【スバル ソルテラ】雪道でも軽々走破できるEVを作りたかった…開発責任者[インタビュー]

スバル・ソルテラ
スバル・ソルテラ全 10 枚

SUBARU(スバル)のフルEV『ソルテラ』はスバルとして社運をかけた1台だ。そこでどんなこだわりを持って開発したのか。その開発責任者に思いを聞いた。

【画像全10枚】

◆フルスイングの1台に

----:まずスバルのラインアップの中で、ソルテラはどういうポジショニングと捉えているのでしょうか。

SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの小野大輔さん(以下敬称略):単にクルマだけという捉え方だけではなく、それこそ、失敗するとスバルが倒産するかしないかみたいな、1番大きな分岐点の1つ目の点になっています。

変な話ですけれど、開発の最初の頃は規制のために出さなければいけないBEVであり、これはどのメーカーも一緒だったと思います。利益的にはそれほどでもない可能性もありますので、極力お金をかけずに規制に合致させて、最小限の台数を出せばいいというマインドが社内ですごく強かったんですよね。

しかし、私自身は全ったくそう思ったことがなく、開発が始まる当時から、数年後の将来の世の中は、未だにEV市場は『テスラ』一強のスペシャリティカー、それとシボレー『ボルト』のようなコミューターカーという両極なのだろうか、と考えました。そこで気付いたのは上と下はあるけれど、真ん中がぽっかり空いているじゃないかということです。そこに新しい価値の提案をしていけば絶対刺さるので商品性をしっかり高めたいと思ったのです。

ただ出せばいいんだったらなんでもいいですよね。でもそうじゃない。我々は普及させなければいけないわけですから、選んでいただいて、買っていただいて、さらにどなたかに紹介していただいてという、良いスパイラルを回したかったんです。ですから商品としてしっかり仕上げたかった。会社としては、とにかく規制のため出してくれ、最小限でいいというのに対し、私自身はいやいや、これが第1手ですから、ここでこけたらこの先のEVがなくなってしまう。ですからここでスバルのEVは他のとは違うんだということをアピールして、その先にも期待を持っていただけるようにするのがこのクルマの使命だと思っていましたので、そこをずっと考えていましたね。

----:ここからスタートしたわけですね。

小野:2個目の点がどんな点かわかりませんけれど、とにかく1発出して終わるつもりはさらさらないですし、本当に最初の1点目はすごく大事だったので、もう“全部乗せ”で考えましたし、名前(ソル:太陽 テラ:大地)もフルスイングにしちゃいましたので、次の名前はどうすんだって感じです(笑)。でも、それぐらい綿密に考えていました。

◆新雪の中を爆走するEVに

----:ソルテラはSUVライクな形としてデビューしました。開発に際しては様々なボディタイプを考えたと思いますし、当然、スポーツカーもあったでしょう。その中でSUVを選んだのはなぜでしょうか。

SUBARU商品企画本部プロジェクトシニアマネージャーの藤枝健一郎さん(以下敬称略):SUVを選んだのはSUBARUと非常に親和性が高いからです。特に北米では非常に人気があり、評価していただいています。あとはEVのレイアウトを考えても親和性が高いのでそういうところが起点になっています。

----:そのうえで企画当初に最も実現したかったことはなんでしょう。

藤枝:我々のラインナップで1番人気を得てるクルマは『フォレスター』や『XV』であったりしますから、ほんとうはそこにガチのEVを作りたいと思っていました。ただし、トヨタとの協業ですから、トヨタがやりたいこと、我々がやりたいこと、それらをかけ合わせてやった結果がこのクルマになりました。そして、お互いの要望を受け入れながら、良い商品になったんじゃないかなと思っています。

----:因みに藤枝さんが一番実現したかったことはなんですか。

藤枝:やはりスバルらしさをこのクルマにもちゃんと入れて、それを皆さんに理解していただくことでした。我々の販社に対して試乗会などをやったのですが、最初はやはりバッチの変更程度とかそういうイメージを持っているんですね。しかし、乗った瞬間に皆さん、スバルのクルマだと答えてくれましたので、走りの部分でのやりたかったことが実現できていると思っています。

