「軽はスマホ」クリエイティブディレクター佐藤可士和…ホンダNシリーズ10周年トーク

Nシリーズ10周年記念イベント
Nシリーズ10周年記念イベント全 13 枚

ホンダ(本田技研工業)の軽自動車「N」シリーズが発売10周年を迎えた。「N」シリーズのブランディングを統括する佐藤可士和さんが、クリエイティブディレクターの視点で、ブランドの過去10年の変遷や未来像を語った。

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ホンダは「N」シリーズの発売10周年を記念し、12月16日に東京のホンダ青山ビルで『Nシリーズ10周年記念イベント』を開催した。佐藤さんに加えてCRAZY WEDDING創業者の山川咲さん、本田技術研究所CMFデザイナーの渋谷恭子さんが、日本人のライフスタイルの変化、これからの時代の豊かさなどをテーマにトークセッションを行なった。

---:「N」シリーズは、“New Next Nippon Norimono”をメッセージに、「日本にベストな新しいのりものを創造したい」という思いを込め、2011年発売の第1世代『N-BOX』からスタートしたホンダの軽自動車シリーズだ。佐藤さんはNシリーズの誕生からブランディング、ネーミングを監修している。

佐藤:ホンダは軽自動車で3位のメーカー。軽自動車は今後の自動車市場の主力車種(カテゴリー)になるだろうと予想し、テコ入れすることにした。まずネーミング。従来は個別の車名で訴求していたが、軽自動車シリーズとしてブランディングするといいと考え、「N」を提案した。

「N」はホンダにとって特別な記号だ。初めての軽乗用車が「N」だった。本田宗一郎が「Norimono(乗り物)のN」ということで使ったという。ホンダの中で“永久欠番”のような扱いだった。「N使っちゃうの?」と驚く声もあったが、「N」を使ってリブランディングすることにした。

渋谷:開発チームも熱意があり、その熱意がCMに乗っていたので印象的だった。

山川:テレビを見ない家庭だったが、CMは印象に残っている。

---:2017年9月発売のN-BOXから始まった第2世代では、“N for Life”を新たなメッセージとした。「さらに人に寄り添い、乗り物の枠を超えて、日本の毎日や乗る人の生き方を楽しく豊かに変えたい」という思いから、使い勝手の進化だけでなく、多様化する価値観やライフスタイルに適応することをめざし、商品性、バリエーションともに進化を重ねてきた。

佐藤:Nシリーズはチャレンジャーとして出発した。それが成長して、今度はカテゴリーのリーダーとして何か提案しなければならない。ホンダは「いい車ではなくいい暮らし」を提供する企業だ、と。

渋谷:「物」を作るより「暮らし」を作る。車があるシーンを想定して、ユーザーにどんな気持ちになって欲しいかを考えてデザインしている。

---:この10年の日本人のライフスタイルの変化、車の在り方の変化について。

佐藤:昔は「みんな同じ」、「みんなが同じ物を持っている」ことがよかった。今は製品がパーソナライズして、車もスマホと同じようなパーソナルツールになった。軽のキャンピングカーなんか当時はなかった。自動車がスマホのようなツールになるとは予想していなかった。ブランディングは狙った通り当たったといえるが、販売台数は追っていなかった。軽自動車が10年間で一番売れた車になる、そんなに売れるとは予想しなかった。軽自動車が時代の中心になったということ。

山川:「車は相棒」とは昔から言われていたけど、「車好きのお兄さん」がそう言っていたイメージ。今は誰のパートナーにもなれる。

渋谷:パートナーになれる車作りをしたい。車で自分を表現して輝けるようにしたい。

佐藤:車が相棒というと特別なことだった。カメラや写真も同じで、今はスマホで日常的に膨大な枚数を撮る。インターネットが発達してリモートワークをしているように、車は家の部屋の拡張、居場所の拡張となった。

---:これからの10年、これからの時代の豊かさとは?

渋谷:日本人だけを見て開発してきた車が軽自動車。車作りでそこはブレずに行きたい。

佐藤:10年前から時代はかなり変わった。変わらないものもある。この先も、例えば「N」のロゴタイプは今後の10年も通用すると思っている。変わることと変わらないことのバランスが大事だ。これからの10年でNがどうなるか楽しみ。ライフスタイルは多様化した。ただ、多様性という価値観がまだ浸透していないからこそ、そう言われる。10年後はこれが浸透しているだろう。ホンダはそういう人たちみんなに製品を提供してほしい。

「N」シリーズ……現在はN-BOXのほか『N-ONE』、『N-WGN』、『N-VAN』と、ユーザーのライフスタイルやニーズに合わせたバリエーションを用意し、2021年6月末にはシリーズ累計販売台数が300万台を突破した。ホンダによると、センタータンクレイアウトを活かした効率の良い室内空間、全モデルに標準装備とした安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」、燃費・走行性能などが好評だという。

《高木啓》

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