トヨタ、新電池搭載による3台のコンセプトモデルを提案、レクサスは2026年発売予定…ジャパンモビリティショー2023

トヨタ自動車のジャパンモビリティショー2023出展車
トヨタ自動車のジャパンモビリティショー2023出展車全 35 枚

トヨタレクサスジャパンモビリティショー2023(以下JMS)に新電池を搭載することで可能となったパッケージをベースにした3台を出展。その特徴やデザインについてそれぞれの担当者に語ってもらおう。

◆BEVの新たなデザイン価値の提案

新電池とは低ハイトかつ高エネルギーを実現するもので、バッテリーEVの進化を担う大切な技術だと紹介するのは、トヨタBEVファクトリープレジテントの加藤武郎氏だ。「この低ハイト電池と周辺コンポーネント等の小型化により、唯一無二のスタイリングを実現する」と述べる。さらにこの新電池は、「従来の性能を向上させ、航走距離は1000km。充電時間は20分」とのこと。

特に小型コンポーネントになることで、「クルマの形を変える。つまりこれは、小は大を兼ねるということだ」。BEVは、車両の中央床下に電池があるため、航走距離を伸ばそうとすると、電池の搭載量を増やさなければならない。そうすると、ホイールベースが伸びるなど様々なデザイン的制約が起きてしまう。

しかし、この新電池では航続距離の目標値に対して、これまでよりも電池の搭載量を減らすことが可能になるのだ。従ってホイールベースを短縮でき、全長をダウンサイジングすることができるわけだ。

その提案として今回セダン、SUV、スポーツカーそれぞれの提案モデルが公開されたのである。

レクサスLF-ZCレクサスLF-ZC

◆トップバッターとして低く格好良いセダンを…レクサスLF-ZC

まずはレクサス『LF-ZC』だ。2026年の市販化に向けて開発が進んでおり、この新電池を含む新しいプラットフォームのトップバッターとしてデビューすることが決まっている。

そのデザインの特徴について、レクサスインターナショナル レクサスデザイン部長の須賀厚一さんは、「パッと見ときに、あ、格好良いとか、心を揺さぶるような、速そうとかスポーティとか、常識に囚われないようなものをBEVだからこそやろうとした」と話し始める。「やはり低くて格好良い。クルマの格好良さはそこにある」とし、従来のBEVでは、「バッテリーの下駄を履かせたような印象(腰高感)があると思うが、今回は本当に薄いバッテリーをエンジニアが頑張って作ってくれているので、その低さを徹底的に生かしたデザインにした」と語る。

特にBEVでは空気抵抗は航続距離を考えるために重要だ。そこで、「空気の流れとそれを受ける全面投影面積をどれだけ小さく出来るかがキー。なのであえて全高を低く抑えるとことにチャレンジした。そうすると前後に人を乗せることを考えると必然的にフォルムの流れが流線型、イルカやシャチのようなきれいな流れを作る。それが結果的にタイヤを際立たせるという、非常にエモーショナルな造形になっている」と説明してくれた。

トヨタFT-3eトヨタFT-3e

◆SUVでも新ジャンル開拓を…トヨタFT-3e

続いてはSUVのトヨタ『FT-3e』だ。このメカミニマム、マンマキシマムの新しいプラットフォームの概念をSUVに搭載するとどう変わるのかというデザイン提案だ。

そのデザインコンセプトについて、トヨタデザイン本部の鈴木勝博さんは、「SUVですのでまず悪路走波性をしっかり担保したい。そこでSUVらしい大きなタイヤと、SUVとして必要な地上高(約200mm)、そしてしっかりそれをキープした上で、その上にLF-ZCのような薄いボディを乗せることで新しいジャンルのSUVを表現した」と述べる。

そのデザインの中で特徴は大きく2つ、ドア周りとフロントフェンダー周りだ。鈴木さんによるとドアの断面は、「『ランドクルーザーSE(JMSに出展)』のドア断面と同じように、その記号性を拾っている。これはトヨタのSUVのDNAをこういうスタイルだからこそ取り入れて、これはトヨタのSUVだと分かるようにドアの一番大きなところで表現した」。

フェンダーは、「タイヤを包み込んでいて、その全幅と相まって。かなり豊かな面作りをしている。この新しいプラットフォームはサスペンションの高さを低く押さえることができたので、よりフェンダーをボンネット側に倒すことができている」と説明。そうしながら、フロントマスクを挟み込むように造形した。さらに近年のトヨタ車の象徴でもあるハンマーヘッドのフロントモチーフも「デジタルのようなランプにしており、そのランプとハンマーヘッドをセットにして、新しいハンマーヘッドを提案。この象徴的なハンマーヘッドをフロントフェンダーでグッと抱きかかえた感じの造形をしている」とのことだった。

トヨタFT-SeトヨタFT-Se

◆新時代のスポーツカーは新フォルムで…トヨタFT-Se

最後はスポーツカーFT-Seで、四駆のBEVを想定したコンセプトモデルとしてGRからの提案だ。トヨタGAZOO Racing Company GRデザイングループ主幹の飯田秀明さんは、「いかにスポーツカーとして低く作るかがこのカテゴリーでは大事。さらにそれをお客様からパッと見て貰える意匠にしたかった」とコメント。

同時に、「スポーツカーはかっこよくて、速くないとお客様に乗ってもらえませんし、買ってもらえません。そこが一番重要なポイント。それをいかに電気の時代として、新しい低ハイトのバッテリーを使って新しく見せるか。『スープラの2470 mmよりも僅かに長い2650mmというホイールベース、そしてショートオーバーハングによって、電気になった新しいスポーツカーの提案だ」と語る。

その特徴は、「エンジンがないことによって生まれる新しいフォルム。それは、ボンネットが低くてフェンダーがそれよりも高い位置にあり、カウルよりもベルトラインよりもタイヤが高い位置にある。これは運転したときにレーントレース性も良く、意匠的にもパワーを表現できた」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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