREは、トラック/バス用のスタッドレスタイヤも数種類ラインナップしていますが、スタッドレスタイヤとオールウェザータイヤではどんな違いがあるのですか?

藤岡:スタッドレスタイヤは、雪の路面とアイス性能を重視した設計になっているのが特長です。トレッド面のブロックを細かくすることでトラクションを稼ぎ、ブロック内に細かいサイプを刻むことで、氷とタイヤの間に生まれるわずかな水膜を吸い上げて摩擦力を高めてアイス性能を確保するというものです。

一方で、オールウェザータイヤの場合、アイス性能はスタッドレスに敵いませんが、非降雪地区などでの急な積雪での安定性や雨の日などの滑りやすい路面での排水性が高いぶん、スタッドレスタイヤでは得られないウエットグリップを確保することができます。それに、偏摩耗しにくい点も強みです。

インタビュアーの藤島知子氏

藤島:いずれにしても、世の中にオールマイティなタイヤは存在せず、使用環境に合わせて最適なものを装着する必要性があるというワケですね。

藤島:タイヤのライフを長く保つために、上手に向き合う方法があれば教えてください。例えば、積み荷は均一に積むほうがいいですよね?

西尾:固体や液体など、載せる荷物によって、摩耗する状況は異なりますが、均一に積めば、そのぶんタイヤも均一に摩耗しやすくなります。また偏摩耗が起こり始めたら、早めにタイヤの位置交換を行うことが長持ちさせる秘訣だと思います。

あと、タイヤのメンテナンスという観点では、内圧管理はとても重要です。空気圧が低くなった場合、十分な偏摩耗性や耐久性が発揮できなくなります。タイヤサイド部が大きくたわみ、接地面内の圧力分布が不均一になります。そうなると偏摩耗の発生やタイヤ内部の部材耐久力も低下し、本来の性能が十分に発揮できなくなります。

TOYO TIRE 株式会社 商品開発本部 TBタイヤ開発部 商品開発グループ 担当リーダー 西尾泰一氏

藤島:クルマの状態に注意深く意識を払う必要がありますね。

西尾:現在のトラック業界はメンテナンスフリーへの要求が特に高まってきています。私たちは、その様な状況に対応した技術を進歩させる必要があると感じています。

「M646」は経験豊富な多くのプロドライバーの声から生まれた!

藤島:安全を足元から支える。タイヤの開発に関わるとても重要なテーマですね。最後に、今回の新商品『M646』に関心を寄せていただいているみなさんに一言お願いします。

TOYO TIRE 株式会社 商品開発本部 TBタイヤ開発部 西尾氏(左)、藤岡氏(右)

藤岡:まずは、実際に試していただきたいタイヤです。履いてみると、トラクション性能の良さや耐摩耗性がもたらすメリットを実感してもらえるタイヤに仕上がっていると思っています。前作のM636についてもトラクション性能と耐摩耗性の両立というところでは、お客様の満足度が高い商品でしたが、今回の製品はさらにこの2つの性能が向上しています。

西尾:タイヤの開発は、テストコースだけでなく、各地の運送会社様のトラックにモニター装着をお願いし、実走行によるテストにご協力いただきました。調査は長距離輸送から、県内を巡る近距離輸送のトラックを対象としたもので、様々な銘柄のタイヤを履いてきた豊富な経験をお持ちのみなさまに率直なご意見を伺いました。今回のM646は「トラクション性能の向上を実感した」と言っていただけるケースが多く、「早く発売して欲しい」という声までいただきました。自信を持って提供できる商品ができたと考えています。

インタビュアーの藤島知子氏

藤島:耐摩耗性が高まっただけでなく、実際に仕事で走る環境で安心感の高まりを実感できることは、輸送や物流を担う会社にとっても、ドライバーにとっても望ましいことですね。

ユーザーのニーズを捉えながら、アイディアを凝らして進化していくタイヤの世界。環境性能などに対する基準がいっそう厳しくなってきている中、TOYO TIREとして、今後はどのような創意工夫で魅力的な製品を世に送り出して行くのか、日本の物流を支える重要なパーツだけに、とても興味深い。

TOYO TIREのトラック&バス用オールウェザータイヤ
摩耗ライフとトラクション性能が向上した『M646』の詳細はこちら

《藤島知子》

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