【ホンダ フィット 800km試乗】トールワゴン人気を跳ね除ける実力はあるか

フィット HOME 1.3リットルガソリン
フィット HOME 1.3リットルガソリン全 20 枚

ホンダのBセグメントサブコンパクト『フィット』で800km弱ツーリングする機会があったので、インプレッションをリポートする。

フィットは第1世代の登場が2001年と、比較的歴史の浅いモデル。2020年2月に発売された現行モデルは第4世代にあたる。プラットフォームは第3世代のキャリーオーバーでディメンジョンもほぼ同一だが、フロントAピラーまわりの構造が大規模改修され、外観の印象はかなり異なるものになった。

パワートレインは1.3リットル+CVTの非ハイブリッドと1.5リットル+2モーターのハイブリッドの2種類があるが、今回テストドライブしたのは非ハイブリッド版。グレードは下から2番目の「HOME(ホーム)」。オプションとしてカーナビ、および185/55R16タイヤ+アルミホイールが装備されていた。

ドライブルートは関東および甲信越。東京を出発後、栃木の日光湯元に達した後、引き返して今度は秩父から雁坂トンネル経由で山梨の勝沼に至り、そこから東京に戻るというもの。道路比率は市街地3、郊外路5、高速1、山岳路2。総走行距離の8割が2名乗車、2割が1名乗車。エアコンAUTO。

まず、ガソリンエンジン版フィットの長所と短所を5項目ずつ列記してみよう。

■長所
1. 広い車室と荷室、ドア開口角度の大きさなどが生む使い心地の良さ。
2. ステアリング介入ありの先進安全システム「ホンダセンシング」を標準搭載。
3. 前方視界の死角が少なく、安心感が非常に高い。
4. ドライブフィールが滑らか。とりわけ高速クルーズ時は秀逸。
5. シンプルでわかりやすくフレンドリーな操作系。

■短所
1. 安定性は高いが、第3世代に比べるとファントゥドライブ性はやや後退。
2. 実走燃費は悪くはないが、旧型と比べるとやや落ちた印象。
3. 後席ドア内張りのひじ掛けの位置がおかしい。もう一息作り込んでほしい。
4. ヘッドランプの性能が平凡で夜の山間部では心もとない。
5. もう少しウエストラインを下げられれば開放感がもっと増したのに。

これ以上ないほどの実用性のかたまり

フィット HOME 1.3のサイドビュー。前面衝突の受け止めを三角窓の前ではなく後ろのピラーで受け止める構造に変えたのが特徴。三角窓の拡大はパッケージング変更ではなく後Aピラーを倒すことで生まれた。フィット HOME 1.3のサイドビュー。前面衝突の受け止めを三角窓の前ではなく後ろのピラーで受け止める構造に変えたのが特徴。三角窓の拡大はパッケージング変更ではなく後Aピラーを倒すことで生まれた。
インプレッションに入っていこう。あらためて乗ってみた第4世代フィットは、サブコンパクトクラスの低車高ハッチバックとしてはこれ以上はないというくらいの実用性を持ったクルマであった。全長4m以内というショートボディの低車高ハッチバックにもかかわらず室内は前後席とも十分な広さがあり、開放感も高い。

荷室容量はVDA方式で427リットルと、1クラス上のCセグメントハッチバックを凌駕するレベル。走りは徹底した安定志向で、市街地、高速、山岳路と、シーンを選ばずそつなくこなせる。ステアリング介入ありの運転支援システム「ホンダセンシング」もそこそこいい仕事をした。移動体としてここはぜひ直してほしいと思う不満点はヘッドランプの配光特性が悪いことくらいだった。

半面、実用主義から一歩前に進んだプラスアルファの部分は希薄。最高出力98psの1.3リットル+CVTはクルマを動かすだけの仕事は十分にこなすが、爽快感を覚えさせるような加速力は生み出さない。ハンドリングはまとまりは大変良いが刺激性は希薄で、アグレッシブに走りを楽しむことを受け入れるような性格ではない。

