【VW ゴルフGTI&TDI 新型】本国よりも安い価格設定の理由…商品企画[インタビュー]

フォルクスワーゲングループジャパン営業本部商品企画課アシスタントプロダクトマネージャーの山谷浩之氏
フォルクスワーゲングループジャパン営業本部商品企画課アシスタントプロダクトマネージャーの山谷浩之氏全 10 枚

フォルクスワーゲングループジャパンは8代目『ゴルフ』にスポーツモデルの「GTI」とディーゼルエンジンを搭載した「TDI」を1月7日より発売すると発表。両車のポイントなどについて商品企画担当に話を聞いた。

◆ゴルフラインナップの2本の柱

----:初めに伺いたいのは先代のゴルフ7では、GTIとTDIの割合はどのくらいだったのかということです。

フォルクスワーゲングループジャパン営業本部商品企画課アシスタントプロダクトマネージャーの山谷浩之氏(以下敬称略):明確な数字はいま手元にはないのでざっくりとですが、TDIは2019年の導入で、2020年で生産は終わりましたので販売期間は短かったんですがその期間では約30%ぐらいでした。ゴルフレンジの中、つまり「トレンドライン」から「R」まで含んでの30%は、なかなか大きいポジションを締めていたわけです。

一方のGTIについても10%前後でしたからこれも大きな割合です。GTIは固定のお客様が多いことや、昔からのファンだった方々、そしてスポーティな走りと街中で上手く使えるというところがかなりの高評価をいただいておりました。

----:ユーザーはそれぞれどのような方達ですか。

山谷:デモグラフィックや年齢で(ほかのゴルフシリーズと比較し)大きな差はありませんが、どういう使い方が多いかというところで選んで頂いているようです。通常のゴルフ、「TSI」では、普段の通勤や街中での買い物が主という方が多く、TDIを選ぶ方は、大きな荷物積んだり、長距離移動が多かったり、週末ちょっと高速を使って出かける方などで、ランニングコストや燃料代を鑑みての判断でしょう。そしてGTIはサイコグラフィック的に変わってきて、スポーティな走りを楽しみたいという人が圧倒的に多いのです。ただしゴルフRでは家族を乗せるとか、普段使いを考えるとちょっとtoo muchだなと。そこでちょうどいいところにいるのがこのGTIという感じで選んでいただいているという声を聞いています。

----:新型でもそういったところは踏襲してというイメージですか。

山谷:そうです。我々の考えとしては大きくは変わってはいません。eTSIとTDIでキャラクターもかなり明確に分かれていますので、お客様の使い方によって悩まずに選べるかなと思っています。

◆価格をなんとかしなければ!

----:このGTIとTDIに関して日本側から本国に対して何か要望はありましたか。

山谷:機構であるとかそういったところでの要望は特にはしていません。基本的には本国のコンセプトをそのまま日本に導入しています。そこで我々がこだわった部分としては価格と装備です。ゴルフはeTSIもそうですが、デジタル化と運転支援システムの強化、電動化の3つのポイントがあります。このGTIとTDIについても、基本的には安全装備とはどのグレードでも標準で装備させたい。ゴルフを買ってくださるお客様はどなたも後悔しないクルマにしたかったのです。ですからその点で本国と価格と装備で戦ったのは大きかったですね。

価格の面では、フォルクスワーゲンは難しいポジションにいます。日本のマーケットはすごく特殊でトヨタや日産、ホンダなど強烈なプレイヤーがいますし、我々より上にはメルセデスやBMWなどが強く大きな市場を形成しています。ではフォルクスワーゲンはどこにいるべきなのかは難しいところで、それら2大マーケットの間にいることが望ましいところではあります。

