ホンダが実現する「レベル3」自動運転、その開発はいかにして進められたか…オートモーティブワールド2021

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レベル3自動運転機能を搭載し2020年度中に発売されるホンダ レジェンド(写真は現行モデル)
レベル3自動運転機能を搭載し2020年度中に発売されるホンダ レジェンド(写真は現行モデル)全 6 枚

ホンダは自動運転レベル3の機能を搭載した『レジェンド』を2020年度中に発売する。『Traffic Jam Pilot(トラフィック・ジャム・パイロット)』と名付けられた自動運行装置は国土交通省の型式指定をすでに取得済みで、国のお墨付きを得たレベル3搭載車は世界初となる。

Traffic Jam Pilotの開発を手掛ける本田技術研究所・先進技術研究所AD/ADAS研究開発室の波多野邦道エグゼクティブチーフエンジニアは「世界初を狙うこと自体を目的としたわけではない」と話す。

レベル3自動運転を実現するTraffic Jam Pilot

ホンダ レジェンドをベースにした自動運転の試作車ホンダ レジェンドをベースにした自動運転の試作車
波多野氏によると、ホンダが本格的に自動運転の実用化というレベルで技術開発をスタートしたのが2014年。2017年には技術としてある程度、今の姿を想定したスタートラインを切れる状況になっていたという。以降の3年間で「その時点でも課題を共有していたので、それをひとつひとつ解決していった」ことで、世界初のお墨付きを得たことになる。

「将来に向けた自動運転技術の向上の中で、ホンダとしても適切なタイミングで我々が持っている技術をお客様に理解して頂き、それをもとにした安全を担保する技術の向上ということをわかって頂く、そのひとつの過程として、今回はTraffic Jam Pilotを定めてやってきた。それがホンダの計画や、官民ITS構想ロードマップで示されている2020年近辺で実用化というタイミングに、やっていくうちに合ってきたのが実際のところ」(波多野氏)

ホンダのTraffic Jam Pilotは、その名の通り渋滞時にシステムがドライバーに代わって運転操作をしてくれる機能を備える。高速道路本線上で30km/h以下の渋滞時での作動開始、同一車線などの一定条件を満たした場合に、前走車を自動追従してくれる仕組みだ。

高速道路上での自動追従は日産自動車の『プロパイロット2.0』やSUBARU(スバル)『アイサイトX』でも手放し運転が可能だが、いずれもレベル2の運転支援車で、あくまでもドライバーの責任の下での運転支援。

一方、ホンダのTraffic Jam Pilotは、システムがドライバーの代わりに運転操作するので、システムが作動している間、ドライバーは周囲に気を配る義務がなくなり、テレビ画面を見ながら寛ぐこともできるようになる。

いかに「安全であるということを示すか」

ホンダ レジェンドをベースにした自動運転の試作車ホンダ レジェンドをベースにした自動運転の試作車
つまり同じ前車自動追従であっても、レベル2とレベル3では、その責任の所在が大きく異なる。それだけに「やはり一番難しいのは、いかに『安全であるということを示すか』ということ」と波多野氏は指摘する。

「安全というと曖昧な言葉になるので、もう少し細かく言うと『許容できないリスクが存在しない』という状態を作り出すことが重要。あらかじめ想定される色々なケースの中で、自動運転のシステムが原因で人身事故を起こしてはならない。これを具体的に実証していく作業というのは、レベル2では取り組んでいなかったエリア。そこには大きな技術的なギャップというか、乗り越えるべき技術として大きな課題があった」(波多野氏)

その課題解決にあたっては「ホンダは、安全性を非常に重要視していて、その確保に関しては配慮している。レーダー、ライダーなど様々なセンサーを使っているが、それをしっかりと複数設けて、万が一の時にも機能をできる限り維持できる仕組みを設けた」という。

さらに「走る・曲がる・止まるの部分に関しても複数デバイスを設置して、機能を維持できるようにしている。ステアリングやブレーキシステム、最終的には電源領域も複数同時に壊れないようにする配慮もしている。これが大きな特徴だと思っている」とも。

次なる自動運転技術のメニューは

ホンダが2019年のホンダミーティングで見せた高速道路での自動運転のビジョンホンダが2019年のホンダミーティングで見せた高速道路での自動運転のビジョン
ホンダの八郷隆弘社長は、国内外の報道機関に最新の製品や技術を披露する「ホンダミーティング」で2019年、自動運転技術に関して「2020年に高速道路での自動運転技術の量産化を実現」すると表明し、複数車線での自動走行を可能とするドライバーの指示が不要な自動車線変更機能や、渋滞時にドライバーが周辺監視を行う必要がない自動運転の実用を目指していることも明かしていた。

レジェンドに搭載されるTraffic Jam Pilotは、まさに八郷社長が示した高速道路での自動運転技術メニューのうちの後者を実現したものになる。「高速道路の場合、実は交通事故のおよそ半数は50km/h以下の速度帯で起きているという事実がある。一番効果的な速度域でヒューマンエラーを防止する機能を提供していくことが、最初にやることとしては良いだろうということと、技術的な実現性とのバランス。これを色々トライした結果、今回はTraffic Jam Pilotという形でまずはお客様に提供する、ということで実施に至った」と波多野氏は明かす。

となると、次なる自動運転技術のメニューが気になるところだが、波多野氏は「その次のステップは走行できるエリアを広げていくということがまず重要だと考えている。これは単純にどこの地面を走れるということだけではなくて、地域も含めてということになると思う。一方で、よりハイレベルな自動運転の技術というのは、レベル3のように自律して走っていける技術というよりは、高い『自動化率』が重要になる。例えばインフラと協調もしながら高い自動化レベルを達成するというアプローチもある。そういったものに関してはホンダに限らず、移動サービスの側からもサービスが広がっていき、実際に提供が始まっていくと想定している」と語る。

「第13回オートモーティブワールド」で講演

その波多野氏は2021年1月20日から東京ビッグサイトで開催される「第13回オートモーティブワールド」の専門セミナー2日目の「進化を続ける自動運転の最新技術」に登壇し、「レベル3自動運転システムの開発概要」をテーマに講演する。

波多野氏は「自動運転の実用化にあたっては、個社が頑張れば達成できるというものではない。官民一体となって取り組んできたことの成果なので、弊社にかぎらず、いろんな意見や技術を持ち寄ってルール作りや、社会システムの検討など、どんどん議論の中に参画頂ければと考えている。そうして日本全体として自動運転技術がより早く広がっていくことを期待したい」と呼び掛けていた。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Seminar/2021/inwtokyo/top/?id=AUTO&lang=jp

■第13回 オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展する。「展示会はいかなる場合でも予定通り開催することが大原則である」という主催社の考えのもと、徹底したコロナウイルス対策をおこない出展社、来場者の安全を確保し予定通り開催される。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://regist.reedexpo.co.jp/expo/NWJ/?lg=jp&tp=inv&ec=AUTO

会期:2021年1月20日(水)~22日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第13回 オートモーティブワールド 詳細はコチラ!

《小松哲也》

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