EVブームの十数年前と今、何が違うのか? 電動化の最前線と展望は…第12回[国際]二次電池展 3月3日開幕

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デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員 パートナー、周磊氏
デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員 パートナー、周磊氏全 8 枚

2021年3月3日(水)から3日間にわたり、東京ビッグサイトで第12回[国際]二次電池展が開催される。全固体電池をはじめ、クルマの電動化の中心を担う二次電池の製造・開発に向けた最先端技術が一堂に会する技術商談展だ。

ビデオ通話や出展製品の閲覧などが可能なオンライン商談サービスも導入し、業界、ビジネスの活発化をめざす。一方で商談の本質はやはり展示会場を訪れ、製品を見て触れながらフェイストゥフェイスでおこなうもの。二次電池展では徹底したコロナ対策を講じながらおこなわれる「リアルな展示会」であることが最大の目玉だ。

そして展示会と並び、リアルなイベントとして二次電池展の柱となっているのが多岐にわたる業界関係者や著名人によるセミナーだ。今回も全固体電池、EV、材料技術など全200講演がおこなわれる。

「エネルギー業界における未来予測 ~DX・Mobility~」の中で「EV/New Mobilityの最前線と展望」をテーマに講演するのは、自動車、ICT、エレクトロニクス、モビリティサービスといった業界を中心に、日本国内のみならず、欧米、中国、インドなど、諸外国を対象とした多数のプロジェクトに参画するデロイト トーマツ コンサルティングの執行役員 パートナー、周磊氏だ。

周氏は、「十数年前の電動化と今の電動化とでは大きく異なる。その違いは、コンテンツ(ADAS・コネクティッド機能等)がより豊かになっているということだ」と語る。本稿では周氏への先行インタビューから、電動化の今、そして電池に求められているものを探る。

2030年代の新車電動化、選択肢はEVだけではない

日産 リーフ 初代モデル(写真は2009年の東京モーターショーにて)日産 リーフ 初代モデル(写真は2009年の東京モーターショーにて)
温暖化ガス排出削減に向けて、世界の主要各国で電気自動車(EV)を始めとする電動化車両を普及させるため、ガソリン車の販売を規制しようとする動きが強まっている。日本政府もこれまでは“2030年代半ば”に全ての新車販売を電動車両にする、という様な表現を用いていたが、今年の1月の施政方針演説では、“35年“と時期を明確にする等、電動化シフトに本腰を入れている様子がうかがえる。

これまでにも何度となくEVブームの波が押し寄せては消えていったが、周氏は「例えば十数年前のEVブームでは、日産自動車の『リーフ』の発売や、スモール・ハンドレッド(百社単位の小規模EVベンチャー企業)の登場が印象的であったが、あくまでパワートレインにおける新たな選択肢としてEVが捉えられていた。その後(テスラCEOの)イーロン・マスク氏が、EVにソフトウェアを持ち込み、テクノロジーと融合させたことが、間違いなく大きな転換点になった」と指摘する。

その上で「EVが新たなパワートレインとしてだけではなく、知能化・コネクティッド化の要素も加わる事で、我々のドライブシーンや生活シーンにおける重要な構成要素となりつつある。つまり、EVがエネルギー・交通・ICT等に関わる社会に欠かせないインフラのひとつとなっていく。非常に立体的なコンセプトを有すると言える。今後、スマートシティ、MaaS、SDGs等の多方面のトレンドが我々の生活と密接していく中で、技術の進化、もしくは社会進化のひとつの象徴となるのではないか」と周氏は話す。

水素ステーションで充填するトヨタ MIRAI水素ステーションで充填するトヨタ MIRAI
「昨今、自動車業界では“well to wheel”(資源採掘からクルマが駆動するまでの総合的なエネルギー消費)という概念が浸透しつつある。EVはまさにカーボンニュートラルに向けたキラーコンテンツとしても期待されている。さらに電動化の波は自動車のみならず、多様なニューモビリティへ広がりを見せている。自動配送車両、小型巡回ロボット、ドローン、電動キックボード等の今度交通インフラを支えるであろうモビリティやロボット等がその一例である。我々は、交通インフラのエネルギー革命の渦中にいると見てよい」と周氏は続ける。