前席。2本スポークステアリング含め、徹底的にユルさを追求したデザイン。ダッシュボードが低く、圧迫感は着座位置の高いミニバン並みに小さい。前席。2本スポークステアリング含め、徹底的にユルさを追求したデザイン。ダッシュボードが低く、圧迫感は着座位置の高いミニバン並みに小さい。
インテリアはシンプルで機能的にまとめられ、デザイン的には好感が持てるが、感触的にはかなりプラスチッキーで、質感は同格のライバルの中でもかなり低いほうだ。

クルマのプレジャーは所有する喜び、見せる喜び、走る喜び、使い倒す喜び等々さまざまだが、第4世代フィットは歴代モデルの中で「使い倒す喜びの比重が最も高いクルマ」となった気がする。マイカーをこれ1台ですませたい層にはまさにど真ん中ストライクなはずなのだが、日本市場の特性を見ると、このキャラクターは背の低いタイプの立体駐車場に入るかどうかを除き、ダイハツ『トール』/トヨタ『ルーミー』やスズキ『ソリオ』など1クラス下のAセグメント・トールワゴンとモロにバッティングする。

走りやロングドライブ耐性はもちろんフィットのほうがいいに決まっているし、実用上の積載力だってそうそう負けちゃあいないのだが、道具としてのクルマを求める層のトレンドはスライドドア装備のトールワゴンに傾いている。そのなかでフィットが存在感を出していくには、トールワゴンより低車高ハッチバックのほうがトータルバランスがいいと顧客に明確に伝わるようなコミュニケーションを行っていく必要があるだろう。

刺激はないが、操縦性、堅牢さはなかなか

フィット HOME 1.3のフロントビュー。大型の三角窓を持つグラスキャノピー風のデザインが特徴。フィット HOME 1.3のフロントビュー。大型の三角窓を持つグラスキャノピー風のデザインが特徴。
では、細部についてもう少し詳しく見ていこう。まずはボディ&シャシー性能だが、走りや乗り心地はロングツーリングでも過不足を感じないよう、しっかり作り込まれている。プラットフォームは旧型の改良だが、その旧型自体、ボディは悪路でも音を上げない堅牢さがあったし、走りについても良いものを持っていたので、完全新設計でなくとも性能面での不満はほとんど感じなかった。

走りの味付けの方向性は、路面に柔らかく粘り付く系。ステアリングを切ると横Gがそれほど強くない段階で前輪が結構大きくロールする。といって、そこでサスペンションのキャパシティを使い切るのではなく、そこからさらに横Gが強まってもアンダーステアが急に増えたりしない。日光いろは坂下り線のようなタイトコーナーが連続する区間での安心感は大変高かった。秩父方面ではうねりのきつい、かなりバンピーな路面の道路も走ったが、そういうコンディションでのグリップの安定度もなかなかのものであった。

試乗車には185/55R16タイヤ+16インチアルミホイールが装備されていたが、乗り心地や維持費の点では標準の185/60R15+15インチスチールホイールのほうがいいだろう。試乗車には185/55R16タイヤ+16インチアルミホイールが装備されていたが、乗り心地や維持費の点では標準の185/60R15+15インチスチールホイールのほうがいいだろう。
第3世代との対比では、コーナリング時の内輪の浮き上がりが少ないオンザレール感覚の操縦性を持っていた後期型より、アバウトであるかわりに路面状況の変化に強かった前期型に近い。それから突き上げ、ガタつき感を大幅に取り去ったような感じだった。こういう鷹揚な味付けは長旅に向いているし、運転にあまり自信がないというユーザーであっても不安感を覚えずにすむであろう。

欠如しているのは走りの刺激性でステアリングを切り増すにつれてGの高まりとロール角の増大がぴったりリンクしてついてくるような操縦フィールはない。そういうテイストを実現させるコストがあるなら他に回すという感じである。

タイヤはオプション設定されている185/55R16サイズのヨコハマタイヤ「BluEarth-A」と16インチアルミホイールが装備されていたが、基本的には標準の185/60R15+スチールホイールでウェット、ドライとも十分に満足なグリップを得られるであろう。バネ下重量の点でも有利だろうし、タイヤがすり減ったときの出費も安くてすむ。

燃費は悪いというほどではないものの…

次にパワートレイン。1.3リットル直4 DOHC+CVTのパワートレインはフィットを転がすのには何の不足もないが、旧型が標準エンジンでもわりとシャキシャキ走ったのに比べるとややダルな感じを受ける。