----:小野さんはいかがですか。

小野:なぜSUVにしたのかは、やりたかったことと戦略と両方あるんです。スバルで1番記号性があるクルマとしてフォレスターやXVがありますので、まずはフォレスターをベースに考えました。結果としてフォレスターとXVの中間みたいなクルマになっていますけれども、フォレスターをベースにどこまでユーティリティを維持しながら、スバルの商品力を持たせて仕上げるかという着眼点が1点。

もう1点は、色々なEVが出ていますけれど、1番増えていっているカテゴリーがSUVのCセグやDセグだったんです。そのクルマ達は電費が悪いので航続距離を伸ばすために電池をいっぱい積まなければいけないので、どうしてもSUVになってしまっている。一方でソルテラは電池の量は少ないんですよね、航続距離の割には。つまりすごく電費の良い商品にしていますので、そういった戦略面での大きな商品価値もありました。ここで例えばセダンやスポーツカーを出すと、相手がポルシェ『タイカン』とかテスラ『モデルS』とかになってしまいますので、一体スバルはどこ行くんだっていう話になってしまうわけです。この2つの点でSUVを選択しました。

もう1つ、実現したかったことですが、これは社内の話ですけれど、2017年にEVの先行開発の途中報告を役員にするときに、思いを込めた表紙を作ったんです。そこには新雪の中を爆走しているクルマを描いていて、私はこういうクルマを作りたいという思いを込めました。ただ、今から5年も6年も前の話ですから、その表紙を見た役員の第一声が、お前、正気かっていわれました(笑)。でもこれをやらないとスバルじゃないと思っていましたので、そういうことだけを頭に考えてスバルらしさ、スバルの代名詞とでもいいましょうか、そういった環境下で普通に走ることができるEVを作るのがスバルの使命で、それを実現したかったし、できていると思っています。

スバル・ソルテラスバル・ソルテラ
スバル・ソルテラスバル・ソルテラ

◆ソルテラがオリジナル

----:その一方でトヨタとの協業というところもありますので、すごく難しかった面もあるように思います。走りの面でもチューニング的に変えられる部分と、変えられない部分が出てくるでしょう。そこはどのようにコントロールされたのですか。

小野:狙って何かをしたわけではないんですけれど、両社にとって良い答えはなんだろうということだけを考えていました。スバルのやりたいことを押し売りしてもダメだし、トヨタのやりたいことを僕らも黙って聞く気もないので、とにかく我々はこうしたい、これをやるとトヨタの商品もここまでレベルが上がる。だからやりませんかといういい方をしていました。ここで同意していただけたのが、例えばXモードであり、四駆の制御。

同意いただけなかったのは、アイサイトを搭載すること。アイサイトに関しては、我々は内燃機関に対しての指令は経験していますが、電動部分に指令を出してクルマを制御する経験はありません。そのあたりは効率的に考えてスムーズに開発を進めました。このように、お互いにとって良い方法は何かということだけを考えて、1つ良いものを作って、出来上がった後に、やっぱり分けようみたいな話があれば分けました。それが足回りです。実は良いもの1個作ったんですけれど、トヨタ側からこれはちょっとスバル色が強すぎるからといわれまして。

----:つまりソルテラがオリジナルということですね。

小野:ある意味そうですね。そして、EVだからといってここは行っちゃダメみたいな制約はないようにしたかったんです。それの極端な例として先ほどお話をした雪原を爆走するシーンを描いたわけです。このソルテラはTHE SUBARUみたいな感じですね。

>SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの小野大輔さん(左)とSUBARU商品企画本部プロジェクトシニアマネージャーの藤枝健一郎さん(右)>SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの小野大輔さん(左)とSUBARU商品企画本部プロジェクトシニアマネージャーの藤枝健一郎さん(右)

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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