ホンダ S2000 開発ストーリー、各部門の担当21人が語った

ホンダS2000
ホンダS2000全 10 枚

『ホンダ S2000』
リアルオープンスポーツ開発史
著者:車体開発責任者 塚本亮司/パワートレイン開発責任者 唐木徹 他共著
発行:三樹書房
定価:4950円
ISBN978-4-89522-785-8

ホンダ『S2000』誕生20周年を迎え、当時のホンダの最新、最高の技術によって開発されたスポーツカー誕生の様子を、当事者が語った1冊が刊行された。

真の上質を追求した“リアルオープンスポーツ”のコンセプトのもとに開発されたホンダS2000は、オープンスポーツカーとして日本のみならず海外でも人気となり、2009年に生産が終了した後も多くのファンが存在している。

本書では、S2000の企画の発端から開発の経緯に至るまでを、各部門の担当者21名が詳細に語っている。巻頭口絵ではデザイン開発の変遷を、貴重な資料も掲載して担当者自らが解説。さらにカラーカタログによるモデル変遷や、生産台数、年表なども収録して資料性も充実している。

2020年秋に企画がスタートしたという本書は、「当時開発に携わった技術者の面々が、それぞれの分野ごとに書くというスタイルだったため、その文章をわかりやすくすることと同時に、収録する写真や図版が社内資料のため、転載許可を得る作業が大変だった」と編集担当者は語る。しかし、本書は非常に読みやすく、さらにその図版はこれまで見たことのない試作モデルをはじめ、当時のデザインスケッチ、さらには設計概念図など、普段見ることのできない門外不出のものたちが次々と掲載されている。従って、それらを見て読み進めると、S2000がどのようなスポーツカーになりたかったのか、そして市販モデルではどう実現して行ったのかが、分野ごとに非常にわかりやすく理解できるようになっているので、その労は報われたといえよう。

ホンダS2000ホンダS2000

中でもエンジン開発においては当時の川本社長から「ホンダのメッセージとして世界にアピールするには、エンジンは切り良く行かなきゃな!」と、最終確認会での発言から240psから250psへパワーアップ、回転数も10000rpmを視野に開発することになり、まさに新たに開発をスタートしなければならなかった。そのときの心情を「評価会に出席していた開発チームは一瞬息を飲んだ」とそのときの気持ちを吐露している。

このようにそれぞれの担当ごとに、その時々の気持ちや目標に対する意気込みなどが素直に語られており、これは即ちS2000誕生に向けての情熱以外の何物でもないことが感じられる。開発ストーリーの多くが、淡々と事実を述べていくものが多い中で、本書は人間味あふれる物語となっている。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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