民間企業主体のスマートシティ計画…裾野市×ウーブン・シティ、藤沢市×パナソニック【MaaSがもたらす都市変革】

開発中のトヨタウーブン・シティ(完成予想図)
開発中のトヨタウーブン・シティ(完成予想図)全 6 枚

スマートシティは自治体主導で進められることが多いが、彼らがデジタルやモビリティなどに精通しているわけではなく、多くの事例でその面に長けた民間企業や大学などが関わっている。

ただし事業負担の割合は、プロジェクトにより異なる。中には民間企業が主体となって推し進めていくスマートシティもある。今回はこうした事例について取り上げていく。

◆カナダの都市開発プロジェクト「Sidewalk Toronto」

グローバルではカナダのトロントで2017年、グーグル(Google)などとともにAlphabet傘下にある企業Sidewalk Labsが、行政系企業Waterfront Torontoと連携した湾岸地区の都市開発プロジェクト「Sidewalk Toronto」が有名だ。

トロントは50年間で人口は約50万人増加していたものの、中産階級が減り、貧富の差が顕在化するという課題にも直面していた。こうした状況に対応し、Sidewalk Torontoでは自動運転シャトルやゴミ収集ロボットなどを導入するとともに、各所にセンサーを設置。交通、大気汚染、エネルギー、旅行者の行動、ゴミの排出量などに関する情報を常時収集し、データサイエンティストが分析することで、都市設計に役立てようとした。その結果、温室効果ガスを89%削減し、移動の4分の3は徒歩、自転車、公共交通で可能になると公表。それでいて住居の40%は市場相場以下で入手可能としており、4万4000人以上の直接雇用を創出することにも言及していた。

これだけ見るといいこと尽くめに感じられるSidewalk Torontoだったが、行政と実施企業の関係、住民から収集したデータの扱いなどについて説明が曖昧だったことから、プライバシー擁護派や都市計画専門家などから反対が相次ぎ、多くの支援者が脱退したことから、2020年に計画は中止され、自治体主体の開発に転換した。

とはいえ彼らがスマートシティそのものを諦めたわけではない。2021年5月にはグーグルとして、本社に近い米国カリフォルニア州サンノゼに、巨大キャンバス「Downtown West」を建設する計画を発表している。

◆ウーブン・シティと裾野デジタルクリエイティブシティ構想

一方日本では2020年1月、トヨタ自動車の豊田章男代表取締役社長が、米国ネバダ州ラスベガスで開催されたCES(家電見本市)で発表した「ウーブン・シティ(Woven City)」が話題になった。

ウーブン・シティは、静岡県裾野市にあったトヨタ自動車東日本の工場が、東北地方の工場に機能移転することを機に、自動運転などの実証実験が可能なプラットフォームに作り替えるという考えで企画されたものだ。敷地面積約70万平米のこの場は、単なる実験施設ではなく、当初360人、将来2000人の住民が暮らす計画であることが画期的だった。全体設計はグーグル本社などを手掛けたデンマークの建築家、ビャルケ・インゲルス率いるグループが担当することも明らかにされた。

翌年1月には、2018年に設立されたトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンス・デベロップメント(TRI-AD)を前身として発足した持株会社ウーブン・プラネット・ホールディングス(WPH)に属するウーブン・アルファが、ウーブン・シティの事業会社になった。翌月には地鎮祭が行われ、工事がスタート。10月には住民や報道関係者向けに、裾野市が「これからのまちづくり」説明会を開催した。髙村謙二市長(当時)ととともにWPH代表取締役CEOジェームス・カフナー氏が出席し、地域住民15名が招かれた。オンライン配信も行ったので筆者も視聴した。


《森口将之》

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