エンジンがわずかに出力ダウンしていること以外は、CVTの変速比、最終減速比、タイヤ直径など、動力性能に直結する部分は同じなので、車両重量が大人1人分ほど重くなったせいかなどと想像したが、GPSを用いた0-100km/h加速の実測値は12秒は切っており、それほど鈍足なわけではなかった。アクセルペダルをちょっと踏んだ時に過剰にスロットルを開けないセッティングになっているので、感覚的に遅いように感じるのかもしれない。

このエンジンは旧型と同様、圧縮比より膨張比を大きく取るミラーサイクルで、ポート噴射式ながらピーク熱効率は37%台と結構良い。が、燃費は悪いというほどではないものの、期待値は下回った。

1.3リットル直4ミラーサイクルエンジンは普通に走るには十分な性能だが、燃費はあと1割くらい伸びてほしい。高出力の1.5リットルエンジンは搭載されなかった。1.3リットル直4ミラーサイクルエンジンは普通に走るには十分な性能だが、燃費はあと1割くらい伸びてほしい。高出力の1.5リットルエンジンは搭載されなかった。
満タン法による実測燃費値は東京東部を出発し、奥日光湯元に達してから引き返して栃木・小山まで走った288.0km区間が18.2km/リットル(給油量15.81リットル)。そこから埼玉・秩父~雁坂トンネル経由で山梨・勝沼に至った後、栃木・宇都宮まで走った349.0km区間が19.4km/リットル(給油量18.01リットル)、そこから東京までの100.4km区間が18.5km/リットル(5.42リットル)。

オンボード燃費計は実測値に対して平均で10%程度過大表示。それで油断したことも燃費を押し下げる要因ではあったが、それにしても第2区間の栃木~山梨紀行は20km/リットルは超えてほしかった。もっとも第3世代はロングランではごく普通に20km/リットル超の燃費で走れていたので、さらに乗り込んでクルマのクセがわかってきたら、もっと良い燃費で走れるようになるかもしれない。

ハイライトは居住感、スペースユーティリティ

後席は十分に広く、また着座位置を十分に高く取ることで圧迫感が小さいのが特徴。後席に人を乗せる機会の多いユーザーにとっては非常に有り難いパッケージング。後席は十分に広く、また着座位置を十分に高く取ることで圧迫感が小さいのが特徴。後席に人を乗せる機会の多いユーザーにとっては非常に有り難いパッケージング。
居住感、スペースユーティリティは第4世代のハイライトだろう。キャビンの広さは全長4mアンダーの低車高ハッチバックでは寸法限界と言えるレベルに達しているが、美点は数値的な広さばかりではない。感心させられたのはドアの開口部およびヒンジの設計だった。後席開口部は国産サブコンパクトの中では最も広く、開口部上端の高さもゆとりがある。

日本車のBセグメントハッチバックは全高がおおむね1.53m以内で設計されるので、全長と同様、寸法の余裕には限りがある。スイングドアの全開角度もここまで開くのかと感心するくらい大きい。その制限の中でドア開口部を広くしたりルーフの骨格を細くするといった、ボディ剛性にとってはネガティブに作用する要素をここまで追い込んで設計するのはすごいことで、業界の中でもパッケージングオタクぶりで知られるホンダのキャラクターが地味に表出されている部分といえる。

Aピラーを2本構造とし、クラッシュ時の衝撃を後ろのピラーで受け止めるようにしたのは第4世代フィットの特徴のひとつだが、その効果は抜群で、前方視界の開放感はちょっとしたミニバン並みだ。後席はヒップポイントが十分に高く取られており、閉所に押し込まれるような圧迫感は皆無だ。

このあたりは外観から受けるイメージそのままの特徴だが、惜しまれるのはサイドウインドウの下端のウエストラインが少し高い。商品コンセプト的にはもう少し下げたかったところであろうが、恐らく第3世代モデルのドアの内部機構を大きく設計変更するとコストがかさむため、そうしなかったのだろう。

