【VW ポロ 新型試乗】ちょっと進化した6代目改、でもナビは…中村孝仁

VW ポロ TSIスタイル
VW ポロ TSIスタイル全 32 枚

2018年に誕生した6代目VW『ポロ』の実質的マイナーチェンジ版として誕生したのが今回のポロ。外観をわずかにリニュアルしているものの、さほど大きな変化はない。

ただドイツ車の常で、見えずらい部分にしっかりと進化の跡を残している。例えばヘッドライトはポロで初採用のLEDマトリックスヘッドライトが使われていたり、直列3気筒1リットルという、字面の上では何も変わらないエンジンも、実は「EA211evo」が採用されて実質的には『ゴルフ』から48Vマイルドハイブリッドシステムを取り外したエンジンと言ってよいのである。

一方でインテリアはメータークラスターのディスプレイがデジタル化され、今回試乗した「TSIスタイル」はオプションながらディスカバープロパッケージが選べ、インフォテイメントシステムに関しては大いに進化している。この件については後述するとして、乗り味の方からレポートしよう。

がっしりとしたボディは古のドイツ車そのもの

VW ポロ TSIスタイルVW ポロ TSIスタイル

元々2018年に誕生した時もMQBのプラットフォームを用いて大型化したものの、しっかりどっしりの乗り味はクラスを超えた落ち着き感を持ったモデルだと感じていた。今回もその点に関しては何も変わっていない。がっしりとしたボディは古のドイツ車そのものである。ただ、その古の時代はドイツ車が一頭地抜け出した存在で、そのがっしりどっしり感が抜きんでた印象だったものが、今ではイタフラ車にいたるまでそのがっしりどっしりが浸透してきたため、当時ほどの優位性は持っていない。

ボディの剛性感はがっしりどっしりであるが、その挙動は全体的にマイルドになった。ステアリングの切れもシャープというよりも少しおっとりした印象で、よく言えば大人感を演出。悪く言えば老化した。特に感じるのがDSGの制御である。初期のDSG搭載のゴルフを所有していた身からすると、とんがり感ゼロである。

どうしても比べられるのがステップATで、最近はそのステップATの出来が非常に良くなっているので、本来の持ち味である俊敏さを犠牲にしてもスムーズなシフトフィールが必要なことはよくわかる。静止からぐっと踏み込めばそれなりの加速を示してくれるのだが、流れに乗ってパーシャルからここという時に踏んでも無反応な印象で、こうした時でもぐっと奥まで踏み込まないとクルマが反応してくれない。それこそ、車にそんなに急いでどこ行くのよ?と言われている雰囲気だった。

「318に2分の渋滞があります」で、わかる人がいるのか

VW ポロ TSIスタイルVW ポロ TSIスタイル

インフォテイメント系が進化した話を書いたが、ナビゲーションは正直言って今も使いづらい。そもそもエンジン始動からナビの地図画面を呼び出すまでに3回は画面をタッチしなければならない。まあ、ETCが入っていれば回数は減るのだが、エンジン始動と共にナビの地図が出ることはない。さらに、AIの音声で案内してくれるアナウンスも、聞いていて非常にわかりづらい。

例えば渋滞をアナウンスする場合、「12に2分の渋滞があります」などという。はて?何?となるのだが、道路に書かれた国道あるいは都道、県道をすべて番号で案内するわけである。確かにナビ画面上でも東京の環状7号線は都道318号線と表示されている。だから、ここが渋滞すると「318に2分の渋滞があります」みたいになるわけである。環7は正式名称ではないかもしれないが、では都道318号と言われてそれが環7とわかる人は少ないだろう。

今回はあくまでもマイナーチェンジである。ちょっと進化して次に繋げるということだと思うが、このナビゲーションの使いづらさは要改善である。

僅か4年で20%以上の値上がりである

VW ポロ TSIスタイルVW ポロ TSIスタイル

マイナーチェンジを機にグレード名がすべて変わり、今回のスタイルは従来「ハイライン」と呼ばれていたグレードである。2018年当時ハイラインの価格は265万円。それが今回のスタイルは車両本体価格が324万5000円(税込み)に引き上げられている。僅か4年で20%以上の値上がりである。これに「ディスカバープロパッケージ」とディーラーオプションのフロアマットを足した合計額は343万2000円。諸費用を大雑把に10%で計算すると、ポロの価格は300万円台後半の乗り出し価格ということになって、やはり自動車が高くなっていることを痛感せざるを得ない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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