自動車の水素&e-fuel活用、水素が求められる理由… KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 轟木光氏[インタビュー]

自動車の水素&e-fuel活用、水素が求められる理由… KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 轟木光氏[インタビュー]
自動車の水素&e-fuel活用、水素が求められる理由… KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 轟木光氏[インタビュー]全 4 枚

カーボンニュートラル燃料 e-fuelに注目が集まっている。e-fuelの可能性と課題とは何か。11月16日に開催予定の「脱炭素化に向けた水素エネルギー・e-fuelの可能性と課題」は2部構成のオンラインセミナーだ。第2部では「自動車の水素&e-fuel活用の可能性と課題」をテーマに、最新の水素およびe-fuelの市場および技術動向を捉えつつ、自動車の動力源である次世代パワーユニットの将来予測を行い、そこからどのように日本企業が対応すればよいのかを説明する。第2部の講演者のKPMGコンサルティング株式会社 アソシエイトパートナーの轟木光氏に、講演の見どころについて聞いた。

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「自動車の水素&e-fuel活用の可能性と課題」
1.クルマのカーボンニュートラルとe-fuel
・カーボンニュートラルに向けて期待されるe-fuel
・e-fuelの課題
2.クルマのカーボンニュートラルと水素
・カーボンニュートラルに向けて期待される水素と課題
3.質疑応答
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セミナーの詳細はこちら。(基調講演は無料)

BEV販売が加速しても2030年の保有ベースではエンジン車が主流

轟木:車の電動化が確実に進んでいるなか、よく語られているのは新車販売台数です。でも車というのは、毎年売れている車よりも保有している台数の方が多いことがあまり議論の対象になっていません。

---:いま走っている車ということですか。

轟木:そうです。日本では年間450万台ほど新車が販売されていますが、保有台数は6200万台ほどです。どのようにこれらの保有台数がBEVに変わっていくのかについて、簡易的なシミュレーションを行いました。

自動車の水素&e-fuel活用、水素が求められる理由… KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 轟木光氏[インタビュー]自動車の水素&e-fuel活用、水素が求められる理由… KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 轟木光氏[インタビュー]

たとえば2022年の新車販売台数に対してBEVが10%売れたと仮定します。毎年の販売台数を450万台とすると、BEVは45万台となります。毎年のBEVの新車販売台数を5%ずつ増加させていきますと、2026年には30%の新車販売台数がBEV、2030年には50%の新車販売台数がBEVとなります。一方で保有台数ベースでは、2030年は全保有台数に対してBEVは19.6%に留まります。

上記の簡易シミュレーションの結果から2030年での保有台数の内訳を検討すると、80%以上はBEV以外、すなわちエンジン車ということになります。したがって、できるだけ早くCO2を減らしていくためには、2030年時点でも主流となると考えられるエンジン車のCO2削減が重要となります。ここがe-fuelに期待される部分となるのではと考えています。

---:つまり、既存のエンジン車にe-fuelを使えばCO2削減になるということですね。

轟木:そうです。ただし、走行時だけでの比較ではCO2削減となりません。燃料を製造するといったライフサイクル全体の視点において、e-fuelはCO2削減に貢献できます。ではe-fuel普及の課題は、という話になるかと思います。最も大きな課題はe-fuelのコストが高いことです。

既存のエンジン車の燃料としてそのまま利用可能

---:e-fuelはディーゼルエンジンに使うということでしょうか?

轟木:e-fuel とは、「再生可能エネルギーで発電した電力により製造した H2 と濃縮回収した CO2 から合成した低炭素燃料(もしくはカーボンニュートラル燃料)」のことです。e-fuel にはさまざまな種類があります。メタネーションによって得られるメタンガス、メタノール、エタノールから始まり,そしてそのメタノールから e- ガソリンやディーゼル油の代替となる e-OME(オキシメチレンエーテル)を製造することが可能です。また化成品、たとえばプラスチックなどもe-fuelを原料とすることが可能です。

---:ガソリンやディーゼル油と比べて燃費が悪くなる、パワーがなくなるということはないのでしょうか?

轟木:燃費については既存の化石燃料由来のガソリンやディーゼル油と同等レベルと考えています。一方排出ガスについては、既存の化石燃料由来のガソリンやディーゼル油を使うことに比べて、クリーンになるというドイツの研究結果が出ています。研究結果からは、23年前のクルマでも現在の排出ガス規制並の結果を得たとのことです。またe-fuelは既存の化石燃料由来のガソリンやディーゼル油に混ぜて使うことも可能です。できるだけ多くのe-fuelを既存の化石燃料由来のガソリンやディーゼル油に混合すれば、その混合率が高いほどCO2削減に貢献できる可能性が広がります。

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今何故、水素が注目されるのか?

轟木:2019年における日本の最終エネルギー消費は、全体では熱と燃料が74%を占めています。残りの26%が電力となります。2050年のカーボンニュートラルに向けて、この熱と燃料の部分をどのようにカーボンニュートラルしていくのか?が大きな課題となっています。

---:具体的に熱と燃料の部分のカーボンニュートラル化とは?

轟木:熱エネルギーの用途として温度帯で分けることができます。200度以上の温度帯では、石油石炭を燃やして必要となる熱を作っています。結果としてCO2を排出していますが、これらの化石系燃料から脱してカーボンニュートラルを進めるために、水素・アンモニア・合成メタンへの転換が検討されています。これが改めて水素に注目が集まっている理由の1つです。

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産業用途の熱源として、2050年カーボンニュートラル化に向けて水素の活用が進んでいくことが予想されます。結果として、水素の供給が増加する可能性があります。

水素の供給が増加するならば、それを運輸部門すなわち自動車でも活用してはどうか、ということが自動車への期待となるのではないでしょうか。

轟木氏が登壇するオンラインセミナー「【基調講演・無料】脱炭素化に向けた水素エネルギ・eFuelの可能性と課題」は11月16日開催。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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