自動走行モビリティでエレベータを乗り降り…成田空港で実証開始

成田空港とWHILLが自動走行パーソナルモビリティのエレベータ連携を世界で初めて実現した
成田空港とWHILLが自動走行パーソナルモビリティのエレベータ連携を世界で初めて実現した全 18 枚

電動車椅子をグローバルで展開するWHILLは、成田空港第2旅客ターミナルにおいて、エレベーターと連携した「WHILL自動運転モビリティサービス」の実証実験を開始した。期間は7月28日から8月10日まで。現地で取材した試乗レポートをお届けする。

◆利用者の利便性向上と人手不足解消を目的に、自動走行車椅子を使用

空港はとにかく広い。発着便数が多い空港ではそれに対応するため、横にどんどん面積を広げざるを得ず、移動する距離はおのずと長くなってくる。

健常者であっても荷物を持っていればその移動は大きな負担になるし、ましてや身体に障害を持つ人にとっては問題は深刻だ。そこで空港ではほとんどが障がい者向けの対応として、搭乗口まで車椅子で送迎するサービスを行っている。しかし、そこには慢性化する人手不足の問題が立ちはだかる。

そんな中でWHILLが今回の実証実験で提供するのは、空港内を介助者なしでの自動走行を実現するというもの。さらに、利用者の利便性向上の目的もあるが、そうした人手不足の課題解決を図ることも目的になっているという。今回はこの電動車椅子が人を乗せたままでエレベーターと連携し、フロアを跨いで出発地点から目的の搭乗ゲートまで、成田空港で言えば一番遠いサテライトまで自動運転で走行することができるようにしている。WHILLによれば、これの実現は世界初のことになるそうだ。

「WHILL自動運転モビリティサービス」そのものは、すでに羽田空港国内線のセキュリティエリア内で提供されている。第1/第2ターミナルの両方で計24台が今も稼働中だ。他にもこのサービスは大規模病院などでも展開されており、おおむね利用者からは反応は良好だという。私も羽田空港で何度も体験させてもらっているが、確かに荷物を持たずに搭乗口まで連れて行ってくれるのでとても楽ちんだ。

ただ、走行速度が徒歩よりも遅い2.5km/hとなっていることもあり、その遅さ故に途中で降りてしまう人もいるようだ。が、多くの人が行き交う場所では緊急停止しなければならないこともあるわけで、逆にこのぐらいの速度でないと急停車に乗っている人が耐えられない。これはクルマでも同じで、歩行速度の4km/hは想像する以上に速いのだ。こうしたことも踏まえ、成田での実証実験も速度は羽田と同じに設定しているという。

自動走行に対応したパーソナルモビリティ自動走行に対応したパーソナルモビリティ

◆国際線ロビーで使うことを想定し、言語は5カ国語に対応

成田空港の実験で使われる電動車椅子は計3台。市販されているWHILL『モデルC2』をベースとしたもので、ここに自動走行するために必要なセンサーが前後左右に組み込まれている。基本的なシステムは羽田空港で稼働しているものと同じだが、成田空港ではエレベータと連携するための通信モジュールが加えられ、さらに外国人の利用も想定して、日本語以外に英語/中国語(簡体字と繁体字)/ベトナム語の計5カ国語が選べるようにした。選べる言語は今後のニーズに応じて随時増やしていく予定だ。

また、操作パネルはアームレストに組み込み、右側のアームレストにはドライブレコーダーも装着される。荷物用ラックは使い勝手を高めるために、デザインを従来型から若干変更しているようだ。自動走行のために前後左右に組み込むセンサーは羽田と同じということだった。

さて、この電動車椅子に着座すると自動的に左側アームレストにあるディスプレイが起動。ここで使用する言語を選び、「利用開始する」を選んで目的地の搭乗口を選ぶ。設定はこれだけだ。あとはあらかじめ用意された地図データに従って電動車椅子は自動的に進んでいく。このうち、エレベータと連携するのは、成田空港第2旅客ターミナルのサテライトにある搭乗口(91~99)を目的地に選んだとき。それ以外の目的地は空港第2旅客ターミナル本館側にあるのでエレベータ連携は行わない。

フロアが異なるエリアへもパーソナルモビリティでそのまま移動できるフロアが異なるエリアへもパーソナルモビリティでそのまま移動できる

◆エレベータ連携はスムーズそのもの。サテライトまで風景を眺めながら楽しめる

ここからがいよいよ試乗だ。目的地を「Gate 91-99」に設定し、電動車椅子が動き出すとエレベータの正面で一旦停止してエレベータのドアが開くのを待つ。この時、エレベータの呼び出しボタンは点灯しないため、エレベータを呼んでいるのかがわからない。できれば、この点灯があると良かったようにも思った。

ドアが開くと、ひと呼吸をおいて電動車椅子はエレベータ内に自動的に進んだ。この時、先にエレベータに人が乗車していた場合は人が優先され、次のエレベータを待つことになる。ただし、後から乗り込んだ来た場合はその限りではない。また、今回の実験で連携したエレベータは乗り込んだら反対側のドアが開く構造になっているため、エレベータ内で車椅子を回転させる必要はない。車輪に組み込まれた「オムニホイール」を使えば、エレベータ内で方向転換することは難しいことではなだろう。

エレベータで垂直移動してドアが開くと、電動車椅子はサテライトの方へ進み始めた。ここまでの動きはとにかくスムーズで、前述したように速度こそ2.5km/hと歩行速度よりも遅いが、サテライトへ向かいながらゆっくりと飛行機を眺めながら寛いでもいいと思う。また、車椅子ということで進路が塞がれることはほとんどないと思うが、仮に人が進行方向に立ったりすると、道を空けてくれるようアナウンスも行う設定となっている。

ただ、サテライトではGate 91-99に向かう突き当たりの所で電動車椅子は停止する。サテライトの端にある搭乗口までは対象となっていない。これはそこから先の通路がかなり狭くなっていることを配慮しての対応だ。これは従来の電動カートでのサービスでも同じだった。そこから先は動く歩道を使って移動することになる。成田空港によれば本館からサテライトの端までは約600m。この距離を少しでも電動車椅子が担ってくれることで、空港としてのサービス改善に大きく役立つというわけだ。

現段階で本サービスに移行する時期は具体化していないが、成田国際空港営業部門旅客ターミナル部の大河原啓氏によれば、「今回の実証実験の結果から課題を洗い出しつつ、第1ターミナルでのトライアルも行いながら、そんなに遠くない時期に展開するようにしたい。空港としても今回の実証実験には大きな期待を寄せている」と話していた。羽田空港での高評価もあるように、成田空港でもこれが実施されればグローバルでその実績がアピールできる貴重な機会ともなる。サービスの成功を期待したい。


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《会田肇》

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