世界で最も有名なカスタムカーショーといえば、毎年ラスベガスで開催される「SEMA SHOW」に違いないだろう。厳選されたカスタムカーしか展示することができない、まさに世界一のカスタムカーを決める祭典である。
そしてそのSEMAで近年注目を集める日本のエアロパーツメーカーがある。それこそが国内から世界に名を轟かせた『ARTISAN SPIRITS』である。今年はレクサスUSAを筆頭にTOYO TIRES(トーヨータイヤ)やTURN14ブースに車両を展示。独自の世界観で、スタイリッシュかつ洗練されたARTISAN SPIRITSを堪能せよ---。

はじめにARTISAN SPIRITSとレクサスの関係を少しおさらいする。ARTISAN SPIRITSがDUBブースにて初出展したのが2009年のSEMAだ。当時『SC430』を皮切りに出展を続け、そして大きく飛躍したのが2014年SEMA。レクサス USAブースにて『NX』のカスタマイズプロジェクトに同社が参画。そこでエクステリアの開発などをメインで請け負う形となり、世界中のファンに衝撃を起こしたのがこの『ARTISAN SPIRITS BLACK LABEL LEXUS LC 500』だ。
その後も現地代理店であるEVASIVE MOTOR SPORTS制作による、テスラ『モデル3』のワイドボディキットやトヨタ『86(ZN6)』のワイドボディキットでパイクスピークインターナショナルヒルクライム)に参戦。2020年の86ではアンリミテッドクラスで優勝を納めたことで一躍名を馳せた。日本のリバティーウォークやTRA京都などの世界進出契機となったたのがこのSEMAであり、ARTISAN SPIRITSもこれに続いている。
IS350GTがアンベール、ISのマッシブさを引き立てる流麗なワイドボディキットがお披露目

そして2021年のSEMAではワールドプレミアを飾る形でレクサスUSAブースへと展示。アンベールの模様が全世界へとオンライン配信された。その名も『LEXUS IS350GT tuned by DSPORT MAGAZINE』だ。今回は開発担当として、BMWでデイトナ/ル・マン24時間レースでも優勝経験のあるレーシングドライバーのスコット・プルーエット氏が参画。スコット氏はLEXUS RACINGを立ち上げて、RC-F, GS-Fの開発にも関わり、レクサスのアンバサダーも務めている。加えて、ブルーとオレンジのボディカラーもスコット氏のヘルメットアートをイメージして制作された特別な仕様だ。

エクステリアの特徴は、存在を車格以上に大きく強調するワイドボディキット。エッジの際立つスタイリングは欧州スポーツカーのような雰囲気を醸し出している。特にリアのワイドフェンダーはブリスター形状となっており、後ろから見たときにただならぬ存在感を感じさせる。

フロントアンダースポイラー・サイドアンダースポイラー・リアディフューザー・リアスポイラーは美しい織り目のカーボン製で、リアディフューザーの下回りにはカラードのアンダーパネルが華を添える。ARTISAN SPIRITS得意のフィン状の立ち上がりが美しいデザインだ。

そして足元にはアドバンレーシング製の「GT ビヨンド」、エキゾーストはA'PEX製のステンレスマフラーが装着され、一層レーシーなイメージを強めている。現状機関系はノーマルだが、来年に向けてエンジン換装が予定されている。ベースモデル比較で約2倍の700馬力オーバーを目標にチューニングされるとのことで、今後の展開が非常楽しみな1台。
LC500がバルケッタに生まれ変わった?! LC500 コンバーチブル 究極の理想形が誕生

続いてTOYO TIRES(トーヨータイヤ)ブースに展示されていたのは、レクサス『LC500 コンバーチブル』をベースにカスタムされた、『LEXUS LC500 RACER tuned by Evasive motor sports and produced by Gordon ting (LEXUSTUNED)』。

最注目ポイントは、シートバックにそびえ立つ美しい造形のスパイダールーフ(一部カーボン仕上げ)。スタイリングを優先して流麗な形状に拘って造られている。LC500がまるでミッドシップレイアウトのスーパーカーと錯覚させるようなオーラを纏っており、サイドビューも至って自然なラインを描いている。まるで元来バルケッタであったかのようなアピアランスだ。

