EV用電池には、コストダウンや効率化、容量拡大、安全性、リサイクルなど様々な課題がある。そこで車載用として注目を集めているのが次世代電池である「全固体電池」や「半固体電池」だ。
オートモーティブワールド2023では専門セミナー「全固体・半固体電池の進化と商品化」が開催され、専門家が研究成果や技術開発の道程、現状について語った。
国家の安全保障とも絡む重要な位置付けにある半固体電池
まず登壇したのは、米国「24M テクノロジー」(以下:24M社)の社長兼最高経営責任者 太田直樹氏。同社はマサチューセッツ工科大学出身の研究者が2010年に米国で立ち上げたベンチャー企業で、社員数は180人ほど。株主にはフォルクスワーゲンや京セラ、伊藤忠商事、GPSC/PTT(タイ)などが名を連ね、米国エネルギー省からは開発援助金を受けている会社でもある。
その太田氏は、半固体電池の電解質の研究・開発におけるキーマンだ。全固体電池については聞くことはあっても、半固体電池は初めて知ったという人も多いかもしれない。しかし、次世代電池としての半固体電池への関心は極めて高く、すでに国家の安全保障とも絡む重要な位置付けにある。特に自国での生産を臨むアフリカや南米、中東諸国からのライセンス契約を望む声が届いているという。
日本でも京セラと富士フイルムなど8社とライセンス契約を締結し、京セラとは共同で開発したクレイ型リチウムイオン電池として普及が進んでいる状況にあるそうだ。
では半固体電池とは何なのか。一般的に言えば、半固体電池はリチウムイオンの移動で使われている電解液をゲル状にしたものを指す。全固体電池のように電解液を固体化すると、内部抵抗が発生してスムーズなリチウムイオンの移動ができないなど課題が生まれるが、これがゲル状にすることで電解液を使った状態とほぼ同じリチウムイオンの動きが得られるという。その上で安全面では全固体電池のようなメリットをもたらすというわけだ。
半固体電池は数十GWhの生産能力が稼働見込み
そうした中で太田氏は24M社の半固体電池の特徴として、「見た目こそ一般的なリチウムイオン電池と変わらないように見えるが、電解質をつなぐバインダーを含んでいないことで電池の変形も容易になる」点を挙げる。これは電極に粘土状の材料を使ったことで実現したもので、太田氏は「これを厚く塗ることで電極数を少なくできるメリットが生まれた」とし、結果として「銅箔やアルミ箔と行った集電箔やセパレータの使用料を減らすことができた」と説明。