【VW パサート 新型試乗】“普通であることの心地よさ”を味わわせてくれる…島崎七生人

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)全 25 枚

もともと『パサート』は、初代『ゴルフ』『シロッコ』とともに、ビートルの次世代を担う“風の車名シリーズ”の一員として登場。以来、今回のマイナーチェンジモデルで実に“8.5型”となる訳だから、息の長さで『ゴルフ』と肩を並べる。

レポーター自身、個人的にも『パサート』は好きなクルマのひとつだ。いつのどの世代でも“普通であることの心地よさ”を味わわせてくれるからだ。今回の新型の試乗でも、そのことが改めて実感できた。

「新ロゴ」光る外装の変更

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
試乗車は「パサート オールトラック TDI 4MOTION Advance」。ご存知のとおりワゴンボディの「パサートヴァリアント」の車高をアップさせ、より走りのポテンシャルを高めたモデルだ。最新型の諸元では最低地上高の表記が省かれているが、従来型とはサイズの変更がない(数字上、全長だけ5mm増した)ことから、新型の最低地上高は従来型と同様とすれば、ヴァリアントより30mm高い160mmとなる。

タイヤサイズも同グレード同士で新旧の変更はなく245/45 R18サイズだが、実車を見て感心したのはアルミホイールが何と直前のモデルからのキャリーオーバーということ。デザインも塗装も派手すぎす洗車もしやすいホイールだし、いい物は長く大切に使う精神……は『パサート』らしくていいと思う。

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
外観はグリルや前後灯体類が新しい。それとVWのロゴが新CIのものになり、印刷物やPCの画面上で見ていたのはモノトーンだったが“実物”はクロームと内側がブラックの3Dタイプに。これもスッキリとシンプルになった印象。

リヤにはVWロゴの下に“PASSAT”のバラ文字が付く。オールトラックでは前後バンパー形状の変更に伴いアンダーガード部分のデザインは新しいが、ホイールアーチ(ホイールハウスエクステンション)、サイドシル部分は変わりはなさそうだ。

なくなったアナログ時計と、新採用の空調スイッチ

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
インテリアも基本デザインは踏襲され、装備と一部ディテールに変更がある程度。“程度”と書いたが、中央にあったアナログ時計が、車名ロゴとここに移設されたハザードランプスイッチになぜか置き換わっていることが、密かに残念に思えた。VW関係者からは「画面を切り替えればここに時計が表示できますから」と説明は受けたが……。

それと新しい操作系の採用で空調スイッチ(温度設定、風量)が従来のダイヤル式から指先でなぞる方式に。これも走行中のブラインド操作には熟練の技が必要そうだ。

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
それと3代目ヴァリアントで1500リットルの容量が確保されて以来、同ボディのラゲッジスペースの大きさはこのクルマの魅力だが、最新型では1769リットルを確保。実際のスペースもとくに奥行きが1140mmと大きく、幅(約1000mm)、高さ(床から天井まで約750mm、床からトノカバーまで約480mm)と申し分ないゆとりで、ラゲッジボード床下のスペースもたっぷりしている(以上サイズは試乗時のレポーターのおおよその実測値)。

上級実用車らしいパサートの走り

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
走りは爽快な印象。エンジンは(カタログ上の型式は違うが)従来どおりの2リットルのディーゼルターボで190ps/40.8kgmのスペックも変わらない。けれど組み合わせられるトランスミッションは新しい7速のDSGで、実際のドライブでは、ギヤ比が全面的に変更されていることもありステップがより的確な、スムーズな変速が実感できた。もちろん“D7”のエンジン回転がおよそ1500rpmと低く保てるから、静粛性、燃費にも貢献する。

燃費は今回の試乗では、加・減速を繰り返すなどの撮影時の扱いを含み、16.7km/リットルほど。新しいWLTCモードは15.0km/リットルだが、これを上回っていて、高速道路を長くコンスタントに走るようなケースではよりいい燃費が得られそうな感触だった。

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)
動力性能は申し分なく、ノーマルでも軽やかに走り、モードをスポーツに切り替えれば、期待以上の闊達な走りもみせる。例によって1600km+αを走った程度の試乗車だったから、エンジン、足回りの馴染みが進むのはこれからの雰囲気も強かったが、高速走行時の乗り味はしっとりとしており、4MOTIONの安心感も見逃せない。ゆったりとした上級実用車という『パサート』らしさは、今回も保たれている。

VW初採用の同一車線内全車速運転支援システムのTravel Assist、最適な配光を可能にしたIQ.LIGHTを始めとした新機能、新装備も見逃せない。

VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)VW パサート オールトラック 改良新型(TDI 4MOTION Advance)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  4. 中国製部品の急成長で2025年以降日本製の車載半導体は使われなくなる…名古屋大学 山本真義 教授[インタビュー]
  5. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  6. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  7. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  8. タイヤブランドGTラジアルよりオールシーズンタイヤ「4シーズンズ」発売
  9. [カーオーディオ 逸品探究]実力ブランド「モレル」の最新ハイエンド機『イレイト カーボン』の魅力に迫る!
  10. マツダ、電動SUVをサプライズ公開、コンセプトモデル『創 ARATA』とは…北京モーターショー2023
ランキングをもっと見る