未来の宅配サービスを実感? 自動走行ロボットが料理を届ける…東京西新宿で実証実験

未来の宅配サービスを実感? 自動走行ロボットが料理を届ける…東京西新宿で実証実験
未来の宅配サービスを実感? 自動走行ロボットが料理を届ける…東京西新宿で実証実験全 14 枚

ティアフォーは2月9日、『5Gを活用した公道での自動配送ロボット走行に関する実証実験(東京西新宿エリア)』のオンライン説明会を開催した。

まずはティアフォー取締役COOの田中大輔氏が登壇し、今回の実験についての概要説明を行った。「弊社は自動配送ロボットとの分野でこれまでいろいろな活動をしてきた。ロボット分野において自動運転システムのリファレンスデザイン、そしてロボットを運行するための各種ツール、そして安全にロボットを運営するための各種トレーニングなどをひとつのパッケージにまとめて、自治体や企業の皆様に提供してきた。ティアフォーは、『Intelligent vehicles for everyone』というビジョンのもと、誰しもが自動運転、自動配送のメリットを享受できるような仕組み、仕掛けというものを提供していきたいという理念のもとで活動してきた。今回はその活動をさらに加速するために、政府や国の機関とも連携し、各種のセンサーやコンピューターなどを提供する各社様ともいろいろ協議をし、みんなの力を結集して、自動配送ロボットの実証実験を実施した」と実証実験の背景について述べた。

◆多くの企業の協力によって実証実験が行われている

続いて今までの開発の歩みも説明され、今回の実験は5回目にあたる。1回目は、岡山県玉野市、2回目は茨城県筑西市、3回目は福島県会津若松市、4回目は東京都墨田区と江東区で行われた。これまで4回の実験のノウハウや知見、さらに学びというものを今回実験が行われる西新宿エリアの自動配送ロボットにすべて刷り込んで、よりサービスに近い形を模索するために新しいチャレンジを行った。

今回の実験は東京都の事業の枠組みの中で行われており、西新宿をより魅力ある街にしていこうという取り組みのもと、『ヒトが移動する街からモノが移動するスマートシティへ』というテーマで配送ロボットの自動化に向けた実験が行われた。プロジェクトの統括はティアフォーが行ない、同時に自動運転システム、遠隔監視システム、運行管理システムといった運用を司るようなアプリケーションも提供。自動配送ロボットの開発・提供は、川崎重工業が担当し、5G/4GLTE 通信ネットワークの構築・提供などはKDDIが担当した。そのほかにも、安心安全な運行を実現するために、損害保険ジャパンが持つノウハウが提供されている。

実証フィールドは、新宿中央公園、ハイアット リージェンシー東京のエリアを使用し、小田急電鉄、一般財団法人 公園財団、ハイアットリージェンシー東京には、各種調整などの協力を仰いだ。今回の実証実験は、ユースケース検証、技術検証、サービス検証の大きく分けて3つの検証を行った。ユースケース検証では、配送ロボットでハイアットリージェンシー東京の飲食物を利用者に提供するという実験を行い、実際に利用者の声をフィードバックした。

技術検証は5Gの活用、高精度な測位技術の実験を行ない、本当にこれらの技術が使えるものかを見極めた。そしてサービス検証は、遠隔監視や見守りを行ないながら、どのように安全な運用ができるかを判断した。これらの検証を行うことで、ロボットの有効性や利便性を活用できるように今後につなげていきたいとのこと。走行する配送ロボットについては、最初は監視者とロボットを有線(紐)で接続し、一定距離を離れたら自動停止する仕様となっていた。今回の実証実験では、遠隔監視・操作型となり、自動的にロボットを走行させることだけではなく、どのようなビジネスモデル、サービスモデルが構築できるのかを各関連会社とも考え実験を行った。

