【フィアット パンダ 40周年】第3回…イタリア人の突っかけサンダルは永遠に[フォトヒストリー]

3代目フィアット・パンダ(319型)
3代目フィアット・パンダ(319型)全 46 枚

初代フィアット・パンダが発表された1980年から数えて、2020年は40周年。本企画では、歴代のエピソードと、イタリア在住ジャーナリストの筆者が過去23年の暮らしで撮影した、生活感溢れるパンダの姿をお届けする。

【写真】3代目フィアット・パンダ 319型(全46枚)

フランクフルトで発表、VWに対抗?

第3回は3代目(319型 : 2012年モデルイヤー~)である。3代目は、約8年生き延びた2代目(169型)の後継車として、フランクフルトモーターショー2011で公開された。

敢えてドイツを披露の場に選んだ理由として、当時欧州ジャーナリストの間では、セルジオ・マルキオンネCEO(当時)が、同じ会場で発表されたフォルクスワーゲン『Up!』に対抗したかったためと囁かれた。

3代目のプラットフォームには、先代パンダにも使用された社内呼称「ミニ」を改良・使用されてている。2007年に登場した『500』、そして2011年ランチア『イプシロン』と同じものだ。ボディは最新の欧州新衝突安全基準をクリアすべく、また居住性を向上させるため、全長で11cm、全幅で6.2cm拡大された。2011年フランクフルト・モーターショーにおける3代目フィアット・パンダ(319型)2011年フランクフルト・モーターショーにおける3代目フィアット・パンダ(319型)

スクワクル・デザイン

デザインは、一見キープコンセプトとみられがちである。だが、デザイン開発を主導したフィアット・デザインセンターのロベルト・ジョリートが込めたアプローチは、新たなものであった。

キーワードは「スクワクル(squicle)」だ。正方形(square)と円(circle)の合成語であるそれは、両者の中間を意味する。本人が『ラ・スタンパ』紙電子版に語ったところによれば、スクワクルは、正方形の効率性と堅牢性、円形の心地よさと柔軟性を兼備しているという。アップル社製品の数々にも取り入られていることでも知られる。実際に、エクステリア-インテリア双方に、このスクアクルが反復されているのがわかる。

同時に、冒頭のフランクフルトでジョリートが筆者に説明したところによれば、初代パンダのデザイン的特徴も反映したという。代表的な例が、広大な物置きスペースを備えたダッシュボードだ。助手席エアバッグ開口部をダッシュボード上方に設置することで実現している。

エンジンのラインナップで特筆すべきは、2気筒875ccターボの「ツインエア」である。先に500に搭載されていたもので、吸気バルブのコントロールに電子+油圧制御を用い、燃費低減と出力向上を図っている。欧州におけるダウンサイジング・ターボ潮流の先駆けとなった。

なお、このツインエアにはガソリン/CNG仕様も設定され、ガス充填所が欧州内でも屈指の多さを誇るイタリアで好評を博している。

生産拠点は、2代目がポーランド工場であったのに対して、イタリア南部のポミリアーノ・ダルコ工場が選ばれた。これは、当時のイタリア政府による国内雇用維持政策が影響を及ぼしたものである。3代目フィアット・パンダ(319型)3代目フィアット・パンダ(319型)

8年選手でもナンバーワン

ところで第二次世界大戦後イタリアでは長らく、登録される車の2台に1台はフィアット・ブランドといわれる時代が長く続いた。いっぽう2020年3月のイタリアインフラ運輸省統計によると、同ブランドのシェアは9.9%にまで低下している。

しかし、同年夏にイタリア政府が業界活性化策として導入したエコカー買い替え奨励金制度によって、パンダの販売に弾みがつきはじめた。パンダは2020年9月に1万3991台を記録。月間登録台数では1位を記録している。フィアット・ブランドの全登録が23,134台であるから、同ブランドの半数以上がパンダだったことになる。新型コロナウィルス対策としてイタリア全土が封鎖される直前に発表されたマイルドハイブリッド仕様も、ディーラーにとって心強い。

新型コロナの影響でイタリア国民が、より身の丈に合った車を選び始めている。実際に筆者の周囲でも、ドイツ製SUVからパンダに乗り換えたユーザーがいる。8年選手であるパンダだが、引き続きフィアット・ブランドの威信を支えている。

蛇足ながら、イタリアの路上を走る3代目パンダに薄いベージュ(ベージュ・カプチーノ:絶版)やホワイトが圧倒的に多いのは、この国のFCA販売店においてヴィヴィッドな色やメタリックカラーに発生する追加料金が不要だからだ。パンダは昔も今も、イタリア市民にとって小さくも偉大な突っかけサンダルなのである。【フィアット パンダ 40周年】第1回…それは天才の夏休みに生まれた[フォトヒストリー]
【フィアット パンダ 40周年】第2回…世襲の重圧を乗り越えて[フォトヒストリー]
【フィアット パンダ 40周年】第3回…イタリア人の突っかけサンダルは永遠に[フォトヒストリー]3代目フィアット・パンダ(319型)3代目フィアット・パンダ(319型)

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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