THKのEVプロトタイプにはどんな技術が詰まっているのか?…ジャパンモビリティショー2023

THKが出展した、EVクロスオーバーのプロトタイプ『LSR-05』(ジャパンモビリティショー2023)
THKが出展した、EVクロスオーバーのプロトタイプ『LSR-05』(ジャパンモビリティショー2023)全 20 枚

機械部品メーカーのTHKは、ジャパンモビリティーショー2023に初出展。EVクロスオーバーのプロトタイプ『LSR-05』や、同社のボールねじ技術を活用した自動車部品などを展示し、注目を集めた。

◆意欲的なEVプロトタイプ『LSR-05』、デザインにもこだわり

THKは、直動システム、メカトロ関連製品、自動車部品、免震システムの開発・製造・販売を行っている機械部品メーカーで、特にボールねじを利用した各種部品での知見が深い。ボールねじとは、ねじ軸とナットを組み合わせて回転運動を直線運動に変換する部品で、アクチュエーターには広く用いられている。また自動車部品としては、サスペンションに使われるリンクボールとロッドエンドで世界トップクラスのシェアを持っており、さまざまな自動車メーカーに採用されている。

今回の出展では、ブースの真ん中にEVクロスオーバー LSR-05 が設置され、存在感を発揮している。このプロトタイプは、THKが独自開発したEV向けの各種先進技術を搭載し、同社の技術力をアピールするものだ。デザインは、日産のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めた中村史郎氏が率いるSN DESIGN PLATFORMが担当した。

THKが出展した、EVクロスオーバーのプロトタイプ『LSR-05』(ジャパンモビリティショー2023)THKが出展した、EVクロスオーバーのプロトタイプ『LSR-05』(ジャパンモビリティショー2023)

パワートレインは、リアにインホイールモーターを2基、フロントにはモーターを1基搭載、さらに同社が試作中のアクティブサスペンションや、磁性体を流体に用いたMR流体減衰力可変ダンパー、電動ブレーキ、非接触給電システムを搭載した意欲的なコンセプトカーだ。

MR流体減衰力可変ダンパーMR流体減衰力可変ダンパー

◆フロアの上を滑るようにスライドするシステムの秘密

また、室内のシートスライドに搭載したステルスシートスライドシステム「SLES」は、シートレールを露出することなく、フロアの完全なフラット化とシートスライドのロングストロークを可能とした製品だ。

ステルスシートスライドシステム「SLES」ステルスシートスライドシステム「SLES」

同社執行役員 産業機器統括本部 商品企画統括部長の飯田勝也氏は、特に注力している製品として、ステルスシートスライドシステム「SLES」を挙げ、以下のように説明した。

「シートレールは車室内で意外と目立ち、足元で引っかかって邪魔になったりホコリやごみが溜まって汚くなったり、ストレスの元になる。このステルスシートスライドシステムは、シート足元のカバーの内側にLMガイド(直動案内)が配置されており、レールが外側に露出しない構造になっているのが特徴だ」

実際の製品を見たところ、いわゆるシートレールや溝のようなものは何もなくフロアは完全にフラットになっている。シートが前後する様子は、フロアの上を滑って移動しているように見える。

ではどのようにロングスライドを可能にしているのか。フロアに接合した直動アクチュエーターが、シート側に装着されたレールを前後にスライドさせ、さらに座面下にも同じ組み合わせが装備されており、それぞれがスライドすることで大きなストロークを実現しているのだ。これによって、コンパクトな設置面積でありながらロングストロークが可能となっている。

ステルスシートスライドシステム「SLES」ステルスシートスライドシステム「SLES」

「この製品はすでに航空機の上位クラスのシートに採用実績があり、厳しいテストに合格している。特に航空機の耐G要件は非常に厳しいので、自動車向けにも採用していただける可能性はあると考えている。特に内装がとてもスッキリするため、高級車に適していると思う」と飯田氏は今後の展開について説明した。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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