7社におよぶ企業や団体が手を組んでいる。7社におよぶ企業や団体が手を組んでいる。

◆配送ロボットにはモーターサイクルの技術を投入

次に使用された配送ロボットについて、川崎重工業社長直轄プロジェクト本部近未来モビリティ総括部システム開発部の矢木誠一郎部長が解説した。最初に矢木氏は、本実証実験の参加により労働人口減少や物流クライシスといった、物流分野の社会課題の解決や、無人化遠隔化された新しい輸送モードの提供を行い将来的には低炭素社会の実現にも貢献したいといった、川崎重工業全体の思いもあると述べた。今回の実証実験に用いた移動配送ロボットについては、モーターサイクルやオフロード四輪車両の技術を活用され、小型かつ軽量で、高い走破性と広い荷室スペースがコンセプトとなっているとのこと。遠隔監視に必要となる機体周囲へのカメラの搭載、5G通信への対応、公道走行に対応するためのウインカーやテールランプ等の各種保安機器の装備、またナンバープレートも取得されている。

配送ロボットは4輪で高い走破性もうりのひとつ。配送ロボットは4輪で高い走破性もうりのひとつ。

◆配送ロボットには表情がある!?

次にユースケース検証の説明には、小田急電鉄まちづくり事業本部 新宿プロジェクト推進部の中江徹プロジェクトマネジャーが登壇。まずは小田急電鉄の立場を説明した。「小田急電鉄は、新宿中央公園の指定管理者に選定されており、東京都や新宿西口地区の企業団体が加盟する西新宿スマートシティ協議会において地域の魅力創出のプロジェクトリーダーになっているという背景がある。自動配送やラストワンマイルの実証実験は、地域において新たな場所や時間の使い方を提案するものでありふたつの立場から未来の新宿中央公園やまちの魅力創出につながると考えている」と語った。

2022年1月22日に行われたユースケースは、西新宿にキャンパスがある工学院大学に協力してもらったとのこと。工学院大学の新成人を新宿中央公園の眺望の杜の会場へ招き、ハイアットリージェンシー東京から眺望の杜の会場まで、自動走行ロボットが成人のお祝いの料理を届けるというストーリーで行われた。当日は残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大の状況もあり、会場での飲食は行わずテイクアウトとなったが、スマートシティ化が進む西新宿で、未来を担う新成人に対して未来のライフスタイルを体感してもらうよい機会となったようだ。

今回の実証実験を通して中江氏は、「今回の配送ロボットの機体には表情が表示されるパネルが搭載されていた。この表情が非常に可愛らしいもので、公園で遊ぶ子供たちにも受け入れられたりしているのを見ると、こういったこともロボットを認知してもらう大切な工夫なのかなと感じた。動作についても歩行者がいないところはスピーディで、歩行者を検出するときっちり止まるといった、性能面が思っていた以上にしっかりした動作で驚いた」と感想を述べる。

「こういった自動配送ロボットが増えれば、宅配なども気軽にできるようになり、その結果物流も活発になっていくことで、ロボットのある未来を身近に感じられるようになるのではないかと思った。今回の実験で、災害時の配送や支援の時の活用の可能性を感じたという感想もいただいたことで、我々としても自動配送そして非接触というものがひとつのキーワードになると感じた」

子供たちにも好評だったロボットの表情。子供たちにも好評だったロボットの表情。

◆5GとPPP-RTK方式による通信でロボットの性能が大きく向上

技術検証については、KDDI事業創造本部次世代基盤整備室の泉川晴紀室長が登壇した。泉川氏は自動配送ロボットについて、「高齢化や少子化、労働者不足への対策として、交通や農業、建設や土木などさまざまな領域において、活用されるものだと考えている。安心安全に社会実装をしていくためには、遠隔により人が管理をして、また必要に応じて遠隔から操作するという運用が必須だ。」と語った。

今回実証した自動配送ロボットについては、「自動配送ロボットに使用された5Gによる通信は、高速で大容量のデータを扱えるため、高画質な映像伝送ができ、遠隔での監視を容易にしている。また5Gの低遅延な通信によって緊急時における遠隔からの操作もスムーズに実施することができる」と、まず5G通信について解説。

