ドッグフレンドリーカーのポイントを改めて考えてみた【青山尚暉のわんダフルカーライフ】

ドッグフレンドリーカーのポイントを改めて考えてみた
ドッグフレンドリーカーのポイントを改めて考えてみた全 37 枚

愛犬家ファーストのクルマ選びでは、愛犬を乗せ、快適にドライブできるドッグフレンドリーポイントの有無が重要だ。なにも考えずにクルマを手に入れ、実際に愛犬を乗せてみると、これじゃあ愛犬を乗せにくい、快適にドライブさせられない…なんていうこともあったりする。

ジャックラッセルのララジャックラッセルのララ

そこで、歴代のプードル、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、そして現在のジャックラッセル、キャバリアの愛犬と暮らし、週に2度は犬をクルマに乗せ、毎月のようにドライブ旅行に出掛けている自動車評論家にしてドッグライフプロデューサーの筆者のこれまでの経験から、ドッグフレンドリーカーに不可欠なドッグフレンドリーポイントをまとめてみた。

ドッグフレンドリーカーのポイントを改めて考えてみたドッグフレンドリーカーのポイントを改めて考えてみた

まず、聴覚に優れ、車内でどこかにつかまれない犬にとって、走行中の車内が静かで、乗り心地が良く、前後左右の姿勢変化が少ないことが第一ではないだろうか。クルマの姿勢変化に関しては、そもそも穏やかな運転が不可欠。ドライブモードにエコモードがあれば、それだけでも燃費の向上とともに、動力性能が穏やかになり、愛犬に優しい運転に近づく。

エコモードで愛犬に優しい運転エコモードで愛犬に優しい運転

愛犬の特等席は間違いなく後席だ。ステーションワゴンやSUVでは、ラゲッジルームに乗せることも可能だが、あくまでも荷物の置き場所であり、誰か(犬)が乗ることを想定していないスペースであり、乗り心地、騒音面で不利。どうしても、というなら、ラゲッジルーム全体にクッションマットを敷き(乗り心地と騒音の遮音に効果的)、エアコンの風が届くような配慮が必要になる。後席が4:2:4分割で倒せ、中央の2部分を倒すことで隙間を作ることで、飼い主とのアイコンタクトが可能になりエアコンの風も届きやすい車種であればOKだ。

ステーションワゴンやSUVでは、ラゲッジルームに乗せることもステーションワゴンやSUVでは、ラゲッジルームに乗せることも

話を愛犬の特等席となる後席に戻せば、1.後席フロアと後席座面が低めで、2.後席サイドに隙間がなく、3.後席の座面長がたっぷりあり(480mm以上が理想)、4.できれば汚れに強い撥水シート生地で、5.後席エアコン吹き出し口、または天井サーキュレーターがあり、6.前席に独立したヘッドレストが備わっている…というのがドッグフレンドリーポイントとなる。

具体的に説明しよう。

◆1.後席フロアと後席座面が低めであること

これは愛犬が自身で乗り降りする場合に重要。まずフロアに乗り、そこからシートに飛び乗る際、やはり高すぎると犬の足腰に負担がかかる。足腰が弱った高齢者と同様の乗降にかかわるポイントである。わが家のジャックラッセルのララ(13歳)はジャンプ力に優れた犬種だが、歳をとればそうもいかなくなる。1台のクルマを長く乗るのであれば、先を見越した車種選びが必要だ。

後席フロアと後席座面が低めであること後席フロアと後席座面が低めであること

◆2.後席サイドに隙間がないこと

愛犬を自身で、あるいは抱っこして後席に乗せるにしても、抜け毛の多いダブルコートの犬の場合、乗降時に抜け毛が落ちやすい。シート座面とシートサイドに深い隙間があるクルマだと、そこに落ちた抜け毛を掃除するのは大変。放置すれば車内の動物臭の原因になってしまう。車種によっては、シート座面とシートサイドの隙間部分をプレートで覆っているクルマもあり、そうした構造のクルマを選ぶと、掃除が楽になるというわけだ。

後席サイドに隙間がない後席サイドに隙間がない

◆3.後席の座面長がたっぷりある

愛犬を安全、快適に後席に乗車させるには、クレートやキャリーケース、ペットカートの車載可能なコットなどに乗せてあげるべきだ。わが家ではサークル状のベッド、またはペットカートのコットをベルトやチャイルドシート用のISOFIX金具を用いて後席に固定し乗せ、さらに飛び出し防止のために胴輪+リードを後席ヘッドレストステーにつないでいる。つまり、なんらかの安全な乗車用アイテムが必要になるわけだが、後席の座面が短いと設置が不安定になりがち。乗っている愛犬も落ち着かない。できれば後席シート座面はフラットで座面長が480mm以上あると、クレートやキャリーケースなどを安定して固定しやすくなるのである。

