[カーオーディオの“こだわりポイント”]スピーカー編…振動板素材

モレルのフラッグシップスピーカー『スプリーモ602』。ミッドウーファーの振動板にはカーボンファイバーが使われている。
モレルのフラッグシップスピーカー『スプリーモ602』。ミッドウーファーの振動板にはカーボンファイバーが使われている。全 3 枚

カーオーディオにはさまざまなこだわりポイントが存在している。当特集では、カーオーディオをより深く楽しむための参考にしていただこうと、その1つ1つを掘り下げて解説している。今回は、スピーカーの“振動板素材”について考えていく。

振動板素材に求められる性質は、「軽さ」「硬さ」「適度な内部損失」、この3つ!

スピーカーの振動板にはさまざまな素材が使われている。なお、どの素材が優れているのかは一概には言えない。そして、素材ごとでの音色傾向の違いも少なからずはあるものの、一律に比較・分析するのも難しい。

しかし、素材にはどのような特徴が求められるのか、さらにはどのような素材があるのか等々を知っておくと、スピーカー選びの参考にはなる。試聴をする際にスピーカーの特長を推し量れたりもするし、各スピーカーの開発思想やコンセプトも垣間見れる。結果、選考する楽しさが深まっていく。

というわけで今回はスピーカー選びを一層満喫していただくべく、スピーカーの振動板素材についてのウンチクのあれこれを紐解いていく。

さて、まずはスピーカーの振動板素材にはどのような性質が求められるのかを紹介していこう。基本的には以下の3要素が求められる。「軽さ」「硬さ」「適度な内部損失」、この3つだ。

なお、これら3つの性質は相反する。つまり、あちらを立ててればこちらが立たなくなるいわゆるトレードオフの関係にある。ゆえに話は単純ではなくなってくる。

硬いと反応スピードが速くなる。結果、入力される音楽信号に対しての追従性が高くなるので、音楽を快活に再現しやすくなる。しかし硬さを追求すると重くなることがあり、それでは反応スピードはむしろ遅くなる。なので金属系の素材が使われたりもするが重い金属が選ばれることはない。

フォーカルの上級スピーカー『165W-XP』。当機のツイーターの振動板にはベリリウムが使われている。

強度と反応スピードに利があるのは「ハード系」、素材そのものの固有音が少ないのは「ソフト系」。

なお、3つ挙げた中の「適度な内部損失」とは何のことなのかと言うと…。

これは言い方を変えるなら、「素材自体の固有音の影響度が少ないこと」である。例えば何かモノを指で軽く叩くとそのモノから音がするが、「内部損失が高い」素材は音が響きにくく(音を発しにくく)、「内部損失が低い」素材はカンカンとかその素材特有の音を発する。で、スピーカーの振動板素材として使用するならば、素材固有の音を発しにくいものの方がアドバンテージを発揮する。なぜなら、音に余計な音(素材自体から発せられる音)が乗りにくくなるからだ。

なお、高音再生用のツイーターでは、素材のチョイスの考え方が2とおりある。反応の速さに重きを置いてハード系と呼ばれる金属系の素材が採用されることもあれば、内部損失の高さに重きを置いてソフト系と呼ばれる柔らかな素材が使われることもある。

さて、振動板素材として使われることが多いモノを具体的に挙げてみよう。金属系の素材としては、チタン、アルミニウム、マグネシウムあたりが使われることが多い。で、これらは硬く伝搬スピードも速いのだが、内部損失は低めである傾向が強めだ。対して内部損失が高い素材の代表格は、紙だ。そしてツイーターに使われることが多いシルク系素材も内部損失の高い素材として知られている。

また、各特徴をバランス良く有しているものとして、繊維系や樹脂系素材があり、これらは中低音の再生を担当するミッドウーファーで用いられることが多くなっている。ただしこれらはバランスは良いものの、すべてにおいて中庸的な特徴を示すこととなる。特出した特徴を持たないという傾向が強いのだ。

ダイヤトーンのスタンダードスピーカー『DS-G300』。ツイーターとミッドウーファーの両方の振動板に、三菱電機の独自素材「NCV」が使われている。

希少な高級素材が使われることもある!

そしてさらには高級素材が使われることもある。代表的なものとしては以下の3つが挙げられる。ダイヤモンド、ベリリウム、ボロン、以上だ。これらは「軽さ」「硬さ」「適度な内部損失」が高度にバランスされている傾向があるが、素材そのものが希少であり結果価格が高くなりがちだ。また、加工が難しいことも難点となる(このことも価格に影響を与える)。

なお、ツイーターとミッドウーファーの「素材を統一する」というアプローチで作られた製品もある。一般的には、高音を再生するツイーターと中低音を再生するミッドウーファーのそれぞれで、それぞれの再生に有利な素材がチョイスされることも少なくないのだが、そこを敢えて統一することで、高音から低音までの鳴り方、つまりは音色を統一してサウンドの一体感を出すことが目指される、というわけなのだ。

具体的には、ビーウィズのフラッグシップスピーカー『コンフィデンスlll F シリーズ』やスタンダードラインである『リファレンス AM シリーズ』、そしてダイヤトーンの『DS-G300』がそれに当たる。ちなみにダイヤトーンは、サブウーファー『SW-G50』の振動板にも同一素材を用いている。

なお振動板は、素材のみならず構造にも工夫が凝らされることも多い。例えば、複数の素材が用いられ何種類かの部材が張り合わされて作られたり、剛性を高めるためにリブ的な補強が入れられることもある。これもつまりは、「軽さ」と「硬さ」の両取りを狙うときの工夫の1つだ。

というように、各メーカーは振動板の素材にこだわり、そして最新技術も注入して振動板の性能を高める工夫をたゆまず続けている。スピーカー選びは最終的には実際に音を聴いて好みに合うかどうかで判断すべきなのだが、何が使われているか、どんな工夫が注がれているかを知ることで、製品選びが一層楽しくもなってくる。振動板の素材や構造にも、ぜひご注目を。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

追求するほど楽しさ倍増! カーオーディオの“こだわりポイント”を大解説 Part1 スピーカー編 その3“振動板素材”にこだわる!

《太田祥三》

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