【メルセデスベンツ EQE SUV 新型試乗】EクラスのSUVと考えれば決して高価ではない…諸星陽一

メルセデスベンツ EQE SUV
メルセデスベンツ EQE SUV全 10 枚

メルセデスベンツはバッテリーEVのラインアップの豊富さでも、リーダー的存在となっている。そんなメルセデス・ベンツ日本のEVラインアップのなかでも、上位モデルとなる『EQE』のSUV版を試乗した。

上位モデルといっても最上位にはマイバッハがあり、その下には『EQS』があるので、今回試乗したEQEは上から3番目となるモデルである。しかしながら、価格はベーシックモデルである「EQE 350 4MATIC SUV ローンチエディション」で1369万7000円。上位グレードとなるメルセデスAMG「EQE 53 4MATIC+ SUV ローンチエディション」は1707万円なので、まあ上位モデルと呼んで問題ないだろう。

試乗日はあの台風13号が関東に接近していたタイミング。乗るべきか否か、ずいぶん迷ったのだが結局乗ることにした。撮影メインの取材であれば、リスケするのだろうが、条件が悪いときに乗ったほうが分かることもあるので、あえて試乗に踏み切った。

◆冷静に考えるとかなり大きなボディも、四輪操舵でスイスイ

メルセデスベンツ EQE SUVのインパネメルセデスベンツ EQE SUVのインパネ

EQE SUVに乗り込むとなんだかスッキリしたインパネが目に入る。以前試乗した『EQS SUV』はダッシュパネル全面をクリアなパネルで覆いその中に3枚の液晶パネルを配置してある、MBUXハイパースクリーンが装備されていたが、このEQE SUVはステアリングの奥とセンター部分に独立した液晶パネルを配置。見慣れたクルマらしい風景で安心感がある。

EQS SUVではMBUXハイパースクリーンがEQS 580 4MATIC SUVスポーツに標準、EQE 450 4MATIC SUVにオプションという扱いだが、今回試乗したEQE 350のローンチエディションにはオプション設定なし、上級モデルのAMG EQE 53は標準設定である。MBUXハイパースクリーン先進感はとてもあるのだがくどさを感じる。どこまで濃い味がいいかはユーザーの好みだろうが、私は今回のインパネ程度の濃さで十分である。

メルセデスベンツ EQE SUVメルセデスベンツ EQE SUV

ボディ外寸は4880×2030×1670(mm)。ホイールベースは3030mmと冷静に考えるとかなり大きなボディ。ところがこれがリア・アクスルステアリングと呼ばれる四輪操舵システムのおかげで取り回しはいい。何しろ低速時は最大10度まで逆位相にステアし、最小回転半径は4.8mで3mを超えるホイールベースを持つ4WDとは思えないレベル。もちろんボディオーバーハングもあるので気を付けないと巻き込んでぶつけることになるが、コーナーセンサーなどが助けてくれるので、焦って突っ込まなければこの小回り性のよさを生かした取り回しが可能だ。

雨の高速道路でも走りは安定している。EQE SUVの車重は2.5トンを軽く超える2630kg。この車重によってタイヤがしっかりと路面に押しつけられるので、タイヤがしっかり排水しグリップを稼いでいる。車重は軽いほど走りに有利だと言われるが、ヘビーウエットの路面では、車重の重いことが優位に働く。もちろん制動距離や、コーナリングスピードは落ちるが、初期のブレーキングや加速時のトラクションに関しては車重の重いほうが有利。また、コーナリングについても中速以上では正位相に転舵するリア・アクスルステアリングが装備されるおかげで、リヤタイヤのスリップアングル(クルマの向きとタイヤの向きの差)が抑えられ、スタビリティは増している印象がある。

◆EクラスのSUVとして考えれば決して高い価格ではない

メルセデスベンツ EQE SUVメルセデスベンツ EQE SUV

試乗時、なによりも興味深かったのがエネルギーモニターを表示して走っている際の駆動輪の切り替わりだ。エンジン時代はフロントにエンジンを積みリヤタイヤを駆動するFRや、フロントエンジン・フロントドライブのFFといった考えがあった。これはエンジンという重量物をどこに積むかで、重量配分が変わりそれによってクルマの特性が大きく左右された。EVの時代となり重量物はバッテリーとなり、それは床下に敷き詰められることが当たり前となった今、駆動配分の制御は大きく変わった。

エンジン車の時代は4WDと2WDが切り替わる場合でも、前後輪の駆動力配分が0対100~50対50や、100対0~50対50のように後輪駆動から4WD、前輪駆動から4WDというような切り替わりだった。しかしEVでは前輪駆動、4WD、後輪駆動と駆動力の配分が自由にそして即座に切り替えられるようになった。つまり、前輪駆動が有利なときは前輪駆動、後輪駆動が有利なときは後輪駆動と、自在に切り替わるのである。エネルギーモニターを確認しながら走ると、駆動輪がめまぐるしく切り替わっているいることがわかる。ちょっとでも登り勾配ならば後輪駆動になり、下り勾配になると駆動をカットしコースティング状態になる。コースティング状態からアクセルペダルを踏むと前輪駆動、さらに踏めば4WDとなって加速する。

今までのEQシリーズでも同様の制御が行われていたが、EQE SUVでは後輪駆動となった際に前輪とモーターの接続を切り離して抵抗を減らすたディスコネクトユニット(DCU)というシステムが採用された。DCUはクロスカントリー4WDに採用されるフリーホイールハブに似ている機構だが、フリーホイールハブがドライブシャフトの回転もカットするのに対し、DCUの場合はドライブシャフトは回転する。ただし、フリーホイールハブでは難しい1秒以下での断続制御が可能である。

試乗時の電費は5.4km/kWhであった試乗時の電費は5.4km/kWhであった

細かい制御によって、少しでも電費を上げてようという目論見だ。今回の試乗では走行抵抗が大きい豪雨のなか、それもいろいろと試しながらでありながら5.4km/kWhの電費を記録した。電費性能は十分に実力があると言える。

絶対的な価格としては高めなのだが、メルセデスのEクラスSUVとして考えれば決して高い価格設定ではなく、ハイブランドを求める購買層にはマッチしそうである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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