ロールスロイス初の量産EV『スペクター』、姿を現す…2030年までにブランドは全電動化

ロールスロイス・スペクター
ロールスロイス・スペクター全 7 枚

その名は『スペクター』。ロールスロイス(ロールス・ロイス・モーター・カーズ)は9月29日、市販を予定し開発中の電気自動車の概要を発表した。量産ロールスロイスとしては初のEVであり、2023年の第4四半期に市場投入される予定。ロールスロイスは2030年までにすべての製品を電動化するという。

公表された写真は開発中のテスト車両だ。2ドア・ファストバッククーペに見える。ロールスロイスのトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOによると、写真は試作車ではなく完成車だそうだ。つまりほぼ市販仕様というわけだ。「このクルマでテストし、2023年の第4四半期には顧客に最初の車両をお届けする予定だ」という。公道試験は間もなく開始される。

電気モーターの採用は、ロールスロイスにとって新しいコンセプトではない。エトヴェシュCEOは続ける。「ヘンリー・ロイス卿はあらゆるものの電化に魅了され、F. H. ロイス&カンパニーと名付けた最初の事業ではダイナモや電動クレーン用モーターを開発し、バヨネット式電球の特許を取得した」。いっぽう将来の自動車の電動化を予言していたのはチャールズ・ロールズだ。「1900年4月、彼は『コロンビア』と名付けられた電気自動車を体験し、電気駆動こそが理想であると公言していた」。

エトヴェシュCEOによるとロールズは、電気自動車について次のように述べていた。「音もなくクリーンな乗り物だ。匂いもせず、振動もない。充電ステーションが整備されればとても便利になるだろう。しかし今のところあまり役に立たない。使えるものになるまでには、何年もかかる」と。

そしてエトヴェシュCEOは「電気自動車として利用可能なテクノロジーがロールスロイスの乗車体験にふさわしいレベルにはなかった。今までは。そしてついに、ラグジュアリーの未来への道筋を変えるときが来た」と宣言した。

ロールスロイスにとって電気駆動は唯一かつ完璧な手段となる、とエトヴェシュCEO。「静かで洗練されており、ほとんど瞬時に最大トルクを発生し、その後も途方もないパワーを生み続ける。ロールスロイスではこれを『ワフタビリティ(=浮遊感)』と呼ぶ」。

ロールスロイス 103EX(2016年)ロールスロイス 103EX(2016年)ロールスロイスは近年、電動パワートレインの実験を行なってきた。2011年には走行可能なオールエレクトリック『ファントム102EX』を発表した。さらに2016年にはやはりフル電動の『103EX』を発表し、未来に向けたロールスロイスのビジョンを訴求していた。

新型車スペクターのためにロールスロイスは、同社の歴史上で最も厳しいテストプログラムを用意しているそうだ。エトヴェシュCEOは新型車のテスト予定を次のように明かす。「250万kmの走行を予定しており、この距離はロールスロイスを400年以上使用することになる値だ。世界のあらゆる場所におもむき、新型車を極限まで追い込む。世界中の道路で試験に臨むテスト車両を目にするだろう。あらゆる状況、あらゆる地形でテストが行なわれ、ロールスロイスを未来へと加速させる」 。

スペクターにはロールスロイス独自のアルミニウム・アーキテクチャーが採用される。この設計は2017年の『ファントム』で最初に採用された。設計の拡張性と柔軟性があるスペースフレーム構造で、それ以来すべてのロールスロイスを支えている。『カリナン』や『ゴースト』などの内燃機関搭載車種だけでなく、異なる種類のパワートレインを搭載したモデルにも使える。

新型車はブランドにとっての新たなレガシーの始まりということで、新たな車名の「スペクター」が与えられた。「ファントム」、「ゴースト」、「レイス」といった車名と同様に、ロールスロイスの製品が持つ幽玄で別世界のような雰囲気に因む名前だ。エトヴェシュCEOは「この車は、存在感を示したのち、ごく限られた人以外は近づけない世界に消えてゆく。英国ブランドとして英国式のつづりを選択したが、意味は世界共通だ」と、説明している。

ロールスロイスは2030年までにすべての製品を電動化する。そのときまでに、ロールスロイスは内燃機関を搭載する製品の製造・販売から撤退する計画だ。「スペクターは、チャールズ・ロールズの予言を成就させる」とエトヴェシュCEOは謳う。

《高木啓》

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