【マツダ MX-30 新型試乗】魅力が分かりにくい新型車ではあるが…渡辺陽一郎

マツダ2の課題が出発点になった

運転感覚はマイルド、だが特徴が分かりにくい?

新しいマツダ車の始まりを明らかに示唆している

マツダ MX-30
マツダ MX-30全 14 枚

マツダ2の課題が出発点になった

現行『マツダ2』を2014年に発売した時(当時の車名はデミオ)、市場調査を行った。コンパクトカーだから女性ユーザーにも意見を求めると、歓迎する声が聞かれる一方で、「私にはこのような高性能車は運転できない」といった話も多かった。マツダ2の販売状況を見ても、コンパクトカーとしては男性比率が高く、女性ユーザーを取り切れていないことが分かった。

表現を変えれば、2012年に発売された先代『CX-5』以降のマツダ車は、個性が明確だ。クルマ好きの熱心なファンを獲得できたが、個性が強いために、ユーザー層を狭めている面もあった。

マツダ MX-30マツダ MX-30
『MX-30』の開発では、このマツダ2の課題が出発点になっている。「今までマツダ車に興味を持たなかったお客様も振り向かせたい」「マツダ車への入口を広げたい」といった思いから、従来の躍動感を前面に押し出す「魂動デザイン」とは違うボディスタイルに仕上げた。

従来の魂動デザインでは、フロントマスクを鋭角的に仕上げ、サイドウインドーの下端は後ろに向けてキックアップさせている。ボディ後端のピラー(柱)は太い。「チータが獲物を追いかけて疾走する時のような生命感」を重視した。

これに対してMX-30は、フロントマスクを少し柔和に仕上げ、サイドウインドーの下端も水平基調だ。内装にコルクを使うなど、従来の魂動デザインとは違う穏やかな仕上がりを見せる。

運転感覚はマイルド、だが特徴が分かりにくい?

マツダ MX-30マツダ MX-30
それは運転感覚にも当てはまり、乗り心地は18インチタイヤで指定空気圧も250kPaと高めに設定しながら、硬さを抑えた。50km/h以下で街中を走ると少しコツコツするが、歩道から車道へ降りる時の段差などでは突き上げ感を和らげた。

メカニズムなど基本部分は『CX-30』と共通だが、MX-30では操舵感覚も少しマイルドで、機敏に曲がる印象を抑えた。開発者は「すべてのGを滑らかに繋げるように配慮した」と述べており、内外装と同様、運転感覚もリラックスできる。

MX-30は観音開きのドアを採用するなど外観の機能に個性を持たせたので、従来の魂動デザインとは違うリラックス感覚がいまひとつ分かりにくい。本当は2代目デミオに設定されたグレード、「コージー」のように、背の高いコンパクトカーであれば特徴も明確に表現できた。

マツダ MX-30マツダ MX-30

新しいマツダ車の始まりを明らかに示唆している

今後はMX-30のデザイン路線で、新しいマツダ車が生まれる。ミニバンは難しいかも知れないが、背の高いコンパクトカーなど、今の国内市場に合った閉塞した時代を和らげるような新型車も登場するだろう。

最近は前方を睨み付け、周囲のクルマを押し退けて進むようなデザインが多い。街中の雰囲気も殺伐とするから、すべてのユーザーがこのようなクルマを望んでいるわけではない。MX-30から始まるリラックス感覚と穏やかさを備えたマツダ車に期待したい。

またMX-30では、販売方法も変更された。発売の数か月前から受注するやり方は採用していない。2020年10月8日の発表と同時に発売され、車両を見られない状態で商談や契約をする売り方を改めた。つまり以前の売り方に戻している。

MX-30は魅力が分かりにくい新型車ではあるが、新しいマツダ車の始まりを明らかに示唆している。

マツダ MX-30マツダ MX-30

■5つ星の評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

《渡辺陽一郎》

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト 1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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