【ホンダ フィット 新型試乗】ガソリン車を選ぶなら実は「BASIC」が超お得?…井元康一郎

ホンダ フィット HOME(ガソリン車)
ホンダ フィット HOME(ガソリン車)全 16 枚

ホンダのBセグメントサブコンパクト『フィット』の第4世代モデルを短時間テストドライブする機会があったので、ファーストインプレッションをお届けする。試乗したのは普及グレード「HOME」のガソリン非ハイブリッド仕様、プチお洒落志向のグレード「NESS」の2モーターハイブリッド仕様の2台。本稿ではHOMEガソリンについて述べる。

一昔前のフォルクスワーゲン的な味付け

ホンダ フィット HOME。東京湾をバックに。ホンダ フィット HOME。東京湾をバックに。
第4世代フィットは見ての通り外観をガラリとイメチェンしてきたのが印象的だが、異なるのはルックスだけではない。居住感、乗り味と、あらゆる部分のテイストが第3世代と趣を異にしていた。

まずは走行フィール。頑張っていろいろなコンディションの道を選んで走ってみたものの限られた試乗時間で得られた印象でしかないが、基本的にはスポーティハッチ的な機敏さは希薄で、ゆるゆると揺動しながらねっとりと地面をホールドして走るグランドツーリングカー的な感触だった。

走りはタフだが乗り心地はガサついていた第3世代の前期型とも、荒れ道での接地性低下と引き換えに良路での高い安定性と乗り心地の滑らかさを手に入れた後期型とも異なる、強いて言えば粘着感重視だった一昔前のフォルクスワーゲン的な味付けである。

乗り心地は全般的に良好。未試乗のトヨタ『ヤリス』との比較が気になるが、道路の凹凸を吸収しながらフラットに走る滑走感は、過去に乗った国産Bセグメントの中では文句なしにナンバーワンだった。ただし、高速道路で大きめの段差を乗り越える時の衝撃吸収は車両重量の大きなハイブリッド版に比べると一歩落ちる印象があった。

最近、タイヤをBMWばりに低圧で使うようになったホンダ。フィットも前2.2kg/com2、後2.1kg/cm2と、今どきのエコカーとしては相当低い。最近、タイヤをBMWばりに低圧で使うようになったホンダ。フィットも前2.2kg/com2、後2.1kg/cm2と、今どきのエコカーとしては相当低い。
試乗車は標準より一段低扁平率のオプション設定タイヤを履いていた(185/60 R15→185/55 R16)のでその影響か、それともド新品の状態からある程度乗り込めば馴染みが出てくるのか…標準タイヤ仕様も試してみたいところだった。

開放感はトップランナー級

助手席側からダッシュボードを撮ってみた。開放感は非常に高い。助手席側からダッシュボードを撮ってみた。開放感は非常に高い。
居住感は第4世代フィットのハイライト。室内は明るく、前方視界もデザインからイメージされるとおり非常に良い。欲を言えばフロントウィンドウの上端をもう少し屋根側に広げ、サイドウィンドウ下端のラインを数センチ下げるとさらに視界がぐっと広がり、ちょっと他にないタイプのファミリーカーになったところなのだろうが、第3世代フィットのシャシー、ボディを改良して開発されたことを思えばこのくらいでも御の字か。現状でも開放感はトップランナー級で、気持ち良いドライブができるだろう。

エンジンは1.3リットル直4エンジン(98ps/12.0kgm)は第3世代で登場した高効率なミラーサイクルエンジンの改良型で、組み合わされる変速機はCVTのみ。もともと加速の気持ち良さを味わうキャラクターではなく、加速性能はごく平均的なベーシックカーの水準にとどまる。

旧型はこの上に高出力型の1.5リットルDOHCがあったが、販売比率は非常に低かった。第4世代では加速性能を重視する顧客はハイブリッドでカバーする方針なのだろう。

インパネはフル液晶。凝った表示は一切ないが、非常に見やすかった。インパネはフル液晶。凝った表示は一切ないが、非常に見やすかった。
燃費は良好。千葉・木更津界隈の市街路、郊外路、高速を合計で51.8km走った後の平均燃費計値は20.5km/リットル。筆者はクルマのインプレッションを書くにあたってよくロングドライブをやるが、その経験にかんがみれば長距離をハイペースで走っても実測20km/リットル台は余裕ではないかという感触であった。

実は「BASIC」が超お得仕様?

ホンダ フィット BASIC(ガソリン車)ホンダ フィット BASIC(ガソリン車)
というのが短時間ドライブのファーストインプレッションであったが、ガソリン仕様で筆者が個人的に興味を持ったのはこのHOMEではなく、一番下の「BASIC」のガソリン仕様だった。

シートは全グレード共通設計で運転席にはシートリフターを備え、足まわりのクオリティやセッティングも最上級の「LUXE」と同じ。エクステリアは最下級グレードにありがちな、わざと質感を低く見せるような作り分けがなく、全然格好悪くない。他グレードのような飾りを持たないインテリアはかえって素の良さを感じさせられるもの。

おまけに運転支援システム「ホンダセンシング」も標準装備。これで税込み155万8000円とはホンダさんどうかしてるんじゃないのかというレベルだ。

ホンダ フィット BASIC(ガソリン車)ホンダ フィット BASIC(ガソリン車)
唯一センスがないのはBASICというPC-88時代みたいなグレード名で、LIVEだのVIFだの、あるいはモデル廃止になった軽自動車名のVAMOSだのといった名前にしたほうがずっと魅力的だったのに、と思う。ホンダとしては最下位グレードばっかり売れたら到底商売にならないのでそうしたのだろうが、それはそれでこの自信なさげなスターティングプライスの設定が間違っていると言えよう。

ホンダのビジネスはかくも混迷をきわめているが、クルマはいいのができた。機会あらばぜひガソリンフィットで遠乗りを試したくなるところだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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