工場にもソーシャルディスタンスを…ヤマハ「協働ロボット」が実現する“次の一手”とは

ヤマハ発動機が開発した「協働ロボット」の試作機
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ヤマハ発動機といえばバイクや電動アシスト自転車の会社、というイメージが強いだろう。実はその事業は多岐にわたり、ボートやプールに産業ヘリなどいわゆる地上を走る“乗り物”だけに止まらない。その中でも異色ともいえるのが「ロボティクス事業」だ。14日、ヤマハのロボティクス事業部が本拠地である静岡・浜松で世界初公開したのは「協働ロボット」の試作機だった。

需要が高まるロボティクス事業

主力のSMT(表面実装機)工場の様子主力のSMT(表面実装機)工場の様子
ロボティクス事業部は、表面実装機(SMT)や産業用ロボットを開発・生産するIM事業と、産業用無人ヘリコプターのUMS事業から成り立っている。開発拠点は日本をはじめ、アメリカ、中国、ドイツ、インドなどグローバルに展開。ヤマハ全体の売上から見れば4.5%程度の構成比だが、2019年は756億円を売り上げる一大事業だ。

工場の自動化や、スマートフォン、自動車など向けの電子機器需要は高まる一方で、その生産現場にはより精密かつ高速化が求められている。これに応えるのがヤマハの表面実装機や産業用ロボットだ。表面実装と言ってもピンとくる方が少ないだろうが、簡単に言えば電子基板を製造する技術のこと。はんだを印刷した基盤に電子部品を載せてくっつけていくものだ。ヤマハのマウンター(基盤に電子部品を載せる機械)は最小で0.25mm×0.125mmもの極小チップを1秒間に約16個も搭載できるという。その精度はスギ花粉の直径20ミクロンとほぼ同じプラスマイナス25ミクロン以内だという。

高速、高精度なSMTを一括して生産、サービスすることができるのは業界でもヤマハだけと胸を張る。

「協働ロボット」が描くものづくり現場の改善

ヤマハ発動機が開発した「協働ロボット」の試作機ヤマハ発動機が開発した「協働ロボット」の試作機
そんなロボティクス事業部が見せた“次の一手”が協働ロボットの試作機だ。いわゆるロボットアームだが、その名の通り人とともに働くことを前提とした制御を備えているのが大きな特徴となっている。

具体的には、高精度な力(チカラ)センサーによって、動作中のロボットが周辺のものや人に触れた際にその反力や予期せぬ外力を素早く検知し、停止するなど適切な力を掛けることができる。これにより安全で柔軟な動作を可能とした。実際に高速でデモ動作をおこなうロボットに腕で触れてみると、優しく触れる程度で止まってくれた。

この協働ロボット開発の背景には、ものづくり現場での労働環境の改善、ソーシャルディスタンスの確保などが挙げられた。また、通常ロボットと人の作業スペースには安全柵などが必要だが、寄り添うように作業ができることで省スペース化にもつながる。日高祥博社長(“高”ははしごだか)は協働ロボットの導入で「1人で2人ぶんの能力」を発揮できると話す。

複雑な形状をなめらかになぞることができる。研磨などに役立つという複雑な形状をなめらかになぞることができる。研磨などに役立つという
さらに協働ロボットの力制御が実現するのは安全性だけではない。高精度なセンサーとモーターによって複雑な形状でもその表面に沿って適切な力を加えることができる。デモでは複雑な起伏のある円盤の表面をロボットが滑らかになぞる様子を見ることができた。「倣いワーク動作」と呼ばれたが、研磨な組み立てなどで特に効果を発揮するという。

他社からも協働ロボットは登場しているが、ヤマハは「高精度な力センサーを全軸に搭載しており、繊細な力検出、力制御が可能。この力制御によってより安全性を高めている」のがアドバンテージだと説明した。

この協働ロボット、名前もまだない状態だというが2021年中にユーザーへの導入を目指す。既存の導入先である車載、電機、電子業界だけでなく、食品・医薬品・化粧品の領域も見据え、年間販売台数ベースで2024年までに3000台を目指すという。

《宮崎壮人》

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