なぜ2012-16年生産車なのか? トヨタ 86の『REFRESH SERVICE』について担当者に聞く

なぜ2012~16年生産「TOYOTA 86」なのか?『86 REFRESH SERVICE』について担当者に聞く
なぜ2012~16年生産「TOYOTA 86」なのか?『86 REFRESH SERVICE』について担当者に聞く全 4 枚

新車の販売台数が伸び続けているものの、大切な愛車に長く乗り続けるユーザーが増えている。平均車齢が9年となり、愛車に乗り続けるために補修部品(交換部品)を探したり、場合によってはレストアを検討するユーザーもいることだろう。

このような背景がある中で、トヨタ自動車株式会社と株式会社KINTOの両社は、クルマのオーナーに向けた愛車カスタム・機能向上サービス「KINTO FACTORY」の新メニューとして、ユーザーが所有する2012~16年生産のTOYOTA 86を対象としたリフレッシュサービス『86 REFRESH SERVICE』を2023年7月12日から開始。まずは東京・大阪・愛知・静岡のGR Garageの一部店舗からスタートし、将来的には全国展開を目指しているという。

どういった経緯で企画され、なぜ2012~16年生産のTOYOTA 86限定サービスなのか? トヨタ自動車株式会社の井上卓哉氏(サービス部 企画推進室 アップグレード事業推進G)と、株式会社KINTOの板東輝人氏(総合企画部)に詳しい話を聞いた。

「リフレッシュ整備」という新しい概念

「今までのトヨタのメイン事業は新車販売であり、購入後のお客様との接点は車検や定期点検整備、パーツ破損時の修理交換整備でした。一方で、1台のクルマに長く乗り続けられるお客様に、今後も安心して乗り続けて頂くために当社の技術と経験、ノウハウ、設備を活用した新しいサービスを模索する中で、低年式かつ高走行車を対象に、パーツなどが壊れていなくてもより良い状態に “ リフレッシュ整備 ” する、これまでなかった新たな概念のサービスを提供したいと考えました」とトヨタ自動車の井上氏は企画背景を述べた。

なぜ、2012~16年生産の「TOYOTA 86」なのか?

リフレッシュサービスを受けたいトヨタ車オーナーは数多くいると思われるが、対象車種が2012~16年生産のTOYOTA 86に限定されている。その理由を井上氏に尋ねた。

「リフレッシュ整備を行うことで、新車時と同様の乗り味(乗り心地)に生まれ変わったことを実感しやすい車種として、2012~16年生産のTOYOTA 86を選定しました。TOYOTA 86は “ 直感ハンドリングFR ” をコンセプトに、ドライビングの楽しさを追求したクルマとして発売したもので、MR-S以来のスポーツカーであり、トヨタとしても注目度の高い特別な車種です。

走りを追求した車種ゆえに、パーツが破損していなくてもエンジン内部の汚れやマウントゴムの劣化などで最適な状態がくずれてしまうと、TOYOTA 86の魅力であるハンドリングが損なわれてしまいます。

サービスのトライアルとしてGR Garage袋井(株式会社トヨタユーゼック)で中古のTOYOTA 86をリフレッシュ整備して販売した実績もあり、リフレッシュ整備で乗り味が大幅に改善することを確認しています。TOYOTA 86を愛車として、今後も乗り続けられたいお客様にご利用頂くことで、新車時の乗り心地に戻ったことをしっかり実感頂けます」

5つのコースと価格、保証

『86 REFRESH SERVICE』では5つのコースを用意。企画段階では、内装・外装のリフレッシュや限定車仕様、エンジンパワーアップなど幅広いサービスを検討されたが、それらを得意とする専門店が多数ある。自動車メーカーとして、走る・曲がる・止まるの3点と、走行性能にフォーカスし、“ 新車の乗り味に戻す ” 純正部品の提供に特化したコースに至ったという。

具体的には「エンジンリフレッシュコース」ではエンジン内部清掃と、点火系部品の交換で12万1000円。「マウントゴムリフレッシュコース」ではエンジンマウント、ミッションマウント、デフマウント、マフラークッションの交換で9万9000円。「足まわりゴムブッシュリフレッシュコース」ではアッパーサポート、ロアアームなどの交換で12万2100円。「ショックアブソーバーリフレッシュコース」ではショックアブソーバーの交換で16万3900円。「ブレーキリフレッシュコース」ではブレーキキャリパーO/H、ローター、パッド交換で12万5400円で、価格はすべて税込み。保証は、5コース共通で走行距離無制限で1年保証となっている。なお、ユーザーが専門店などでカスタマイズした車両でも基本的に対応可能とのこと。

WEB申込可能、店頭ではカウンセリングも

サービス対象となる、2012~16年生産のTOYOTA 86オーナーは、走りのコンディションに対するこだわりが強いことは想像に難しくない。オンライン受付が主体の「KINTO FACTORY」ではフォローが困難なユーザーもいるのではないか? その点について、株式会社KINTOの板東氏がこう回答してくれた。

「リフレッシュサービスをWEB上で販売するのは、これまでのKINTO FACTORYにない新たな試みです。WEBと店頭(GR Garage)という2つの申込方法のうち、利便性などを踏まえてご推奨しているのはWEBからのお申し込みになります。ですが、“カスタマイズ車両だけど施工できるか?” という、WEB上では解決できないご不安があるお客様についてはGR Garageでの事前のご相談をお受けしたうえで、お申込みを受け付ける体制を取っております。お客様の選択肢のひとつとして、施工作業予定のGR Garageで車両のカウンセリングを受けられるフローも用意しました。施工前にGR Garageに在籍するコンサルタントとしっかり話し合って、具体的なアドバイスなどを受けられる点は特別なメリットです。お車の状態や、希望される乗り心地を実現するには、社外品がよいのか、純正品がよいのかなど、プロの目線で踏み込んだアドバイスを行っています」

このほか板東氏は、7月のサービス提供開始以降、多数のユーザーから申込があり、施工作業がスタートしているという。また計画目標としては、対応可能店舗で月1~2台の受け入れを想定し、息の長いサービスとして継続していきたい考えがあると、トヨタ自動車の井上氏が回答してくれた。

『86 REFRESH SERVICE』は、自動車メーカーのトヨタだからこそ実現できる “ 純正の新品部品交換 ” を強みとし、生産から10年程度経過した車両へのアフターサービスに注力しはじめていることが、今回の取材でわかった。まずは12~16年生産のTOYOTA 86から始めつつ、ユーザーの反響も確認しながら、後期型や他車種への拡大も検討しているようだ。自動車メーカーが取り組むビジネスが、アフターの領域に拡大していることは、幅広い自動車アフターマーケット事業者が知っておくべき重要なトピックだろう。今後も車両の長期保有化が進む中で、カーオーナーが大切な愛車に長く乗り続けられるサービスが増えていくことを期待したい。

なぜ2012~16年生産「TOYOTA 86」なのか?『86 REFRESH SERVICE』について担当者に聞く

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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