「何にでもなれる自由な存在」グランドクロスオーバー、スズキ『GSX-S1000GX』の凄みとは

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スズキ GSX-S1000GX
スズキ GSX-S1000GX全 66 枚

2024年1月に発売されたスズキのニューモデル『GSX-S1000GX』に試乗。スポーツツアラーの運動性と、アドベンチャーの快適性を併せ持った昨今人気のカテゴリー・クロスオーバーの実力を、あらゆるステージで堪能した。

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

2月、早朝、東北自動車道、北へ。ライダーにとって、もしくはツーリングにとって、なかなか厳しい条件が揃ったものだ。おまけに、低く垂れ込めた曇から落ちる雨粒は、一向に弱まる気配がない。パールマットシャドーグリーンと呼ばれる深緑の車体は、ともすれば黒に見えるほど、空模様は暗たんとしている。

いつもなら、少なくとも普通のスポーツバイクだったなら、早々に計画を変更するか、中止するところだが、大型スクリーンとナックルカバーがもたらす、いかにも自信ありげな耐候性に望みを託すことにした。そしてなにより、クロスオーバーなるカテゴリーが、どんな世界を見せてくれるのか。それが気になり、ゴアテックスの上下で身支度を済ませた。

◆全方位的なパフォーマンスを誇るグランドクロスオーバー

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

GSX-S1000GXは、アグレッシブなスポーツライディングも、コンフォートなロングツーリングもこなす、「グランドクロスオーバー」を標榜する。全方位的なパフォーマンスを一台に集約し、あらゆるカテゴリーを自由に、そして軽々と行き来できる万能のモデルとして誕生した。4輪になぞらえると、フルサイズのSUV(Sport Utility Vehicle)が最も近しい。

SUVとは、大半の場面では快適な移動空間を提供し、それでいて、然るべき状況ではタフなギアとなる多目的車を指す。したがって、GSX-S1000GXも同様だ。スポーツツアラーとしての機能が強化されたGSX-S1000GTと、アドベンチャーならではの走破力を持つVストローム1050の要素が巧みに組み合わされている。

事実、前後サスペンションのトラベル量、車重、ライディングポジションといった諸元は、両モデルの狭間にあり、GSX-S1000GTよりはおおらかに、Vストローム1050よりは俊敏に走れる要素が散りばめられている。

◆厳しい条件下でもストレスのない走り

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

シート高は830mm、車重は232kg、アルミツインスパーフレームに懸架されているのは、998ccの直列4気筒エンジンだ。つまり、歴然とビッグバイクではあるが、そのたたずまいは、スポーツツアラーほど重々しくなく、アドベンチャーほどの威圧感を伝えてこない。足は長く、上背はあるものの、体型はすっきりとスマートだ。

やせ型に見えるその印象の通り、着座するために車体を跨ぎ、足を上下させても妨げるものはない。ステップからブーツを離せば、ごく自然な位置に地面があり、いざ走り出せば、腿や膝が燃料タンクにぴたりとフィット。すでに定番にもなった、ローRPMアシスト(発進時のエンジン回転数の落ち込みを抑制する)の恩恵も手伝って、低速低回転域でも緊張感なく、操ることができる。

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降雨予報はどんどん後ろにずれ、回復を待っていても仕方がなさそうだ。途中のパーキングエリアでひと休みした後、そのまま走り続けることにしたが、存外それは苦痛な時間にはならなかった。スクリーンとナックルカバー、そしてアッパーカウルは雨をたっぷり受け止めながらも、躰の手前では大半がカットされ、風とともに後方へ流れていく。

2月の高速巡航である。30分も経たないうちに温かいコーヒーが欲しくなり、かじかんだ手、強張った肩や首から気を紛らわすために声をあげたくなるのが常ではあるが、GSX-S1000GXにそのストレスはない。車上に身を委ねながら、粛々淡々と距離を重ねていくことができた。

◆その存在を忘れてしまうほどの電子制御との絶妙なバランス

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

やがて高速道路を降り、街中を抜け、濡れそぼった峠道へ車体を向ける。荒れた舗装、路肩に積もった枝葉、斜面から流れ出した泥濘……と路面状況が悪化する中でも頼もしさは変わらず、それらを事も無げにさばいていく。

その様があまりに静謐で忘れていたが、途中「あぁ、そうだった」と独り言つ。車体の隅々にまで張り巡らされた電子デバイスがフル稼働し、ライダーにそれと気づかせないまま、明瞭なタイヤの接地感と安定に富むラインのトレース性を引き出してくれていたからだ。

今回、初めて採用された電子制御サスペンション「S.A.E.S.」の役割はもちろん大きい。車体姿勢、車速、サスペンションストロークの量と速度、加減速Gなどの変化に応じて減衰力が自動調整される他、アクセルポジションにも紐づく独自のシステムをスズキは構築。これらは、「SDMS-α」と呼ばれるライディングモードと連動し、エンジンの出力特性やトラクションコントロールも含め、常に最適化された乗り心地と優れたスタビリティを提供してくれる。

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では、すべてが電子制御でがんじがらめなのかと言えば、そんなこともない。既述の通り、その主張は控えめだ。これに関しては、開発ライダーを務めた田畑 廉氏が話してくれた、次の説明と合致する。

「電子デバイスのテストは、理屈と実走を切り分けて考える必要があります。制御に軸足を置くと、それありきのバイクになってしまい、本来備えているべき素の良さが失われていくからです。ライダーの操作を邪魔せず、いかに楽しさとバランスさせるか。そこに注力し、日本はもちろん欧州の環境下でもテストを重ねて作り込みました。GSX-S1000GXに乗っていると、無意識のうちにコントロールしている状態が続きます。高い一体感を感じられるモデルになっており、GSX-Sシリーズのフラッグシップとして自信を持って送り出すことができました」

◆何にでもなれる自由な存在。それがGSX-S1000GX

スズキ GSX-S1000GXスズキ GSX-S1000GX

電子デバイスのメニューは凄まじく多岐に渡り、きめ細やかだ。しかしながら、シンプルなインターフェイスと6.5インチのフルカラーTFTディスプレイのおかげで、その切換や選択は走行中も迷わず操作することができる。もっとも、SDMS-αで統括される3パターンのプリセット値に任せておけば、余程のことがない限り、事足りるに違いない。

その3パターンとは、きびきびとスポーティな「A(アクティブ)」、すべてがリニアでコントローラブルな「B(ベーシック)」、レスポンスも乗り心地もマイルドな「C(コンフォート)」で、キャラクターは明確に変化。それは乗り手のマインドとも連動し、時にスーパースポーツを気取れ、時にグランドツアラーらしく一心に目的地を目指したくなり、時にアドベンチャーならではの浪漫を感じさせてくれる。そうやって、スクリーンの向こうに見える世界が広がっていくのだ。

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何にも特化せず、しかし、何にでもなれる自由な存在。それが、GSX-S1000GXに与えられたクロスオーバーというカテゴリーの意味するところであり、実際その通りに仕立てられている。

雨は午後遅くにようやく上がり、ガソリンの警告灯が点き始めた頃、帰途についた。悪条件の中で敢行したツーリングだったが、ことさら冷えも疲労も覚えないまま、一日が終わろうとしていた。そこにこそ、このモデルの凄みがある。

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《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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