<新連載>[DSPを使えば音が変わる!]普及の歴史から「DSP」の存在意義を考察!

外付けの「DSP」を用いてシステムが組まれたオーディオカーの一例(製作ショップ:クァンタム<茨城県>)。
外付けの「DSP」を用いてシステムが組まれたオーディオカーの一例(製作ショップ:クァンタム<茨城県>)。全 5 枚

カーオーディオでは、サウンドチューニング機能が搭載された「DSP」が用いられることが多い。この点がホームオーディオとの大きな違いともなっている。当特集では、カーオーディオにてこれが使われる理由から、選び方や活用の仕方までを解説しようと試みている。

◆2000年代終盤に、ニュータイプの「DSP」が登場し…

前回の記事では、「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)」が使われるようになった黎明期の状況を説明した。そこで触れたように、デジタルタイプの本格的なプロセッサーが日本にて初登場したのは1993年だ。カロッツェリアが『カロッツェリアX』を誕生させそれに多機能な「DSP」が搭載されていて、以後徐々にこの認知が広まっていく。

そうして2000年代の前半には他社からもさまざまな「DSP」がリリースされ、この使用がカーオーディオ愛好家の間で一般化する。

なお2000年代の半ば頃までは、「DSP」は基本的にメインユニットと一体化しているか、別体化していても専用機である場合がほとんどだった。一部、汎用性のあるモデルもあったが、多くは同じメーカーの「メインユニット」と組み合わせて使うことが前提だった。

しかし2000年代の終盤に、「ハイレベルインプット」を備えた汎用タイプの「DSP」が登場し始める。というのもこの頃にはメインユニットを交換しづらい車種が増え始めていて、そうであるとシステムを発展させにくい。それを覆すためのものとして、このような「DSP」が力を発揮することとなる。

外付け「DSP」の一例(フォーカル・FSP-8)。外付け「DSP」の一例(フォーカル・FSP-8)。

◆「純正メインユニット+汎用外付けDSPシステム」という新たな形が誕生。しかし…

このニュータイプの「DSP」が登場した背景を、もう少し詳しく説明しよう。

当時はカーオーディオシステムをブラッシュアップしようとするとき、メインユニットの交換から入ることが多かった。まずは音の良いメインユニットを得て、その上でスピーカーを換えたり外部パワーアンプが追加されたりして、システムが拡張されていた。しかしメインユニットを交換できない車種では、スピーカーを換えるくらいはできるものの本格システムの構築は不可能だった。

でも「ハイレベルインプット」が備わっている「DSP」を使えば、純正メインユニットが換えられなくても、そしてそれに拡張性がなくてもシステムを発展させられる。純正メインユニットのスピーカー出力を「DSP」へと入力すれば本格的なサウンド制御が可能となるので、そこからスピーカー交換や外部パワーアンプの追加を行えば高音質システムを組み上げられる。

しかし……。「純正メインユニット」+「外付け汎用DSP」を核とするシステムは、“亜流”という印象が強かった。なぜならば、「純正メインユニット」の音質性能の天井が低いからだ。それを最上流に置いたままではシステム全体の音質性能のアップの限界値も低くなる。なので従来からのカーオーディオ愛好家の多くはそれでもなんとかして高音質タイプのメインユニットを導入し、それを核としてシステムを作り上げていた。

外付け「DSP」の一例(ヘリックス・DSP PRO MK3)。外付け「DSP」の一例(ヘリックス・DSP PRO MK3)。

◆「ハイレゾ音源」の登場で、「DSP」の使われ方が変化!?

しかし2010年代に入って数年が経過すると、またもや状況が大きく変わる。「ハイレゾ音源」が普及し始めたからだ。

この新たな高音質音楽データが鳴り物入りで登場し、これをカーオーディオでも満喫したいと考える愛好家が増えていく。ところが、カーオーディオではこれを楽しみづらかった。「ハイレゾ音源」の再生を可能とする「メインユニット」がなかなか登場しなかったからだ。なのでカーオーディオ愛好家は、「ハイレゾ音源」を再生できる「DAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)」を車内に持ち込み始める。

そのとき、外付けの「DSP」が重宝した。「DAP」と外付けの「DSP」とをデジタル接続しそれらを核とすると、これまでにはない新たな高音質システムを構築できる。

かくしてこのスタイルは、現在では高音質を徹底追求するときの有力な選択肢として定着している。

ところで2010年代に入った後には、それとは異なる新たな潮流も生まれた。AV一体型ナビにハイエンド仕様の「DSP」が組み込まれるようにもなったのだ。2012年に三菱電機から『ダイヤトーンサウンドナビ』がリリースされ、その後にはカロッツェリアからも『サイバーナビXシリーズ』が登場し、さらには『サイバーナビ』にもハイエンド仕様の「DSP」が搭載されることとなる。

また「パワーアンプ内蔵DSP」も台頭する。そのあたりの詳細については、次回の記事にて解説する。乞うご期待。

《太田祥三》

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