ホンダは11月24日、栃木県さくら市の同社施設で安全に関する取材会を開き、AI(人工知能)がドライバー個々に対応して運転ミスの軽減などにつなげる「知能化運転支援技術」を公開した。世界でも初めての技術としている。
ホンダは、千葉市にある量子科学技術研究開発機構(QST)などと共同で、fMRI(磁器共鳴機能画像法)装置を使い、運転時における脳活動の研究を進めている。知能化運転支援技術は、この研究で得た脳の活動とリスク行動の解析などを基にした「規範運転モデル」をAIにラーニングさせ、個々のドライバーの運転リスクの検出や回避誘導ができるようにするものだ。
車両とその周囲の状況は、車載センサーで検知し、ドライバーの運転状況などは車室内のカメラで見守る。AIがリスクを検出した際は、計器類の上部に設置する発光装置の「リスクインジケーター」をはじめ、シートベルトの巻き込み制御、シート上部の左右に配置した立体音響装置を、リスクに応じて使い分けながらドライバーに知らせる。
fMRIによる運転シミュレーターでの脳行動の計測運転がふらついている状態ではステアリングの操作アシスト、ブレーキ操作が遅れそうな時は、その操作アシストなども行う。一連のリスク伝達や操作アシストは、個々のドラーバーのスキルや運転状態をAIが認識したうえで、作動するようにしている。さらに、ドライバーの眠気や疲労を検知した際には、シートの背中部分を振動させて刺激する「バイオフィードバック」も装備する。これらの機能は、開発中の試作モデルの運転で筆者も体感できた。
本田技術研究所の先進技術研究所で安全安心・人研究ドメインを担当する高石秀明(高ははしご高)エグゼクティブチーフエンジニアは、この技術開発の背景について「人の運転行動が、脳の研究でしっかりと捉えられることができ、解明できると確信がもてるようになった」と指摘した。
ホンダ 知能化運転支援技術の試作モデルまた、一人ひとりのドラーバーに対応することで「人とクルマがお互いを知り尽くしているような一体感をもつことができる技術」とも語った。2020年代の前半に要素技術を確立したうえで、20年代後半の実用化を図る構えだ。ホンダは、2050年に同社の二輪車と四輪車が関与する交通事故の死者をゼロにする目標を掲げており、こうした新技術群の開発加速で実現にアプローチしていく。