しかし昨今の日本の経済成長と、世界の経済成長とでかなり開きが出てきており、欧州、ヨーロッパでのインフレーションの率と日本のインフレーションの率とは全然動きが違います。そこでヨーロッパマーケットの中でのメルセデスと我々の立ち位置は変わってないとしても、日本のマーケットではどんどん国産メーカーから離れていっているのが現状なのです。そこは販売店もお客様も敏感になっているところですので、この価格というところはかなりこだわりました。

----:それは国産車のポジションとフォルクスワーゲンとの価格差が開いてきているということでしょうか。

山谷:そういうことです。確かに日本車の価格も上がっては来ていますが、それ以上に輸入車のほうが上がっている動きがあるのです。本来我々は国産のマーケットから付かず離れずの距離にいるべきだと考えていますが、その差が大きくなってしまっているのが現状です。つまり本国のインフレーション率を適用したまま日本に持ってきてしまうと、お客様は見向きもしてくれない価格になってしまうわけです。ですからそこをずっと戦った結果として、本国でゴルフを買うよりも日本で買った方が安い価格設定になりました。ここが一番骨が折れたところです。

ただし先代ゴルフと比べると、やはりいろいろな技術が追加されているぶん値上がりはしてしまっていますので、まだ高くなったと思われている方もいると思うのですが、ほかのクルマも値上がりはしていますし、新型ゴルフの装備などを色々見ていただくと、お手頃であるということはお分かりいただけると思います。

◆どこにお金をかけて開発するか

----:少しだけ気になったのは、質感の部分です。これはゴルフ共通として感じたのですが、非常に低くなっている部分も見受けられます。

山谷:質感についてはご指摘をいくつかいただいております。本国の開発担当とそういったことを話すことがあったのですが、無尽蔵にお金をかけられるのであればいくらでも出来ます。ただしお客様のお財布事情は限られていますので、そうであればどこに一番お金をかけるべきか。それはお客様が一番ベネフィットを感じるところです。

例えばボンネットダンパーですが、今回は廃止しました。ボンネットを開けた方は残念と思われるでしょうが、現在クルマの故障率はかなり下がっていますので、ボンネットを開ける機会はかなり少ないと考えています。それであれば、このダンパーを外したコストを、デジタル化やオンライン化などにお金をかけるべきだという判断で、それが一番お客様のベネフィットになるであろうと考えたのです。これは一例で、そのほかにも色々その判断をした結果、48Vのマイルドハイブリッド化も出来ました。今回はそういったところに集中投下して作ったクルマなのです。年次改良などでうまく直していけたらな、と期待を込めています。

----:GTIとTDIそれぞれのアピールポイントを教えてください。

山谷TDIは過去最高のTDIエンジンです。もちろんクリーン面での環境負荷削減も出来ていますし、乗っていて環境に良いことをしているなという気持ちにもなれるでしょう。このようにお勧めのエンジンです。購入をお考えの方ではeTSIとTDIで悩むと思いますが、乗ってもらえればキャラクターの違いは感じていただけるでしょうから、そこで評価をしてもらえればと思っています。

VW ゴルフTDIVW ゴルフTDI

一方のGTIはかなりキャラクターが強く出ているので明確にスポーツカーとして楽しめるクルマの1台に仕上がっています。クルマを運転することが楽しい、あるいは昔運転することを楽しんでいましたが、またもう一度楽しみたいと思っている方にはぜひ検討してもらいたいクルマです。

VW ゴルフGTIVW ゴルフGTI

広報:GTIはスポーツカーではありますが、それだけではなく街乗りにも使え、そこでも運転が上手くなったように思うくらいの仕上がりです。そのうえで安全装備も充実していますので運転に自信のない人でも楽しく乗れるでしょう。

山谷:GTIはデジタル化などもあり、クルマが必要に応じてコントロールしてくれますので、思い通りに操れ、運転が上手くなったようになりますし、かなりハイパフォーマンス面で技術の塊のようなクルマでもあります。この性能を思い通りに操ることが出来る気持ち良さがありますので、そこはぜひ体感してもらいたいですね。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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