インストゥルメンタルパネル~ダッシュボードは旧型から大変更され、面の高さが非常に低くなった。コクピット感はほとんどなく、運転席と助手席が同じような開放感であるのが特徴。インストゥルメンタルパネルは小型のカラー液晶だが、ノングレア化が徹底されており、直射日光がメーター部に差し込むようなシチュエーションでも視認性に問題はなかった。情報表示はシンプルだが、タコメーター、平均車速、燃費等、普通のドライブに必要な表示が整然とまとめられており、表示メニューもかなり豊富。そのガジェット感は悪くないと思った。

助手席側からの前席風景。グレードによって明確に異なる加飾を持つが、筆者が最も好ましく思ったのはダッシュボードの2トーン加飾を持たない最安グレードのBASICだった。助手席側からの前席風景。グレードによって明確に異なる加飾を持つが、筆者が最も好ましく思ったのはダッシュボードの2トーン加飾を持たない最安グレードのBASICだった。

これ1台ですべてをすませたいユーザーに

快適性はびっくりさせられるようなものではないが、これ1台ですべてをすませたいというユーザーの要求に応えられる水準は十分にクリアしているように感じられた。優れているのはフラットライドな点で、路面のうねりが大きいところでも揺すられ感は非常に小さかった。

シーン別で最も印象が良かったのは高速巡航や交通の流れの速いバイパス。ただし大型トラックの通行で路面がボコボコになっている国道4号線の茨城~栃木区間のような尖った入力のあるところでは、良路との落差がやや大きめに感じられた。先にも述べたが、標準の60扁平タイヤの乗り心地を試してみたいところである。

荷室はVDA方式で427リットルと、フィット史上最大の容量を手に入れている。その荷室形状だが、スクエアで物を収容しやすくデザインされている。同じホンダのSUV『ヴェゼル』がこういう形状をしており、旅行用トランクなどある程度のサイズ感があるものをぴっちり整理して積むのに非常に向いていたのだが、その美点を移植したような感じだった。

荷室は容量が大きく、形状的にも使いやすい。全長4mの低車高モデルとしては最大の収容力で、用途によっては小型ステーションワゴンの代わりもある程度務まるという感があった。荷室は容量が大きく、形状的にも使いやすい。全長4mの低車高モデルとしては最大の収容力で、用途によっては小型ステーションワゴンの代わりもある程度務まるという感があった。

LEDヘッドランプの基本性能に不満

運転支援システム「ホンダセンシング」は旧型の単眼カメラ・ミリ波レーダー併用式から単眼カメラのみの方式に変更されたが、今回乗った限りではネガティブな印象はなかった。高速クルーズ時の先行車への速度の合わせ方は自然で、混雑時の停止制御も今日のシステムの中では良好な部類に属していた。車線維持のためのステアリング介入は以前のホンダ車に比べて強めに感じられた。

もっともホンダとしてはこの単眼カメラ式を当面の決め打ちとしているわけではないようで、ほぼ同時期に出てきた軽自動車『N-WGN』はミリ波レーダーを装備していた。ホンダに限らず運転支援システムはこの方式がコストパフォーマンス的にベストというものがまだ固まっていない進化途上のものなので、当面このような模索が続くだろう。

1.3ガソリンのBASIC以外はすべてLEDヘッドランプが標準装備。ただし明るさ、照射範囲、照射ムラなどの基本性能はあまり高くなく、同社の軽自動車「N-BOX」「N-WGN」のほうが断然高性能。1.3ガソリンのBASIC以外はすべてLEDヘッドランプが標準装備。ただし明るさ、照射範囲、照射ムラなどの基本性能はあまり高くなく、同社の軽自動車「N-BOX」「N-WGN」のほうが断然高性能。
安全面でひとつだけ明確に不満があるのはLEDヘッドランプ。ハイ/ロービーム自動切換えのみで可変配光システムなどの高度な照射機能を持たないが、照射範囲が広い、照度が大きい、照射ムラが少ないといったヘッドランプの基本性能がしっかりしていれば、それはあまり気にならないものだ。フィットの場合、その基本性能がよろしくない。

これは第3世代後期にヘッドランプがLED化されたときにも感じたことだが、その部分については開発では優先されなかったようだ。普段は実害はないが、夜間に照明のない地方道を走っているとカーブを曲がるときに先が照らされないので緊張が高まる。今後の改良が望まれるところだ。

