【ダイハツ ハイゼットカーゴ&アトレー 新型】乗り味改善で気持ち良く使って頂く…開発責任者[インタビュー]

ダイハツ技術統括本部成否企画部E・C・E(エグゼクティブチーフエンジニア)の松本隆之氏
ダイハツ技術統括本部成否企画部E・C・E(エグゼクティブチーフエンジニア)の松本隆之氏全 27 枚

ダイハツは軽商用車の『ハイゼットカーゴ』と『アトレー』をフルモデルチェンジ。そして『ハイゼットトラック』の商品改良を行った。そこで開発責任者にその目的やこだわりなどの話を聞いた。

◆元シャシー設計者としての知見を活かして

----:17年ぶりにハイゼットカーゴとアトレーがフルモデルチェンジしました。その担当が決まった時にどう思われましたか。

ダイハツ技術統括本部成否企画部E・C・E(エグゼクティブチーフエンジニア)の松本隆之氏(以下敬称略):これだけの大きなボリューム(台数やバリエーション)の仕事は、非常に苦しいなと思いました。会社の中でもお前1人でできるかっていわれましたし(笑)。

----:因みに松本さんは、これまではどんなクルマをやってこられたのでしょう。

松本:ハイゼットの前は『ブーン』『パッソ』をやってました。ハイゼットは屋台骨ですから、こちらの方が重いですよね。

ダイハツ・ハイゼットカーゴダイハツ・ハイゼットカーゴ

----:ご担当が決まったと時に、新型ハイゼットをどんなクルマにしようと考えましたか。

松本:例えばキャンプ用品などの展示イベントなどに行くと、出展しているクルマが他社しかいないんですね。それはなぜかなと思って聞くと、カーゴの割にはあまり荷物を積めそうに見えないので、そういうところで購買意欲が変わるのかなと感じていました。そこで商品企画のメンバーに情報を求め、また話を聞くと、やはりそういうところもあると。そこでとにかくカーゴとしてはたくさん積めるようにならないと、商品として他社には勝てないわけです。今回やらないといけないことはそういうところ。デザインもそこからやり始めないといけませんでした。つまり前後から見て台形で上方を絞り込んだ形ではなく、四角い形が重要なのです。

もうひとつ、私はもともとシャシー設計の出身なのです。その視点で、旧型のハイゼットの乗り味には非常に不満がありました。例えば高速を走っても真っ直ぐに走らないし、ハンドルを切っても思うように動いてくれないなど、仕事で使って頂いてる割には出来上がりがもうひとつかなという印象があったのです。真っ直ぐに走らなければ常に修正舵が必要になってしまいます。1日中その状態で運転していたら肩が凝って仕方がないですよね。そこで、もとシャシー設計者らしいところをここは見せどころだな、面白いように自分でやれるなと、そこは結構こだわってやりました。使われる方が気持ち良く使っていただくためには、そういうところも直していかなければいけない大切な乗り味だと考えたのです。

ダイハツ・ハイゼットカーゴダイハツ・ハイゼットカーゴ

----:街中重視で、そこのみで考えているのかと思いました。

松本:街中だけでは完成度は上がって来ませんので、高速域ぐらいに車速を上げたところでのクルマの動きを見極めないと。中・低速ばっかりで見ててもクルマは仕上がっては来ないのです。

----:乗用車の作り方と一緒ですね。

松本:そこはやはり一緒です。ただ味付けというところ、例えば乗用車だと少しハンドル操作も手応えがあって、ちょっと重い方が良いなど好みのところがありますが、商用車の場合ですと、1日中重たいハンドルを回していただくのかといったらそうではなく、使い勝手という面は、やはり軽くてハンドルの戻りも自然が良いんです。そういうところが商用車としての使い勝手のよさ、味付けの仕方になってきますので、そのあたりは乗用車とは違うところを狙わないといけません。

ダイハツ・ハイゼットトラックダイハツ・ハイゼットトラック

◆トラックのプラットフォームを刷新しなかったわけ

----:今回、ハイゼットカーゴとアトレーは新プラットフォーム、DNGAを採用しましたが、ハイゼットトラックに関しては変更されませんでしたね。

松本:トラックの方でプラットフォームを変更しなかった理由は、長年積み上げてきた技術、商品としての良さを崩したくなかったので、あえて手を入れる必要はないと判断しました。ほぼいまの状態がプラットフォームとしては完成形じゃないかなと思っていますので、そのまま継続して、そこにCVTを搭載。あとはお客様に喜ばれる安全・安心、それから使い勝手や快適装備を充実していけば、トラックとしての役目は随分上がるんじゃないか。そういうところがトラックの今回の作り方です。

----:トラックのプラットフォームの良さは具体的にいうと、どういうところですか。

松本:壊れない、錆びないといった耐久性。やはりトラックのユーザーのお客様はそういうところですね。

----:そのあたりはカーゴなども共通だと思うのですが、DNGAにすることによって相当アップしているのでしょうか。

ダイハツ・アトレーダイハツ・アトレー

松本:特にカーゴでさらに耐久性を上げてほしいという要求、要望はあまりありませんでした。今回は17年ぶりのフルモデルチェンジですから、プラットフォームを一新するぞということで、新しい技術に置き換えようというイメージです。例えばシェルボディの作り方も、高張力鋼板を使って骨格の中のリインフォースの数を減らすとか、そういう新しい技がたくさんありますので、そこに置き換えようとしたのです。そうすると軽量化できますので、その軽くなったところを安全装備を搭載したり、たくさん荷物を積めるように車体を大きくするといったところに使おうという考え方です。

----:今回カラーにもこだわりだと聞いています。

松本:アトレーでいうとよりレジャー志向になったところがありますので、そこに似合った色も設定しないといけませんでした。また、トラックでは、今までもたくさんの色でカラフルに見ていただけているので、そこは崩してはいけません。減らせといわれてもいやダメだと。またトラックでは今回、アイスグリーンを新色として採用しましたが、これは結構似合っていて良かったのかなと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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