【北京モーターショー2020】ハイブリッド優遇で日系メーカーにチャンスか 9月26日開幕

中国で販売されている『レビンPHV』(日本でのカローラセダン)
中国で販売されている『レビンPHV』(日本でのカローラセダン)全 3 枚

来たる9月26日、北京モーターショーが開幕する。当初は4月に開催が予定されていたものの、昨今の情勢で延期されていたものだ。バーチャルではなくリアルな国際格式のショーとしては、昨年11月のロサンゼルスモーターショー、あるいは今年2月のデリーモーターショー以来ということになろう。

ショーが開催されていないあいだも、各メーカーからはニューモデルがいくつか発表されているものの、久しぶりのリアルなモーターショーであり、かつ世界最大市場におけるショーでもある。注目度が高まるのは必至だ。

ショーの開催を2週間後に控え、あらためて北京モーターショーの概要と、注目すべきポイントを整理しておこう。

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ダントツで世界最大の中国市場

まず頭に入れておくべきファクトとして、中国市場の大きさがある。2019年の自動車販売台数は、中国2576万台に対し、アメリカは1704万台、日本は519万台に過ぎない。ざっとアメリカの1.5倍、日本の5倍にもなる巨大市場だ。

そしてその巨大市場で販売されているクルマは、約半数がドイツや日本のメーカーと現地メーカーの合弁会社で作られるモデルであり、それらは我々が日常的に目にするいわゆる日本車、欧州車とほぼ同じものだ。

そして残りの半分は中国の現地メーカーによるものであり、我々にとっては馴染みのないモデルが山ほど販売されている。上海汽車というメーカーをご存じだろうか。年間約700万台を販売する巨大メーカーだが、我々にとってはどんなクルマを作っているのか、ピンとこないだろう。しかし700万台というと、トヨタや日産ルノーには届かないものの、ホンダやフォードを大きく超える規模だ。そんな”知られざる”巨大メーカーが、中国には他にいくつもある。

北京モーターショーは、そんな中国の現地資本メーカーが勢ぞろいする(もちろん外資メーカーも)年に一度の中国自動車産業の晴れ舞台なのだ。

優遇政策によりHEVが主役に

さて、今回の北京モーターショーにおいて注目すべきポイントを2点挙げる。まず注目すべきは、優遇措置が明らかになったハイブリッド車の動向であろう。

ハイブリッドについては、中国で言うところの新エネルギー車(EV/PHEV/FCV)の枠には入らなかったものの、新たに作られた「低燃費車」の枠組みに入ることが確実視されている。メーカーにとっては、通常のガソリン車を生産するよりNEV規制上有利になるメリットがあり、消費者側にとっても自動車税の減免や、一部地域ではナンバー規制が免除される(抽選を経ずに購入できる、都市部流入規制が免除されるなどのメリットがある)見込みだ。

これまで中国市場といえばEVとPHEVに手厚い補助金や規制の免除など制作的な後押しがあり、ハイブリッド車は目立たない存在で、トヨタやホンダが販売していたものの、市場からはほとんどスルーされているような状況であった。

それが上記のような政策が採られることになり、もともと手ごろで実用性の高いハイブリッド車に注目が集まることになった。中国に参入している外資メーカーでは、フォルクスワーゲンとGMがともに400万台前後を販売し大きな存在感を発揮しているが、ご存知の通りハイブリッド車を得意としていない。

そこへきて、年間100-150万台の規模にとどまるトヨタやホンダ、日産のハイブリッドを得意とする日系メーカーに大きな飛躍のチャンスが訪れたということになる。

トヨタは昨年の上海モーターショー(北京と交代で隔年開催)で、アルファード/ヴェルファイアのガソリンエンジンモデルを排し、ハイブリッドに一本化した。今考えればこのような動きを予想していたということだろう。

トヨタ以外にも、日系メーカーのハイブリッド車に関する動向は今回のモーターショーの最注目ポイントであることは間違いないし、欧米メーカーや中国現地メーカーも黙って見ているわけはない。ここで何らかの動きを見せる可能性もある。

EVベンチャーは量産メーカーへの脱皮なるか

次に挙げる注目ポイントとしては、量産メーカーへと脱皮しようとする新興EVベンチャーの動向だ。ご存知の通り中国では強力なEV産業育成施策がとられ、世界最大のEV市場が出来上がった。それとともに、数えきれないほどの新興EVベンチャーが立ち上がり、試作車を発表してきた。

それらのEVベンチャーは、試作車から量産へと進む段階で淘汰され、有力なメーカーが数社に絞られてきた。特に以下に挙げる三社「NIO」「小鵬(シャオペン)」「理想汽車」は、相次いで米国市場に上場を果たし、巨額の資金調達を成功させている。もちろん、ニッチな小規模ビルダーから紛れもない量産メーカーへの進化を目指すものだ。

上記の三社に加え、生産の遅れが指摘されているBytonや、すでに数万台の販売実績で先行する威馬汽車、EVスポーツの量産に乗り出すLeapMotor、欧州進出を表明しているAIWAYSなど、勝ち残ってきたEVベンチャーの現在地を確認するイベントとしても今回のショーは絶好のタイミングとなるだろう。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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