【トップインタビュー】中国車の日本展開に壁はあるか?「目標台数は掲げない」BYDの戦略とは…BYDオートジャパン 東福寺厚樹社長

BYDオートジャパン東福寺厚樹社長
BYDオートジャパン東福寺厚樹社長全 11 枚

1月末より『ATTO3(アットスリー、以下「アット3」)』を発売し、東名横浜の日本第1号店に続いて2月末には関西でもイオンモール堺鉄砲町で2店舗目を展開し始めたBYD。これら2店舗含め今後、同社の車の販売とサービスに名乗りを挙げたディーラーは全国33か所を数える。

日本にはEV専業メーカーとして上陸してきたにも関わらず、すでに札幌や福島、北陸といった寒冷地もカバーしており、2023年前半の開業予定は10数店舗ほどだが、来年2024年中にかけて開業予定の店舗が続々と控え、販売面におけるディーラー・ネットワークの存在感も加速度的に増すだろう。地理的に今のところ目ぼしい空白地帯は、日本海側の東北と九州と山陰地方のみで、四国や沖縄でも展開するという。

「店舗があって初めて(販売面で)ボリュームが出てくるという関係ですから、まずは開設準備室からできるだけ早く機会を、試乗していただける機会を作る。ここ東名横浜のように、やはり本当のショールームができて商談してもらうのが一番いいです。リアル店舗ができて初めて販売ができますから。まずはいかにリアル店舗をしっかりした形でクオリティ指定に沿って実現してもらうか、決まっているプランを進めて一日も早く開業していただく。それが2023年中の目標です」

と、BYDオートジャパンの代表取締役社長を務める東福寺 厚樹氏は述べる。2025年末までには全国100店舗以上を目指すことを、明らかにしている。

◆「数字のターゲットは設けていない」

その戦略を下支えするのは、一年足らずのうちに大中小が並ぶであろうBEVのラインナップだ。日本市場のローンチ・モデルで400万円台でミドル・セグメントといえるアット3に続き、BYDはBセグメント・スモールの『ドルフィン』を、さらにはDセグのハイエンド・セダンとなる『シール』も投入する。

前者は全長4290×1770×1550mmのハッチバックBEVで、欧州メーカーが昨今、市場投入を急いでいるBEVのコンパクト&スモールに競合する。バッテリー容量は44.9kWhと58.56kWhだ。後者は同4800×1875×1460mmというサイズにRWDとAWD、それぞれの駆動方式が用意されて82.56kWh容量のバッテリーが積まれる見込みで、テスラのモデル3のライバルといえるだろう。

「時期的には、2023年央にBセグのドルフィン、年後半にかけてDセグのシールの予定です。日本のEV市場は一昨年が約2万台だったところに、昨年2022年は5万9000台ですからほぼ3倍にまで伸びています。それでも(市場全体の)総需要に対してのボリュームとしてはまだ2%に届かないぐらいです」

まだまだEVの市場は規模感をもって拡がり始めたばかり、という見立てだが、今年も拡大するだろう市場の総量的な伸びの中で、BYDとしてはどのぐらいまで伸ばそうと考えているのだろうか。

「今のところ、特定の地域や顧客層をターゲットにしよう、販売台数で何万台を目指そうといった、数字のターゲットは設けてはいないですね。先ほども申し上げた通り、まずは店舗を開業してもらって販売体制を整え、地理的にもできるだけ広い地域をカバーするのが、目先の目標ですから」

◆販売会社が少ない投資でスタートできる体制を

BYDは今のところディーラー備えつけの急速充電器は50kW容量で、1基という状況だ。ここ最近の他社の体制と比べると少ない気もするが、東福寺氏はどのように考えているのだろう。

「確かにBYDは既存のブランドに比べて、まだ新規のブランドなので(車両を)保有(している)顧客がいないという現状があります。そこからすると、まずは販売した先のお客様が(店舗へ)サービスに来てくれてから必要になる、という順序ですから、最初から沢山の充電器を増やしても、他ブランドの方に来てもらうことはあるかもしれませんが、販売会社としてはあまり面白くはないですよね。最初は販売会社さんが少ない投資でスタートできるカタチで、台数が増えていった段階でよりしっかしした施設を整えてもらう。つまりステップアップしていくということです」


《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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