空飛ぶクルマ SkyDrive CTO…トヨタやレクサスのように“個人が買える”乗り物に[インタビュー]

次の目標は2023年に運行サービスにつなげること

カッコ良さにはこだわる

道路上に離発着場を設ける

いずれは遠隔操作で飛行

2020年8月25日にSkyDriveが飛行試験に成功した有人試験機「SD-03」
2020年8月25日にSkyDriveが飛行試験に成功した有人試験機「SD-03」全 12 枚写真をすべて見る

日本初の「空飛ぶクルマ」を開発するSkyDrive(愛知県豊田市)は8月28日、同月25日に有人試験機「SD-03」による飛行試験に成功したことを発表した。将来の新たな乗り物としてその夢につながる成功までの過程を、同社の最高技術責任者・岸信夫氏に伺った。

次の目標は2023年に運行サービスにつなげること

SkyDriveは2012年に発足した有志団体CARTIVATORをベースとするスタートアップで、法人としてのSkyDriveが設立されたのは2018年7月のこと。とても若い会社だ。設立当時にCARTIVATORが掲げた目標は、東京オリンピックの開催に合わせて2020年までに「空飛ぶクルマ」のデモフライトを実現させることだった。今回、有人飛行試験に成功した機体「SD-03」は1人乗りで、電動で垂直離発着を可能とするeVTOLの形態を採る。この成功は、その目標を達成した象徴的な出来事になったとも言えるだろう。

一方でSkyDriveが目標としているのは、「2023年に有人による運行サービスをスタートさせ、2025年の大阪万博の開催時には一定の認知がされること」(岸氏)だ。その時の運行イメージとして岸氏は「定員2名で対岸へ一足飛びで行ける渡し船のような役割を担ってもらうことからスタートしたい。遊園地でのアトラクションとして利用する構想もある」と話す。これを聞いたとき、思っていたよりも地味なスタートになることに戸惑いを憶えたが、話をさらに聞くと空飛ぶクルマを実現するまでの過程での現実と、様々な課題が背景にあることがわかった。

カッコ良さにはこだわる

空飛ぶクルマを実現する上でもっとも重要なこと、それは人々の許容性にあると岸氏は話す。空飛ぶクルマは飛行機よりも近い人の頭上を飛ぶ。つまり、「それが人々にとって不安材料になるのは間違いない。ただ、空飛ぶクルマの支持層になっていくのは今の子供達の世代だ。そのために遊園地で乗り、そういったことに慣れ親しむことはとても重要と考えている。だからこそ乗り物として(乗ってみたくなるような)カッコ良さにはこだわっていきたい」(岸氏)というわけだ。

将来のパーソナルユースも想定し、岸氏は「SkyDriveとしては、軽くて小さくてカッコいい“空飛ぶクルマ”にしたい」と話す。「最初はフェラリーみたいに高価だけど、いずれは多くの人が所有できるような『アクア』(トヨタ)のスポーツカー、あるいは(上級グレードとして)レクサスみないな機体にまで個人的には落とし込むのが目標」と話し、「2030年には“空飛ぶクルマ”が空を行き交う姿が見られるようになる」と岸氏は予測する。

一方で実現に向けた技術的課題として上がるのがバッテリーの問題だ。EVでも航続距離が取り沙汰されるが、それでもクルマなら停止中はバッテリーを消費しない。しかし、空飛ぶクルマがeVTOLの機構を採用する以上、浮いているだけでもバッテリーは消費する。

岸氏によれば「現状ではせいぜい5~10分程度しか飛ぶことができない。安全に飛行するためにバッテリーはクルマ以上に重要だが、2023年の時点でもバッテリー事情が飛躍的に進化するとは思えない。さらに2人乗りにすれば当然、機体は重くなる」と話す。これらを踏まえると、空飛ぶクルマは、まずはアトラクション的な乗り物としてスタートし、そこから技術的な積み上げを図っていくことが現実的な展開となりそうだ。

道路上に離発着場を設ける

では、空飛ぶクルマが実用化された時、どんな利用シーンが想定されるのだろうか。

岸氏が考えるのは「自宅周辺の駐車場からクルマとして走り始め、道路上にETCゲートのような離発着場があって、そこから空飛ぶクルマモードに切り替える。飛行中はドライブユニット(タイヤ/ホイール)をしまい込んで、ローターが回って空の道へと入っていき、目的地までは再び道路上を走って行く」というものだ。空飛ぶクルマというと、必要なときに道路から飛び立って混雑を回避するようなものを想像していたが、そうはならないようだ。

その理由は、飛行機が飛ぶ管制区域がある中で、空飛ぶクルマが飛行するための上昇ルートを作る必要があるからだ。空を飛ぶということは当然、新たなルール作りが欠かせない。岸氏は「(空飛ぶクルマは)どこからでも飛び立てるということにはたぶんならない。当たり前だが、(飛行機が離発着に使う)空港に入ってはいけない。空飛ぶクルマが増えてきたら、それぞれがブツからないよう、自律でコントロールできるようにする必要もある。たとえば150m以下は空飛ぶクルマの領域、その上は飛行機の領域としてルールを決めることで成り立っていくと考えている」と話す。

いずれは遠隔操作で飛行

SkyDriveでは2030年には空飛ぶクルマの事業化に目途を付けたい考えだ。その一つの方法として想定されるのが「成田空港やセントレアからタクシーやハイヤーを使うビジネスマンを相手にすること」。

当初はパイロットの同乗が必要になりそうだが「いずれは遠隔操作で操縦できるような態勢にまで持って行きたい」と岸氏は話す。一方で、岸氏は個人的な意見としながらも、「パーソナルユースで使うことになったとき、スピード感や躍動感は大事だと思っている。クルマと同じように自由に動ける楽しみも残しておきたい」とも述べた。

クルマの新型車が登場すると我々はその試乗インプレッションをレポートしているが、近い将来、空飛ぶクルマの試乗記を書くような時代が来るのかもしれない。そんな時期が訪れることを今から楽しみに待ちたいと思う。

《会田肇》

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