IS350GT同様に、各部フィンの際立つ美しいフラップ形状のエアロパーツを装着。カーボン製のフロントアンダースポイラー・サイドアンダースポイラー・リアディフューザー、そしてリアにはスタイリングの肝となるダックテールを追加。またオーバーフェンダーキットの装着によって、よりワイドなホイールマッチングも可能にする。今回足元に組合せたのは、21インチのTitan7製T-R10 FORGED 10 SPOKE WHEELで全体のスタイリングをキュッと引き締める。

加えて、ボンネットもオリジナル形状となっており、センターへの落ち込みと美しいカーボン地の織り目がスタイリングを引き立てる。極めつけは左右4本出しのチタン製エキゾースト「FULL TITANIUM EXHAUST SYSTEM」で、エキゾーストチップには綺麗な焼き入れが入る。そこに“ARTISAN SPIRITS”のレーザーマシニングが入ることで、一層所有欲を満たしてくれる1台となった。
北米ではすでに定番のテスラ モデル3、パイクスピーク参戦のレーシングマシンとストリートスタイルの2台が展示

最後に紹介するのは全く正反対のコンセプトで仕上げられているテスラ『モデル3』。日本でも注目度の高まってきたテスラだが、北米では既にチューニングベースの車両として親しまれている。ARTISAN SPIRITSでは既にワイドボディキットをリリースしており、今回TURN14ブースに展示されたのが『TESLA MODEL3 PIKES PEAK tuned by Evasive motor sports』だ。 2021年のパイクスピークに参戦したこのモデル3、アメリカのフォーミュラDを制した吉原大二郎選手のドライブでEVASIVE MOTOR SPORTS制作の同マシンで参戦した。同タッグは86に続いて2年連続の挑戦となり、決勝はトラブルに見舞われたが見事に予選では2位の成績を収めている。

レーシングマシンらしく大型のリアスポイラーとリアディフューザー・フロントスプリッターが目を引くが、ワイドフェンダーキットとフロントアンダースポイラー・サイドアンダースポイラーは市販品そのもの。ドレスアップ要素だけでなく、モータースポーツでも活躍できる機能と強度が持たせられている。

また、TOYO TIRESブースには『TESLA MODEL3 EVS produced by Daniel K Song support by Evasive motor sports』を展示。パイクスピーク仕様同様にフロント・サイド・リアのアンダースポイラーが装着され、VOLTEX製のリアウイングとともにリアビューの精悍さを引き立てている。

モデル3のボディキットの特徴は、やはり大きく張り出したワイドフェンダー。フロントにはホイールアーチ上部にルーバーが設けられており、リアも後ろから空気が抜けるようにスリットを追加。レーシーな雰囲気だけでなく、きっちりと機能部品としてのボディパーツであることがわかるだろう。
“アクティビティ&デザイン”を具現化する、ARTISAN SPIRTISのデザインコンセプト

こうしたスタイリッシュでエモーショナルなボディキットづくりには、「アクティビティ&デザイン」というブランドコンセプトから生み出されている。同社代表の公文純次氏によると、「クルマ本来の持つ基本性能を妨げることのない機能性、そして静止した状態からでも走る姿をイメージできその存在感を語り出すようなデザイン性。相反する要素をグローバルな視野から見つめ、高い技術力で融合させている―」という言葉どおり、ノーマル車両のスタイリングを、格上以上のモデルへと昇華させるのがARTISAN SPIRITSならではの“個性”だ。

特に静止状態でも走っている様子がイメージできる躍動感、そしてワイド&ローで疾走感のあるフォルムは、アフターブランドの枠に収まらず、もはやコンプリートカーメーカーと言っても相違ないだろう。まさに“機能美”という言葉がふさわしく、パーツ1点1点のクオリティも拘って制作されていることが手にとるように伝わってくる。いまや世界中のファンを魅了しているARTISAN SPIRITSのボディキット。今後もますます目が離せないこと間違いないだろう。
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