とはいえ2030年代半ばまでにすべての車両をEVに切り替えるのは至難の業だ。周氏は「2030年代の電動車シフトにおいて、決してピュアEVでなければならないというわけではない」とした上で、「FCVも航続距離の観点からは、非常に理想的である。しかし、水素ステーション、アフォーダブル(手頃さ)等において、まだ課題が多い状況である。これは自動運転についても言える話だが、レベル4、レベル5の完全自動運転を一気に普及できないのと同じで、10年20年のスパンでひとつひとつクリアしていく必要がある」とみている。

補助金頼みではなく自発的な社会の進化で「量」は増える

テスラ モデルSのボディフレームと敷き詰められたバッテリーテスラ モデルSのボディフレームと敷き詰められたバッテリー
アフォーダブルという点では、現時点でもEVはガソリン車と比べるとまだまだ高価だが、周氏は「高いというのは、やはりまだ量が足りないということ。当然ながら造れば造るほど原料の確保、それに安全性の担保も必要になる。全個体電池など様々なテクノロジーも開発中だが、莫大な開発コストの価格転嫁を抑制するには、やはり量産化により一製品当たりの開発コストを下げていくことが重要だ」と話す。

その一方で「我々がテスラに学ぶべきは、バッテリーの効率をいかに上げていくかということ。汎用的な電池でもソフトウェアでマネジメントすることで効率性を上げている。。つまり、電池のライフサイクルをマネジメントしていくことで、電池のコストを下げていくことが出来る」と周氏は指摘する。

またEVそのものの価格に関しても周氏は「10年前のEVは、補助金による購入価格の低減が無ければ、個人ユーザーに販売することは難しかった。しかし今のEV(例えばテスラなどのハイエンドモデル)では、自動車メーカー側がバッテリーなどでコストがかかったとしても、コンテンツ等の付加価値を付けて販売価格に上乗せすることで、ある程度補えるようになっている。良い商品であれば補助金の有無に関わらずユーザーは買うということだ」と分析する。

テスラ モデル3の運転席テスラ モデル3の運転席
「ソフトウェアを電動化の製品に持ち込むことで“空気が変わった”というのが非常に大きなポイント。今のEVは、高度なコネクティッド機能等、車内の人がクルマと交流できる魅力的な商品が増えた事で、スマホの世界観を好む若手世代を中心に購入層が広がりつつある。かつてのように補助金だけという世界ではなく、より自発的な社会の進化によって量が増えていくのは間違いない」

さらに周氏は「法人ユーザーはEVを物流のためにフリートで使うようになっていく。その際にEVメーカーはEV単体で収益を上げるというのではなく、アフターサービスも含めたトータルで収益を確保するようになる」と、EVの普及につれて販売手法や収益化ポイントにも変化が生じるとみている。

New Mobilityに求められるものとは

日本を始め先進各国政府が脱ガソリン車に舵を切り始めたが、その電動化政策にバッテリーの数は追いつけるのか。「現状ではまだまだ足りないが、今後は市場原理が働き、電池の革新も起きてくる。OEM各社の投資計画に応じて、バッテリーにおける新規プレーヤーも入ってくる。既存プレーヤーも能力を増強することで量を確保していくのではないか」。

そう語る周氏は、二次電池展の初日に行われるセミナーで「EV/New Mobilityの最前線と展望」をテーマに講演する。周氏は「私が皆様にお伝えしたいのは、EVやニューモビリティの未来、それらを実現するテクノロジーだ。十数年前のEVのテクノロジーに対して、これからのEVのテクノロジーには、何が求められてくるのかということなどを解説したい」と話した。

本講演の詳細はこちら

■第12回[国際]二次電池展
会期:2021年3月3日(水)~5日(金)10時~18時(最終日は17時まで)
会場:東京ビッグサイト 南展示棟
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社

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《小松哲也》

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