官民ITS構想・ロードマップ2020 技術開発と法整備から次世代モビリティを拓く…内閣官房 IT総合戦略室 菊島淳治 氏[インタビュー]

官民ITS構想・ロードマップ2020 技術開発と法整備から次世代モビリティを拓く…内閣官房 IT総合戦略室 菊島淳治 氏[インタビュー]
官民ITS構想・ロードマップ2020 技術開発と法整備から次世代モビリティを拓く…内閣官房 IT総合戦略室 菊島淳治 氏[インタビュー]全 1 枚

2020年4月に新しい道路運送車両法が施行された。同法やその車両保安基準にレベル3自動運転の要件が明文化され、国内で自動運転車両を公道で走らせる法的な根拠や基準が定まったことになる。

これにより、自動運転やMaaSに関する技術の社会実装・市場化が期待されるところだ。このような法律の整備や官民連携を推進する組織のひとつに「内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室(IT戦略室)」がある。IT戦略室は、7月に「官民ITS構想・ロードマップ2020」を発表している。ロードマップを見ると、今回の法改正やそれまでの取り組み、そして今後の日本の自動運転やMaaSに関する方向性と戦略が見えてくる。

IT戦略室 企画官の菊島淳治氏に、ロードマップの見方、新しいロードマップの目指すところについて話を聞いた。なお、菊島氏は、ロードマップについて10月28日開催の【オンラインセミナー】官民ITS構想・ロードマップ2020と令和3年度自動車関連予算で、その取り組み内容について講演する。

――本日はお忙しいところお時間いただきありがとうございます。さっそくですが、官民ITS構想・ロードマップ2020について、概要を教えていただけますか。

はい。ロードマップは、総理大臣が本部長を務めるIT総合戦略本部において、2014年以降毎年発表されているものです。変化の早い領域なので、専門のWG(道路交通WG)で検討の上、最新の情勢変化を踏まえて毎年見直しが行われています。内閣官房は、内閣の補助機関であり総理大臣を直接補佐・支援します。主な業務は重要事項の企画立案と調査・情報収集。そして各行政部の施策統一も図ります。IT戦略室のようなプロジェクトごとの担当室を設置して、それぞれの課題に取り組みます。

ロードマップは、自家用車の自動運転・支援技術、貨客サービスでの無人自動運転や交通システム、関連する制度整備やインフラ整備について10年先までの短中長期の展望、マイルストーンを示します。同じ領域では、内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)も活動していますが、SIPは内閣府総合科学技術会議の中で主に技術開発部分を担当しています。政策面をIT戦略室が担うことで、両者は連携しながら活動しています。

――2020年は新しい道路運送車両法と道路交通法が施行され、レベル3自動運転の車が一定の条件の下走ることができるようになりました。これもIT戦略室の活動やロードマップが関係しているのでしょうか。

今回の法改正は、2018年に各府省庁と連携して策定した自動運転にかかる制度整備大綱が元になっています。ロードマップに示された自動運転を実現していくために、政府全体の制度整備の方針をまとめたものであり、今回の法改正のきっかけとなりました。

ロードマップ全体では、6つの社会課題と2つの経済的課題を掲げています。社会的課題には、移動の自由確保、地域の活性化、交通事故削減、移動の効率化、環境負荷低減、人材不足解消があると考えています。多くは少子高齢化や都市部の人口集中に起因する問題です。

関連して、モビリティによる生活利便性の向上や基幹産業である自動車産業の競争力強化も経済的価値を創出する課題として取り上げています。

――この中で自動運転はどのような技術や制度整備が必要になってくるのでしょうか。

法的な根拠も明確になったので、2020年度には高速道路でのレベル3自動運転が実用化されると言われています。これは自家用車の話ですが、トラックなどの物流関係では、2021年にトラックの有人隊列走行を高速道路上で実用化を目指し、後続車が無人の隊列走行を22年度以降に実施することとしています。そして2025年以降には、高速道路でトラックの自動運転レベル4につなげていければと考えています。

これらの実現には、高精度のダイナミックマップ技術、合流を制御する路車間・車車間通信技術、バスやトラックの自動運転のためのマーカーを敷設した専用レーンといった技術も必要です。

――ロードマップは毎年改定と伺いました。2019と2020の改定ポイントはなんでしょうか。

先ほど述べた8つの課題整理は、モビリティ分野の環境変化を考慮したものです。進む少子高齢化と人口集中について改めて社会課題を検討しています。移動サービスにおいて新たに2022年度までに遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスの開始を盛り込みました。まずはオペレーター1名に対して1台の遠隔操作から始め、将来的には1名のオペレーターで複数の自動運転車両を遠隔で監視しながら運行するサービスが広がっていくことを期待しています。

遠隔操作の実証実験などをやりやすいように、営業運行でも実験ができるように自動運転の許可申請についても条件を緩和しました。

――ロードマップ2020は7月に発表されましたが、2020年前半は新型コロナウイルスによるパンデミックがありました。この点はどのように反映されたのでしょうか。

例年は6月に新しいロードマップを発表していました。今回は7月にずれ込んだわけですがコロナの影響もあったからです。議論の中では4月に緊急事態宣言がでた時に、この大きいインパクトをどう判断するか。ロードマップにどんな影響がでるか様々な意見が出ました。

当然、パンデミック終息後も見据えた調整や変更が必要という意見もありました。しかし、一方で4月、5月の時点の状況評価だけで、中長期の予測やロードマップに反映させるのは難しい。もう少し俯瞰すべきという意見もありました。

結果的には、この時点で2030年までのプランには大きな変更・修正は行いませんでした。

――セミナーでは、他にどんなことを話す予定ですか。

基本的には、今回のロードマップの主なトピックをスライドを使いながら紹介していきます。概要だけでなく、主要項目の詳細、具体的な施策、事例の紹介なども時間が許す範囲で考えています。

―――
内閣官房の菊島氏が登壇するオンラインセミナー「官民ITS構想・ロードマップ2020と令和3年度自動車関連予算」は10月28日に開催される。

《中尾真二》

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