デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みとLCA対応の関係性
近年、テクノロジーの急速な発展に伴い、生産活動におけるデータの取得が容易となり、クラウド上の各種サービスを活用することで、データを使った価値創出も手軽にできるようになってきた。一方、LCAへの取り組み強化がビジネスの存続に大きな影響を与えることになり、製造業各社は情報開示やカーボンニュートラル実現のための対応に追われている。これら2つのメガトレンドは手段と目的の関係性にあり、並行して取り組みを行う必要がある。LCA対応の検討を行う際には、DXの活動への理解と投資は必要不可欠なのだ。
技術トレンドとしては、IoTデバイスの低価格化があり、これまで取得困難だった生産実績データがリアルタイムで収集できるようになった。また、クラウドサービスも発展して安価に使えるようになり、取得したデータを蓄積する環境も整ってきた。さらに、AIによる分析ツールが発達し、特別なエンジニアリングスキルを有していなくても高度な分析や将来予測が容易となり、それらのデータを使う価値創出も迅速にできるようになった。現在、このようなDXによる業務改革の取り組みが加速している(図1)。

実際にこうした取り組みによって、何が実現されるのだろうか。まずDXの提供価値としては、データ活用による顧客起点の価値創出があり、自社に目を向ければ、業務の効率化や生産性の向上がある。一方、環境負荷低減施策の視点としては、LCAによる顧客への公正な情報開示や温室効果ガス(GHG)排出量の削減(カーボンニュートラル)がある。
前述したように、このDXの提供価値と環境負荷低減施策の視点は、それぞれ手段と目的の関係性にあり、並行して取り組みを行っていく必要がある。
製造領域におけるカーボンニュートラル達成のためには、GHG排出量を正確に把握して収集できる環境整備を行い、目標達成に向けて戦略的に取り組む必要がある。
まず準備フェーズとして、全社目標に基づくGHG排出量削減目標の設定と、GHG排出実績把握のためのデータ収集と蓄積環境の整備が求められる。具体的な目標達成に向けた取り組みとしては、ファーストステップとして、エネルギー調達を含む物流最適化のためのアロケーションの検討など、ネットワークの最適化がある。