イヤなところがひとつもない ルーテシアのような小粋なコンパクトカーが街にはもっと必要かも

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ルノー ルーテシア 新型
ルノー ルーテシア 新型全 22 枚

この話をすると「へー意外」と言われることがよくある。高校3年生の18歳で免許を取って最初に乗っていたクルマがルノー『サンク』だったという話である。

「意外性」っていいじゃない

もちろん、「高校生のくせにガイシャかよ」みたいな憎まれ口もあるけれど、日本車でもドイツ車でもなくて、フランス車のルノーのサンクだったというところに「意外性」を感じていいただけるらしい。実際には、このサンクは母の愛車で、でもどういうわけか彼女はまったく運転しなくなってしまい、たまたま空いていたから乗っていただけのことである。自ら選んで購入したわけではないし、そもそもサンクが家にやってきたとき「ルノー“ファイブ”」って名前なんだというくらい、クルマに関する知識はほとんど持ち合わせていなかった。

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だからサンクの魅力である素直なハンドリングとかゆったりとしたばね上の動きとかガンディーニによる内外装のデザインなんて知る由もなかった。それでも、なんだかよく分からないけれど乗りやすく運転がすごく気持ちよく快適なクルマだなあとは感じていて、当初は週末だけだったのがしまいには通学にも使うようになっていた。

イヤなところがひとつもない。案外そういうクルマを見つけるのは難しい

ルーテシアに乗る度によみがえるのは、そういう若かりし頃の記憶である。ルーテシアがサンクの直系の後継車だからというプロダクト・ポートフォリオ云々というよりも、サンクで感じた乗り味がいまでも現行のルーテシアにちゃんと残っているからだと思う。

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ルーテシアを借りて市街地やら高速道路やらワィンディグロードやらを1日中走り回ったところで、「ん?」と感じたり「これはちょっとどうなんだろう?」と思ったりする場面はまずない。いまどきのクルマはどれもよく出来ていて、致命的とも言えるような欠点を抱えたまま発売されることはほとんどあり得ない。そうはいっても、1日中走り回れば何かしらの「ん?」を感じるクルマが少なくないというのも事実である。イヤなところがひとつもないなんて当たり前のことだと思われるかもしれないが、案外そういうクルマを見つけるのは難しいのである。

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絶妙なボディサイズと、思った以上にゆとりがある室内空間 

1.3リットルなのに「3ナンバー」なのは、全幅が1700mmを超えているからだが、+25mm程度の範囲内に収まっているので取り回しはまったく問題ない。むしろこのちょっと広い全幅のおかげで、視覚的にも物理的にも安定感のあるスタンスを実現している。

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もうひとつ、ルーテシアで注目するべきボディ寸法はホイールベースである。ルーテシアのホイールベースは2585mmで、これは例えばメガーヌのハッチバック(2670mm)やワゴン(2710mm)よりも数値の上では短い。ところが全長に占めるホイールベースの割合を算出してみると、メガーヌのハッチバックが58.4%、ワゴンが60.7%であるのに対し、ルーテシアは63.4%。実質的にはメガーヌよりもルーテシアのほうがロングホイールベースなのである。全幅(=トレッド)は広い方が操縦性で安定感を増す方向にあり、ホイールベースは長いほうが乗り心地にいい影響を与える。

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ステアリング操作に対して素直に動き、安定した旋回姿勢をすぐに作り出す操縦安定性や、路面の状況に大きく左右されない快適な乗り心地、思った以上に前後左右方向にゆとりがある室内空間は、ルーテシアのボディサイズとパッケージの妙が成せる技でもある。

物足りないなどと感じる局面は1度もない

今回の試乗車である『ルーテシア・インテンス』のエンジンは1.3リットルの直列4気筒で、パワースペックは131ps/240Nm。数値だけ見れば極めて平凡であるけれど、物足りないとか力不足だなどと感じる局面は1度もなかった。240Nmの最大トルクは1600rpmから発生するので、実用域のほとんどで最大トルクが使えるし、そうさせてくれる7速ATのギヤ比やシフトプログラムが絶妙でもある。

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そして何より、わずか1200kgという車両重量が軽快感をもたらす大きな要因となっている。ルーテシアのプラットフォームである「CMF-B」はこれだけで先代より約50kgも軽くなっていて、ルーテシアは開発当初から軽量化が優先事項に置かれていたと推測できる。小さいクルマなのだからそんなに重くならないし、スポーツカーでもないのだから軽量化だってそこそこでいいと考えるのがフツーのメーカー。

いっぽうコンパクトカー作りに関しては多くの経験と実績があるルノーは、コンパクトカーこそ軽量化は見過ごせない要件と考える。結果的に、大排気量で大パワーなエンジンを積まなくても、ルーテシアはキビキビと元気よく走るクルマとなったわけである。

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知り合いから「ルーテシアってよさそうですね」とメールが来たので

ルーテシアには、動力性能や操縦性を積極的にサポートする飛び道具のような電子デバイスはほとんど見当たらない。ごく一般的な装備である。ところがその乗り味は同セグメント内でも穏やかで優しく、でも正確で安定した唯一無二の存在になっている。こういうところは、サンクの時代からずっと変わらないルノーの魅力のひとつでもある。

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この取材の最中に撮った写真をSNSにアップしたら、知り合いから「ルーテシアってよさそうですね」とメールが来たので、「すごくいいよ。いまなら、インテンスに12万円足すだけで本革シートとレーンセンタリングアシストの先進安全装備まで付いてくる特別仕様車のインテンス・プラスがお薦めかも」と、うっかりセールスマンのような返信をしてしまった。大きくエラそうなクルマが多い都心部では、ルーテシアのような小粋なコンパクトカーがもっとたくさん走ってくれて、風景がもっと柔らかくなってくれたらいいのにと思っている。

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渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

《渡辺慎太郎》

渡辺慎太郎

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター 1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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