後席の座面長がたっぷりある後席の座面長がたっぷりあるISOFIX金具を用いて後席に固定ISOFIX金具を用いて後席に固定

◆4.撥水シート生地

一般的には採用されていないものの、軽自動車からミニバンまでのクロスオーバーモデル、ファミリーモデルに採用例があるのが、撥水シート生地。汚れや水気に強く、愛犬乗車との相性がいい。もっともこれは、撥水シートカバーを使うことで、どんなクルマでも対応できるポイントではある。

撥水シート生地撥水シート生地汚れや水気に強く、愛犬乗車との相性がいい汚れや水気に強く、愛犬乗車との相性がいい

◆5.後席エアコン吹き出し口の装備

犬は1年中毛皮を着ており、暑さや湿気が苦手な生き物だと言われている。最適な生活温度は20~22度とも。とはいえ、車内は言ってみれば鉄板とガラスに囲まれた温室のような空間だ。暑い時期、犬にとってエアコンの冷風、除湿効果は熱中症対策にもなり不可欠。しかし、エアコン吹き出し口が前席のダッシュボードのみにしかないと、冷風がなかなか後席に届かない。そこで有用なのが、後席エアコン吹き出し口だ。セダン、ワゴン、SUVなどではセンターコンソール後端に、ボックス型ミニバンなら2/3列目席の天井左右(新型トヨタアルファードは天井中央に)にあり、後席でも1年中、快適な空調環境が手に入る。

後席エアコン吹き出し口後席エアコン吹き出し口冷風、除湿効果は熱中症対策にも冷風、除湿効果は熱中症対策にも

さすがに軽自動車ではコスト的に後席エアコン吹き出し口は付けられないが、例えば三菱『デリカミニ』、日産『ルークス』、スズキ『スペーシア』『スペーシアギア』などには天井にサーキュレーターが備わり、ダッシュボードのエアコン吹き出し口から出た冷風を取り込んで後席へ拡散してくれる空調効果がある。実際、気温30度を超える日にデリカミニでドライブ旅行に出掛けたが、後席も涼しく快適だった。後席エアコン吹き出し口または後席用天井サーキュレーターもまた、ドッグフレンドリーカーとして欠かせない装備と言える。

天井のサーキュレーター天井のサーキュレーター

これに愛犬の特等席となる後席のサイドウィンドウ部分に日差しを遮るロールサンシェード(ロールブラインド)が備われば、なおいい。日差しによる車内温度上昇の抑制に効果を発揮する。

日差しを遮るロールサンシェード(ロールブラインド)日差しを遮るロールサンシェード(ロールブラインド)

◆6.前席に独立したヘッドレストが備わっていること

「なぜ」と首をかしげるかもしれないが、これは、前後席のヘッドレストにロープで固定する後席用ペットシートマット、サークルを装着する際に関して、ヘッドレストステーがあることが前提だから。

ロープで固定する後席用ペットシートマットロープで固定する後席用ペットシートマット

例えば、VWの後席用ペットアクセサリーのドライブベッドも前後席のヘッドレストステーにロープで固定するのだが、適応として、前席がスポーツタイプのヘッドレスト一体型シートでは使えないのである。もっとも、ペットカートのコットをISOFIX金具で固定するような使い方なら、前席がヘッドレスト一体型シートでもまったく問題ない。

VWの後席用ペットアクセサリーのドライブベッドVWの後席用ペットアクセサリーのドライブベッドISOFIX金具で固定なら、ヘッドレスト一体でも問題なしISOFIX金具で固定なら、ヘッドレスト一体でも問題なし

と、以上がドッグフレンドリーカーに求められる基本的かつ後席部分のドッグフレンドリーポイントの一例である。

続いて、大型犬などをラゲッジルームに乗せざるを得ないケースでのラゲッジルームのドッグフレンドリーポイントを紹介する。7.ラゲッジルームの開フロアが低く、開口部に大きな段差がなく、8.ワゴン、SUVタイプなら後席が4:2:4分割であることだ。

ラゲッジルームのドッグフレンドリーポイントラゲッジルームのドッグフレンドリーポイント

具体的に説明しよう。

◆7.ラゲッジルームのフロアが低く、開口部に段差がないこと

大中型犬が自身で乗り降りする場合、やはりラゲッジルームのフロアは低いことに越したことはない。ちょっと高めの車種で、今、愛犬が強脚を発揮して無理なく飛び乗れ、飛び降りることが可能でも、歳をとればそうもいかなくなる。重い荷物の出し入れを含め、ラゲッジルームのフロアは低いほうが使いやすいのだ。世界のワゴンのラゲッジフロア地上高の平均値は600~630mm。SUVになるといきなり700mm前後になる。また、開口部に大きな段差があると、犬の乗降時に足を引っかけ、怪我をする可能性もある。ラゲッジフロアに愛犬を乗せるのであれば、開口部段差がなるべくないクルマを選びたい。

