アルシオーネSVXとアリスト、名匠ジウジアーロが手掛けた2台の“奇遇”【懐かしのカーカタログ】

スバル・アルシオーネSVX
スバル・アルシオーネSVX全 12 枚

今から30年前の1991年、秋。スバル『アルシオーネSVX』とトヨタ初代『アリスト』が相次いでデビューした。外部から見ると“奇遇にも”と言うほかなかったが、どちらもG・ジウジアーロが関わった日本車。今回はこの2台を振り返ってみたい。

スバル・アルシオーネSVX

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発売は1991年(平成3年)9月18日。“4WDアヴァンギャルド”を謳い文句に85年に登場した『アルシオーネ』の後継モデルの位置づけ。“500miles a day”を掲げ、グランドツアラー本来の条件を継承しながら、90年代にあるべき理想のグランドツアラー像を追究して開発された(当時の広報資料より)クルマだった。

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いすゞの初代『ピアッツァ』のようにカタログにこそジウジアーロご本人は登場していないが、発表当時に配布された冊子には写真入りで氏のインタビューも載っていた。いっぽう広報資料には“世界的なカーデザイナー、ジョルジェット・シウジアーロ氏にもオリジナル・コンセプトに基づくデザイン・コンセプトを求めました”とある。

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もともとのアイデアは5ナンバーサイズのボディで、ヘッドランプもリトラクタブル方式だったが、このあたりはスバルのデザインチームの手によりアレンジされた部分。もっとも特徴的な“クーポラ”と呼ばれたドーム状のキャビンはジウジアーロも推したテーマで、ガラスはすべて3次元曲面ガラス、ピラーを隠した構造、ミッドフレーム(開閉するドアガラスとの境目)の位置の微調整など、機能、デザイン、生産性を突き詰めて実現された。

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エンジンは、排気量を上げた新開発の3.3リットル水平対向6気筒を搭載。6次モーメントが発生しないという特性を活かし、スムースでトルクフルな性能と自然吸気らしいリニアなアクセルレスポンスをモノにしたユニットだった。ドライブトレーンには、新開発の不等&可変トルク配分電子制御4WDのVTD-4WDシステムが投入された。

トヨタ・アリスト

トヨタ・アリストトヨタ・アリスト
『クラウン』シリーズが9代目へフルモデルチェンジした際、まったくのブランニューモデルとして日本市場に登場したのが初代の『アリスト』だった。ベースは『クラウン・マジェスタ』で、このクラウン初のモノコック構造を採用。2780mmのホイールベースを共通とした上級車で、93年からはレクサスの初代『GS』として海外の市場にでもデビューしている。

トヨタ・アリストトヨタ・アリスト
この『アリスト』のスタイリングも、G・ジウジアーロ案が採用された。登場時に筆者はデザイナーにインタビューする機会があったが、その時に意外に思ったのは、トヨタ本社案とのコンペを経て“ジウジアーロ案”が採択されたという点。本社案はマジェスタ風だったことからも、当時、トヨタがこのクラスにいかに新風を吹き込もうとしていたかがわかる。

ジウジアーロ案は、前後して発表されたショーモデルの「ジャガー・ケンジントン」の流れを汲むものだったが、そのレンダリングから、提案モデルではさらにオリジナリティを持たせたデザインに進化。トヨタのデザインチームの手により、あの塊感のあるスタイリングに仕上げられた。

トヨタ・アリストトヨタ・アリスト
いっぽうでインテリアデザインは、シンプル、オーソドックスといった表現が似合うまとめかただった。デザインはトヨタ側で開発されたもの。メーターはアナログ式で自発光式の赤い指針を用いたオプティトロンメーターを採用。淡いグリーンの内装色も採用した。

トヨタ・アリストトヨタ・アリスト
駆動方式はFR(後に4WDのi-Fourも設定)とし、サスペンションには4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションを採用、マイコンがショックアブソーバーの減衰力を最適制御するピエゾTEMSも設定した。エンジンは直列6気筒の3リットル、2JZ系で、280ps(ネット)/44.0kg−mを発揮するトヨタ初だったセラミックツーウェイツインターボと自然吸気が用意された。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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