そして位置情報について「自動化した機械やロボットの安全な運行管理には、ロボット自身の絶対的な位置、つまり自己位置といったものを高精度で推定するということが欠かせない。今回のロボットには、移動に強くてサービスエリアが広いという特徴を持つPPP-RTK方式の高精度位置測位受信機を実装したことで、移動環境下においても安定して高精度な自己位置推定というものが可能になっている。広場などにおいてはとくに相対的な位置だけではなく、絶対的な位置というものが非常に重要になるが、今回のPPP-RTK方式というような技術を用いることで安定した自動運転へ寄与できるということがわかった。KDDIの5G通信や、高精度位置測位などの先端技術を提供して、パーソナルモビリティだけでなくドローンなども含め、安心安全な次世代モビリティの社会実装に貢献していきたい」と説明した。

配送ロボットの位置情報の精度は、自動運転には非常に重要とのこと。配送ロボットの位置情報の精度は、自動運転には非常に重要とのこと。

◆新しい保険の形を提案する損保ジャパン

サービス検証については、損害保険ジャパンリテール商品業務部の平野貴之部長が説明を行った。「損害保険ジャパンは、ティアフォーと連携して自動運転技術とサービスの社会実装に向け、安心安全面での貢献を目指し『インシュアテックソリューション Level IV Discovery』の開発を進めている。このLevel IV Discoveryは3つの機能を持っており、1点目は当社が保有する事故データを活用し事故防止をサポートするリスクアセスメント。2点目はコールセンターを活用し自動走行をサポートする見守りトラブルサポート。そして3点目が、万が一の事故に備える保険。これらの開発を進めているところだ。今回の実証実験では自動配送ロボットの安全な自動運行に向けて事前にリスクアセスメントも実施し、万が一に備えて自動配送ロボット専用保険も手配した。加えて今回は新たなチャレンジとして見守りトラブルサポートについて2種類の実証を行った」と解説。

2種類の実証については、1つ目はトラブルサポートの検討で、自動走行不能となった場合を想定して駆けつけサポートを実施したり、無人配送サービスに求められるサポートの検討が行われた。2つ目は、自動配送ロボットを通じた情報発信。例えば地震などの災害発生時ロボットの自動走行は困難になる。そのまま歩道で停車していると単なる障害物になってしまうが、自動配送ロボットに搭載されたモニターを介して、その時々に有益な情報配信を提供する機器として活用する実証も行ったとのこと。

災害時の情報提供なども手がける予定。災害時の情報提供なども手がける予定。

◆課題は多いができるところから一歩一歩進めることが大事

最後にティアフォーの田中氏が再登壇し、社会実装に向けての課題などについて語った。田中氏は、真の社会実装には大きく分けて3つの課題があると述べた。技術面の課題については、より複雑なシナリオを実現する機能性の向上。より多くのロボットを運用できる拡張性の向上。さらなる安全の追及が必要とのこと。運用面の課題については、関係各所とのより効率的な調整の仕組みの導入が必要で、そのほかにも、より積極的なマーケティングも必要ではないかとのこと。事業面での課題は、事業エコノミクス実現のための収益モデルの構築。運用コストの飛躍的な低減。各種サービスとの連携・連動による付加価値向上などの課題が挙げられた。

「まだ課題の多い事業ではあるが、実装のカギは力を結集させて取り組みを継続させることで、エリア全体が盛り上がり、ロボットを当たり前として受け入れる機運の広がり、そして定着させることが大切とのこと。そのためには、各社が得意分野を持ち寄りより大きなコラボレーションの輪を作り、エリアの魅力アップにつながる要素をしっかりと見つけ、できるところから一歩一歩進めることだ」と締めくくった。

課題はまだあるが、解決に向かって着実に進んでいる印象だ。課題はまだあるが、解決に向かって着実に進んでいる印象だ。

《関口敬文》

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