【ヨコハマ アイスガード7 試乗】やわな腰砕け感や不安定さが一切ない「頼れるスタッドレス」…野口優

ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ ヴェルファイア
ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ ヴェルファイア全 32 枚

スタッドレスタイヤの購入を検討する際、悩ましいのはその性能だろう。経験豊富な北海道や東北地方のオーナーなら、それなりに熟知しているのかもしれないが、それ以外の平地に住む人々にとっては毎年のように悩む、と以前とあるオーナーから聞いたことがある。

無論、筆者も同じ。特にここ数年は、関東でも突然のドカ雪に見舞われるなど、降雪を予想することすら難しいだけに深刻だ。しかも、オーナーによってはその都度、履き替えるのは面倒だからドライ路面でも安心できるスタッドレスタイヤを望みたくなる。

ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ GRヤリスヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ GRヤリス

実は今年の2月、北海道の旭川を中心に、横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ『アイスガード7』を試す機会に恵まれたのだが、これがまさに自分が思い描いていた理想の性能を有していたからご報告したい。何しろ雪上路のコントロール性に優れるうえ、氷上性能も不満なく、ドライ路面ではスタッドレスタイヤにありがちだった違和感すら覚えなかったほど。ましてやSUVやミニバンだけでなく、スポーツタイプなど様々な車種にまで対応している。

◆氷上性能は約4年キープ、バランスに優れたスタッドレス『アイスガード7』

ヨコハマ アイスガード7ヨコハマ アイスガード7

アイスガード7の特徴を簡単にお伝えするなら、謳い文句にもなっている“ちゃんと曲がる”“ちゃんと止まる”という本質的な部分を大きく進化させたということだろう。これまで横浜ゴムが培ってきた技術に加え、雪上や氷上での不安を少しでも払拭しようと、新素材を採用した「ウルトラ吸水ゴム」を開発。滑る原因とされる凍結路の上の水膜に対し、新たに採用した吸水スパーゲルによって吸水する。そして、ゴム内部で分散されたシリカの働きによって氷に密着させながら、氷や雪を噛むエッジ効果を発揮させるという。しかもナノレベルでのゴムのしなやかさを維持するよう劣化制御効果も含まれている。

実際、アイスガード7は、その前モデルとなる『アイスガード6』と比較して吸水力は107%を達成、ゴムの硬化を抑えたことで氷上性能は約4年もキープするというから驚きだ。エッジ量はアイスガード史上最大を誇り、イン側は雪上の発進や制動時に効果を発揮し、センターとアウト側は雪上でのコーナリング時のグリップと排雪に貢献したトレッドパターンを採用することで、トータルバランスに優れたスタッドレスタイヤを完成させた。

◆人馬一体のごときコントロール性に感動

ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ カローラツーリングで一般道を試乗ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ カローラツーリングで一般道を試乗

今回、はじめに旭川空港から試乗がスタートしたのだが、その時まず驚いたのは、ちょっと言い過ぎかもしれないが、従来の夏タイヤとさほど変わらない感触だった。車両はトヨタ『カローラツーリング』で、路面は雪道がほとんどだったものの、時折アスファルトと雪が所々で入り組むという状況下でもグリップは路面の変化に瞬時に対応するから安心感まで伴う。ゴ―&ストップを繰り返す街中でも安心して止まれたし、発進もスムーズそのもの。横浜ゴムによれば前作比で雪上制動及び発進は3%ほど向上しているというが、個人的な感触ではそれ以上にも感じられたのは事実だ。

そんな印象の良さは、旭川のテストコースでさらに確信へと変わっていった。ここではすべて前作のアイスガード6との比較が行われたのだが、トヨタ『ヴェルファイア』を使用した雪上スラロームでの安定感は特筆に値する。ミニバンゆえに重心も高く、こうしたテストでは不安定になりがちなところでも雪上路面と密着するかのように応答し、急に舵角を切り足しても急激に滑り出すようなことはなく、向かいたい方向へと自然と進んでいった。

ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ ヴェルファイアヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ ヴェルファイア

それに加えて比較的重い車両であるにも関わらず、止まるにもそれほど神経を使わずに済んだのも印象的だった。乗り心地も良くなっているようで、硬すぎず柔らかすぎないという絶妙なショルダー剛性も実現しているようだ。

しかし、もっとも感心したのはコントロール性。FR駆動を採る『GR86』とラリーに通じる本格派のAWDシステムを採用した『GRヤリス』を使用したスラロームでは、車両の本質を最大限に引き出すかの如く、面白いようにアクセルワークにも対応する。特にGR86はややオーバーステア方向にセッティングされているのが特徴だが、それを活かしてハイスピードでターンを繰り返しても急激にグリップ力を失うようなことは皆無で、しかも深くアクセルを踏み込んでテールスライドを試してみれば人馬一体の如くコントロールしやすく、安心して楽しむことができた。

ヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ GRヤリスヨコハマ アイスガード7を装着したトヨタ GRヤリス

◆やわな腰砕け感や不安定さが一切ない「頼れるスタッドレス」

これがGRヤリスでも同様の印象だったから、アイスガード7の吸水力は相当な効果を発揮していると実感。ましてやスタッドレスタイヤによく見られる、やわな腰砕け感や不安定さは一切ない。このテストコースに入る前に雪深いスキー場へと向かった際でも、これまで経験したスタッドレスタイヤの中で、もっとも安心して目的地まで向かえたかもしれない、と思えるほど圧雪路でも確かな制動力とコントロール性を見せてくれた。

これならベテランドライバーはもちろん、雪道に慣れていないオーナーにとってもお奨めできそうだ。最近はオールシーズンタイヤという選択肢も用意されているが、アイスバーンなど氷上のことを考えれば、やはりスタッドレスタイヤに軍配が上がるのは言うまでもなない。その中でもアイスガード7は、頼もしく思えるほど頼りになるスタッドレスタイヤだと思う。

ヨコハマ アイスガード7ヨコハマ アイスガード7

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

《野口優》

野口優

1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

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