【ダイハツ タフト 新型】Bピラーを境に前後でインテリアカラーも変えて…デザイナー[インタビュー]

ダイハツ・タフト新型
ダイハツ・タフト新型全 27 枚

ダイハツから発売された軽SUVの『タフト』。そのインテリアはエクステリア同様バックパックコンセプトが取り入れられ、前席と後席では明確に作り分けがなされている。そこでデザイナーにその意図やポイントについて聞いた。

人のスぺースと使うスペース

バックパックコンセプトとは、人がバックパックを背負って気軽に楽しく出かける様子とともに、人のスペースと荷物などを積載する、いわば使うスペースが分かれているという意味があり、特にインテリアでは後者の色合いが強い。

「まず、室内色を思い切って分けた。同時に造形的にもBピラーよりも後ろは、質感を高めるというよりも荷室としてガンガン使ってもらえるように、色々な趣味の道具などを乗せるときに、頑丈に見えるというようにこだわりながらデザインした」と説明するのはダイハツデザイン部担当デザイナー・主担当の皆川悟さんだ。

一方、前席周りは、「人が座って運転して、見て触ってワクワクするところを部品デザインにまでこだわった」という。その一例はエアアウトレットなどのオレンジ色のアクセントだ。これはメーターの中にも配されており、皆川さんは、「機械のような、ギア感をダイレクトに表現し、機能とワクワクする雰囲気にこだわった」と話す。ダイハツ・タフト新型ダイハツ・タフト新型

そして、このインパネ周りの雰囲気は、「わざとガチャガチャした空間にした」とのこと。「通常ではすっきりとした空間にして質感を出していくが、お金が限られていることもあり、どうしても樹脂で表現していくにも限界があった」と皆川さん。

そこで、「あえてワクワクというキーワードから突き詰めていくと、自分の目の前がガチャガチャしていた方が楽しそうに感じることが実感としてあった。そこで、ブロックを組み合わせたような、ワクワクする雰囲気にこだわって仕上げている」と述べる。

ワクワクは運転するシーンでも表現された。エアアウトレットのオレンジのほかに、「ドアのパワーウインドウ部分も少し傾斜させたり、シフト周りも縦につないだりすることで、いわゆるコックピット感にもこだわって空間を使っている」と話す。

インテリアにオレンジを

このインテリアにオレンジというビビットなカラーを用いるのはかなり勇気のいることだろう。「社内的にはかなりもめた(笑)」と皆川さん。「オレンジを入れることによって棄却する人が出てこないかが、心配だった」という。しかし、「結果的に営業サイドも納得してオレンジになった」。ダイハツ・タフト新型ダイハツ・タフト新型

これは「タフトの特徴であるスカイフィールトップを開けたときに、しっかりと映える色にしたいということでこの色味を選んだからだ」。また皆川さん個人としても、「オレンジ色を嫌いという人はあまりいないのではないか。好きとは必ずしもいわないまでも、オレンジから連想するものは、柑橘系の果物や、太陽など、オレンジにマイナスイメージはあまりないのではないか。そこでアクティブイメージにつながる、元気が出るオレンジにはこだわりたかった」とコメントした。

あえてインテリアカラーまで区分けして

さて、軽自動車のインテリアをデザインするにあたり、横方向の広さ感を演出すべく、横基調にして、かつ途切れないようにレイアウトするのは王道だ。しかしタフトではあえて中央にセンタークラスターを配することで、コックピット感やギア感を演出している。

この点について皆川さんは、「もともと電気式のパーキングブレーキをレイアウトする都合上、何かしらコンソールのようなものが必要だったので、それを生かしたデザインにした。別の案ではより運転席と助手席をバシッと区切ってしまうアイディアもあった」と述べる。ダイハツ・タフト新型ダイハツ・タフト新型

その一方、「通常の軽自動車のように横方向に広がっている案は最初からあまり検討してない」とのことだった。「運転席周りの密度は高く、それ以外のところは密度を低くして、粗密にする。そこで最初のアイディア選択の段階では運転席とそれ以外という考えもあった」と皆川さん。しかし、「さすがにそれだとちょっとやり過ぎだろう(笑)といまの形に落ち着いた」と説明した。

さらに、その差別化のためにインテリアカラーまで変えている。皆川さんは、「とりあえず思い切って提案してみたらそのまま通った」と笑う。「どこかで消えるだろうなと思いつつ、いわれたらもとに戻せばいいというところが本音であった。普通に戻す分にはいつでも戻せるので」と思いを語った。

そのグレーのカラーは『タント』で開発した新しい室内色だ。「その色が比較的ニュートラルなグレーで、荷物を積んだときに傷がついても黒よりはグレーの方が目立ちにくい。そういう機能に出来るだけこだわろうと設定した」と皆川さん。ダイハツ WakuWaku(ワクワク)ダイハツ WakuWaku(ワクワク)

当初、「コンセプトモデルの『WAKUWAKU』では室内の後ろはオレンジだった。例えば男性が持っているポーターのカバンなどの中はオレンジ色になっている。そこで黒とオレンジを組み合わせることで、中に入っている荷物が見えやすくするというアイディアも検討したが、さすがにやり過ぎだろうと、結果的にグレーに落ち着いた」と開発の経緯を述べた

WAKUWAKUとタントの関係

いまコメントに出たWAKUWAKUは、東京モーターショー2019に出展されたコンセプトカーで、タフトのコンセプトにも通じるものがある。ダイハツ WakuWaku(ワクワク)ダイハツ WakuWaku(ワクワク)

「タフトとは別に、モーターショー専用部隊が動いて開発したのがWAKUWAKUだ。ただし、タフトの初期のアイディアやキースケッチを上手に取り込みながら、忠実に仕上げたイメージだ。初期にやりたかったが市販するにはなかなか難しかったところを、もう一度モーターショーなので表現した部分もある」とタフトとWAKUWAKUの関係を説明。

そして、「いくつかの部位では評判が良かったことから、育成の中で検討していくアイテムも少しあるかなと思っている」と今後の改良に向けて取り入れたいアイテムもあったようだ。

最後に皆川さんは、「タフトはデザイナーの思いをそのままダイレクトに製品に出来たと思う。正直、好き嫌いが分かれるところもあるだろうが、共感してもらえる方が出来るだけ多くいると嬉しい。その共感というのは細部よりも、当初考えた、日々楽しく過ごしたいよねというシーンにマッチするようなクルマ。そこに共感してもらえると嬉しい」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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