【ベントレー ベンテイガ スピード 試乗】スポーツモデルでも派手さを持たせないベントレーの美学とは…野口優

ベントレー ベンテイガ スピード
ベントレー ベンテイガ スピード全 15 枚

クーペやサルーンと同様、英国らしいラグジュアリーな仕立てを受け継ぎながら最高峰のSUVとしてリリースされたベントレー『ベンテイガ』。2015年のデビュー以来、『コンチネンタルGT』や『フライングスパー』を差し置いて今や屋台骨を支える存在にまでなっている。

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もっともあらゆるクラスにおいてSUVが定番化されてしまったから、高級車市場も自ずとその流れに行き着いたというのが実情だが、ベンテイガが他と一線を画するのは、SUVであるにも関わらず、ラグジュアリーの極みとも言うべき、高い完成度と絶妙なバランスを実現しているところだ。ましてやここで取り上げる『ベンテイガ スピード』は、その頂点。先ごろラインナップに加わった『ベンテイガ ハイブリッド』ばかりに注目が集まりがちだが、今回ベンテイガ スピードに乗って、あらためてベントレーの底力を思い知らされた。

他のラグジュアリーSUVと比較しても独自性を強く感じられる乗り味

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搭載されるエンジンは、6リットルW型12気筒ツインターボユニット。パワーは635ps、トルクに至っては900Nmと膨大な数値が並ぶが、注目すべきはこのパフォーマンスに対するシャシーの出来。極端な表現をすれば、極上の乗り心地と的確なインフォメーション性は“ベントレーライド”と表したくなるほど、他のベントレーと同様、いや、それ以上の仕上がりかもしれない。また、他のラグジュアリーSUVと比較しても独自性を強く感じられる乗り味だ。

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これは主にエアサスペンションと、48Vシステムによる電動式アクティブ・ロール・コントロールによるものだが、その設定がとにかく見事で、巨漢であるにも関わらずコーナリング中でもほとんどロールを感じない。しかもタイヤの接地も手に取るように伝わるから一体感まで得られてしまう。それでいて高い快適性まで維持しているから驚くほかない。

このスポーツモードは競合他車のオーナーも嫉妬するかもしれない

事実上、ベンテイガはフォルクスワーゲングループに属するだけに、プラットホームは兄弟車にあたるランボルギーニ『ウルス』と共通となるが、W12とV8の違いはあれ、ベンテイガの場合はスポーツモードを選択しても終始ジェントルに徹する。一方のウルスはスポーツSUVを貫きノーマルモードでも高揚感満載。しかし、面白さが得られる反面、ロングドライブではややキツく感じられることもあるため、やはりベンテイガのほうがベントレーの伝統に準じて快適性という面でも本質を心得ていると言える。コンセプトによるキャラクター設定の違いとはいえ、生まれや育ちが違うと、同じ素材を使っても明確な違いが見て取れるのは面白い。

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とはいえ、ベンテイガ スピードのスポーツモードも侮れないからウルスオーナーは嫉妬するだろう。特に旋回時は先にも触れた「アクティブ・ロール・コントロール」に加えて、コーナー進入時に後輪内側に軽くブレーキをかけてターンインしやすくなる「トルク・ベクタリング・バイ・ブレーキ」も備えていることもあり、スポーツカーさながらのコーナリングでドライバーを虜にする。しかも自重を忘れそうになるくらいの身の動きは思いのほか軽快だ。

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もちろん、あらためて言うまでもなく、極めつきはインテリア。他のベントレー車と同様、この上ないほどのラグジュアリーな世界で魅了しつつも、ベンテイガ スピードにはシートの一部にアルカンターラを併せるなどスポーティな印象まで与える。そのシートにはマッサージ機能も装備。今では珍しくないものの、ロングドライブを想定するベントレーにこそ相応しいと思う。

ベントレーは“アンダーステイトメント”=控えめの美学を今に受け継ぐことでも知られているが、スポーツモデルのスピードでも派手さを持たせないのは好印象。外観から他のグレードと見分けられるのはエンブレム以外では唯一、テールゲートスポイラーくらいだ。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

《野口優》

野口優

1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

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