高速道路でのトラックの最高速度は引き上げるべきか?…物流2024年問題

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最高速度の引き上げを検討する理由とは?

7月26日、警察庁は「高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会」を設置し、その初会合を開催した。トラックの速度規制引き上げに向けた検討が正式に開始されたのである。

この速度規制引き上げをめぐる議論に対して、専門家やジャーナリスト、業界団体などから様々な賛否の声が上がっている。まさに「多事争論」と言うべき状況だ。

なぜ、速度規制の引き上げを検討しているのか。一言でいえば、「2024年問題対策」である。2024年4月、時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されることで、長距離トラックを中心に多大な影響を及ぼすことが懸念されている。2023年6月、政府は2024年問題対策を念頭に「物流改革に向けた政策パッケージ」を取りまとめたが、いくつもある具体案の1つとして「高速道路のトラック速度規制の引き上げ」を掲げた。要は、最高速度が上がることで目的地までより早く到着できるようになれば、その分だけドライバーの労働時間を削減できるというわけだ。

高速道路の最高速度は100km/h、一部区間では120km/hになっているが、大型トラック(8トン以上の中型トラック、トレーラーなどを含む)は80km/hに制限されている。この大型トラックに課された制限をなくそうという議論だと考えればよい。

その論点は、「安全」「負担」「効果」の3つに整理される。

安全: 速度規制を引き上げると事故が増えるのでは?

速度規制を引き上げるにあたっての一番の争点は安全性であろう。大型トラックの最高速度を80km/hに制限したのは、「貨物の積載状況によっては走行が不安定になる」「積載量に応じて制動距離が長くなる」「車両の重量が大きいため事故発生時の被害が重大化しやすい」といった理由があったからだ。


《小野塚 征志》

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。 ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。 内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、日本プロジェクト産業協議会「国土創生プロジェクト委員会」委員、ソフトバンク「5Gコンソーシアム」アドバイザーなどを歴任。 近著に、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル-80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。

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