まとめ

2023年に創業100周年を迎える甲州ワインの老舗、中央葡萄酒の前で記念撮影。2023年に創業100周年を迎える甲州ワインの老舗、中央葡萄酒の前で記念撮影。
クルマという製品が世界的にコモディティ化していく今の世の中において、サブコンパクトクラスの低価格モデルをどう作るかはメーカーにとって悩ましいところだ。機能性第一主義でいくのか、カジュアルなファッション性を求めるのか、走りや乗り心地の上質感か、それともサンダル感覚で乗れるようなパーソナルモビリティ感を出していくのか…。

第4世代フィットでのドライブを通じて感じられたホンダの狙いは論評の冒頭で述べたように、これ1台で何でもこなせるバジェットカーを作り、クルマになるべくお金をかけず、そのぶん行動にお金をかけるというミニマリズムを志向するユーザーに支持されるということだった。

クルマ自体の仕様や出来は、その狙いをほぼ忠実に現実化したものだったが、販売スコアははかばかしくない。ホンダ自身が設定した月販目標1万台をクリアした月はデビュー直後の2020年3月のみで、その後はコロナ禍影響が深刻だった時期を抜けても目標に遠く及んでいない。

日本ではユーティリティ重視のベーシックカーユーザーは背の高いAセグメント・トールワゴンに移行するトレンドが顕著だが、そのトールワゴンが以前に比べて性能を上げてきているのがフィットにとっては大きなプレッシャーだ。それを強く感じたのはスズキ『ソリオ』に乗った時で、燃費、ハンドリング、安定性など、トールワゴンの弱点と言われていた部分が劇的に改善されていた。

2020年に撮影したフィット HOME 1.3のドア全開写真。後席への乗り込み性の良さはBセグメントハッチバックの中でトップ。ドア開閉角度も大きく、利便性は素晴らしいものがあった。2020年に撮影したフィット HOME 1.3のドア全開写真。後席への乗り込み性の良さはBセグメントハッチバックの中でトップ。ドア開閉角度も大きく、利便性は素晴らしいものがあった。
絶対性能で低車高ハッチバックのほうが勝っていても、その差が小さくなれば人間の乗る居住区が広いモデルに客が流れてしまう。ホンダはAセグメント・トールワゴンを持っていないので、フィットでスペース追求の顧客と低車高モデルの顧客を両取りしなければならないという点が辛いところだが、第4世代モデルの出来をみるに、売り方次第ではもっと押せるような気もした。

ガソリン版のフィットを選ぶ場合、筆者個人の感覚で一番おススメなのはシリーズ最安の「BASIC(ベーシック)」だ。スタイリングは上位モデルと大差なく、室内など、余計な加飾がないぶんスッキリしてむしろ好ましいほどだ。サスペンションは上位グレードとの差別化なし。運転支援システム、高さ調整機構つきの運転席、マニュアルだがエアコンを標準装備。それで価格は155万円なのである。これこそまさにミニマルの極致と言える。

ちょっとコージーな洒落感を加味したいなら「NESS(ネス)」も悪くはないだろう。最上位の「LUXE(リュクス)」なら、高くてもハイブリッドパワートレインが欲しくなる。

Aセグメント・トールワゴンとのバッティングをさておくと、直接のライバルはBセグメントサブコンパクトハッチバック全般。その中で居住区、荷室のスペース重視なら断然フィット。室内容積では日産『ノート』もいい線をいっているが、現行はハイブリッド専用車になったのでガソリン版フィットとは競合しないだろう。

逆に後席や荷室はエマージェンシーでいいという場合は、他にいいモデルはいろいろある。最高出力120psエンジンを搭載するトヨタ『ヤリス』のガソリン版は新鋭プラットフォームで走りと環境性能の両立で高い評価を受けており、価格も安い。同110psのマツダ『マツダ2』ガソリン版は基本設計は古いが走りの敏捷性は悪くなく、インテリアデザインも色気がある。

フィット HOME 1.3のリアビュー。空力のためにバンパーサイドをスッパリ切るデザインが主流となっている今日では珍しいくらい丸みの強いテールの造形を持っている。フィット HOME 1.3のリアビュー。空力のためにバンパーサイドをスッパリ切るデザインが主流となっている今日では珍しいくらい丸みの強いテールの造形を持っている。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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