ラゲッジルームのフロアが低く、開口部に段差がないことラゲッジルームのフロアが低く、開口部に段差がないこと

筆者はVW『ゴルフヴァリアント』に乗っているが、歳をとった大型犬のラブラドールレトリーバーのマリアのために30mmのローダウンを行い、ラゲッジルームの開口部地上高を標準の630mmから600mmに落としている。※下の画像の右が標準状態。左がローダウン後。

右が標準状態。左がローダウン後。右が標準状態。左がローダウン後。

◆8.ワゴン、SUVタイプなら後席が4:2:4分割

国産ユーティリティカーの後席は6:4分割がほとんどだが、欧州車の多くは4:2:4分割。中央の2部分のみアームレスト代わりに倒すことでそこに隙間ができる。すると、ラゲッジフロアに愛犬を乗せたとしても、アイコンタクトがしやすい上にエアコンの風も通りやすく、犬はより安心快適にラゲッジフロアに乗っていられることになる。

ワゴン、SUVタイプなら後席が4:2:4分割ワゴン、SUVタイプなら後席が4:2:4分割

そして、愛犬を後席に乗車させる前提なら、9.リヤドアはスライドドアが、10.駆動方式は4WDが理想。さらに言えば、ハイブリッド、PHEVなどの電動車に用意される11.AC100V/1500Wコンセントもあると、クルマのドッグフレンドリーカーとしての資質が一気に高まる。

三菱 デリカミニ三菱 デリカミニ

◆9.スライドドアが愛犬の乗降に最適

愛犬を後席に乗せる際、より快適に、スムーズに乗り降りさせるには、スライドドアが適切だ。スライドドアは車体の横にスペースがない場所でも全開にでき、なおかつ犬が真正面に向かって乗り降りすることができるからである。リヤヒンジ式ドアだと、駐車環境によってはリヤドアを全開にできず、狭いスペースから人や犬が乗り降りすることになる。そして犬がジャンプして乗り降りするにも、間口が広く、真っすぐにジャンプできるスライドドアのほうが安全で快適なのである。

トヨタ シエンタトヨタ シエンタスライドドアが愛犬の乗降に最適スライドドアが愛犬の乗降に最適

◆10.駆動方式は4WDが理想

犬が喜ぶ場所は往々にして大自然の中にあり、時には道なき道をドライブすることもある。オールラウンダーなSUV、クロスオーバーモデルなら、その走破性の高さから一歩先まで安心安全に踏み込めるのだ。そして重要なことは、天候、路面に左右されずにドライブに出掛けられること。例えば、冬のドライブでは予想に反して天気が雪模様ということもある。雪道に不慣れなドライバーだと、運転を躊躇するだろう。最悪、雪道の運転に自信がないからドライブ旅行中止…ということにもなりかねない。ところが、走破性に優れた、スノーモードもあるような4WDであれば、そうした天候、路面悪化によるハードルは一気に下がる。もしかすると、雪道の運転ってこんなに楽しいの…なんてことにもなったりするかもしれない。

雪道の運転ってこんなに楽しいの雪道の運転ってこんなに楽しいの

犬の犬生は人間より遥かに短い10年から15年。その短い犬生の間にいかに多くの家族との楽しく記憶に残る思い出を作ってあげられるかが飼い主の使命だとしたら、全天候型のオールラウンダーなクルマは、まさに愛犬を幸せにできうるドッグフレンドリーカーとして相応しいことになる。

三菱 エクリプスクロス三菱 エクリプスクロス

ちなみに4WDと聞いて、背が高く大きいSUVが思い浮かぶかもしれないが、例えば悪路や雪道にめっぽう強くても比較的コンパクトで扱いやすく、車高も低いスバル『クロストレック』(旧XV)のようなクルマもあり、大柄なクルマが苦手なドライバーでも安心である。

スバル クロストレックスバル クロストレック

◆11.AC100V/1500Wコンセント

ハイブリッド、PHEVなどに用意されるのがAC100V/1500Wコンセント。車内外で1500Wまでの家電品、例えば湯沸かしポット、簡易電子レンジ、照明などが使える。ドライブ先で眺めのいい安全な場所にクルマを停めて、コーヒーを淹れパンを暖めれば、そこが誰にもジャマされない”どこでもドッグカフェ”になったりする。災害時には電源車としても機能し、避難所に愛犬同行避難はできても、愛犬といっしょに屋内にいられる愛犬同伴避難ができない状況では、車内がAC100V/1500Wコンセントによる電源付きの“愛犬同伴マイ避難所”として使えることになる。

誰にもジャマされない”どこでもドッグカフェ”に誰にもジャマされない”どこでもドッグカフェ”にAC100V/1500WコンセントAC100V/1500Wコンセント

以上の10項目のすべてを満たせば理想的だが、そのすべてでなくても、それぞれの愛犬家と愛犬の優先順位上位が満たされれば、立派なドッグフレンドリーカーになるだろう。ぜひ、家族と家族の一員である愛犬が納得できる理想的なドッグフレンドリーカーを選んでいただきたい。

青山尚暉氏と愛犬のララ青山尚暉氏と愛犬のララ

《青山尚暉》

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