【ホンダ S660モデューロX バージョンZ 試乗】日本が生んだ素晴らしいスポーツカーだが…渡辺陽一郎

ホンダ S660 モデューロX バージョンZ
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改めて凄いクルマだと思った

『S660モデューロX バージョンZ』を試乗して、改めて凄いクルマだと思った。軽自動車で、エンジンをボディの中央に搭載するミッドシップレイアウトでもあるから、自分の手足のように操れる。

サーキットコースの試乗では、まずS660のカタロググレードのα(アルファ)を運転した。操舵と車両の反応が、時間差なくほぼ同時に進行するから、車両との一体感もきわめて濃密だ。

ホンダ S660 モデューロX バージョンZホンダ S660 モデューロX バージョンZ
次にモデューロX バージョンZを運転すると、挙動が一層洗練されていた。操舵に忠実に反応して滑らかに内側を向き、カーブの後半でアクセルペダルを踏み増すと、α以上に旋回軌跡を拡大させにくい。さらに深く踏めるので、αが95km/hで曲がるカーブを110km/h以上で抜けられた。

またカーブの内側にある赤と白の縁石に片輪を乗せると、αでは降りた時に車両が若干跳ねて修正操舵を必要とする。そこがモデューロX バージョンZでは、修正操舵量が明らかに少ない。縁石とコースの段差にタイヤがしっかりと追従しているから、さまざまな場面で安定性を高めた。タイヤの接地性が優れているから、乗り心地も洗練されていた。

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素晴らしいスポーツカーだが、売り方は…

このようにS660は、軽自動車を用意する日本が生み出した素晴らしいスポーツカーだが、売り方では完全に失敗している。

モデューロX バージョンZが発売された時、ホンダは「2022年(来年)3月をもってS660の生産を終了」と公表した。これを知った購入希望者には「来年3月に生産終了なら、半年前になる今年の9月頃に契約すれば良いだろう」と考えた人も多かったと思う。S660は趣味のクルマだから、『アコード』や『シビック』から乗り替えるわけにはいかない。セカンドカーとして加えることになり、例えば奥様の許可を得るとか、準備も相応に必要だ。

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ところが実際には、モデューロX バージョンZが発売された2021年3月12日の時点で、S660の納期はαやβ(ベータ)が同年10月、モデューロX バージョンZはそれ以降に遅延していた。この後に生産終了の案内を受けて注文がさらに入ったから、2021年3月末には、翌年3月までの生産枠がすべて埋まった。従って販売を終了している。

これでは購入を希望したユーザーが可衰想だ。「2021年5月末日締め切り」という具合に期限を定めて受注を行い、それまでに注文したユーザーには、責任を持って生産と販売を行うべきだった。気持ち良く購入できないと、優れた商品を開発しても、顧客満足度を下げてしまう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

《渡辺陽一郎》

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