EVの「ゲームチェンジャー」になるのか? 社会実装が近づくインホイールモータ… Astemo 技術開発統括本部 ダイレクター 高橋暁史氏[インタビュー]

EVの「ゲームチェンジャー」になるのか? 社会実装が近づくインホイールモータ… Astemo 技術開発統括本部 ダイレクター 高橋暁史氏[インタビュー]
EVの「ゲームチェンジャー」になるのか? 社会実装が近づくインホイールモータ… Astemo 技術開発統括本部 ダイレクター 高橋暁史氏[インタビュー]全 5 枚

来たる8月1日、「次世代EVへの搭載が期待されるインホイールモータの現在地と今後~EV巻き返しの一手と成り得るか~」が開催される。セミナーに登壇するのは、Astemo株式会社 技術開発統括本部 ダイレクターの高橋暁史氏。

今回のセミナーは以下のテーマで進められる。

1.なぜいま再びインホイールモータなのか?
2.ポテンシャルと課題
3.ブレークスルー技術
4.今後の展望
5.対談・質疑応答

講演の後には、本セミナーのモデレーターであるスズキマンジ事務所 代表(株式会社デンソー 技術企画部 CX)である鈴木万治氏を交えて、参加者からの質疑応答やディスカッションの時間が用意されている。

高橋氏に、セミナーの見どころを聞いた。

のちにポルシェを創業するフェルディナント・ポルシェは、パリ万国博覧会で画期的な電気自動車を発表した。驚くべきことに、その車両は各車輪にモーターを内蔵する「インホイールモータ」方式を採用していたという。

しかし、その後の歴史はご存知の通り。内燃機関の爆発的な進化と量産技術の確立により、自動車の主役はガソリンエンジンとなり、インホイールモータは長らく表舞台から姿を消すことになる。

それから120年以上の時が流れた現在。インホイールモータの商用化がいよいよ現実のものになりつつある。

「EVと自動運転がさらに進化した時、自動車にどのような価値が求められるか。それが我々の開発の原点です」そう語るのは、Astemo株式会社 技術開発統括本部 ダイレクターとして開発をリードする高橋暁史氏。

同社は2021年に19インチホイール向けのインホイールモータを発表し、業界に衝撃を与えた。さらに2022年からは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業」に採択され、2030年の社会実装を目標に国家プロジェクトとして開発を加速させている。そして2025年、新たに12インチホイールまで対応するラインナップを発表し、その技術力を証明した。

なぜ今、インホイールモータなのか。その問いを解き明かす鍵は、EVと自動運転がもたらす未来のクルマ社会にある。

「移動するリビングルーム」を実現する究極のソリューション

国際エネルギー機関(IEA)の「Global EV Outlook」によれば、2023年時点で世界のEV(PHEVを含む)販売台数は1700万台に迫り、2035年には約6000万台に達すると予測されている。同時に、自動運転技術も着実に進化を遂げている。S&Pグローバルの予測では、2035年にはレベル2+以上の高度な運転支援・自動運転システムを搭載した車両が全体の35%以上を占めるという。

「運転から解放された時間を、人々は何に使うでしょうか。おそらく、そこには広くて快適な空間が求められるはずです。まるでリビングルームのような快適な移動空間、それが未来のクルマの姿だと考えています」

現在のEVのパワートレインには、ほぼ100%「e-Axle」が搭載されている。モーターと減速ギア、インバーターを一体化したユニットを車体中央付近に配置するこの方式は、効率的ではあるが、どうしても車室空間の一部を犠牲にしてしまう。

インホイールモータは、この物理的な制約を根本から覆す。パワートレインをホイール内に収めることで、従来の駆動系コンポーネントが占めていたスペースが解放され、フラットで広大なフロアが実現可能になるのだ。これは、デザイナーやエンジニアに、これまでにない自由な室内設計をもたらすことを意味する。

そして、インホイールモータの提供価値は単なる空間の拡大にとどまらない。クルマにおける「乗り心地」の概念を、大きく変革する可能性を秘めている。

「インホイールモータは、その構造上、駆動トルクの発生までにギアなどを介さないため応答性が非常に高く、数十ミリ秒で反応できます。そして4つの車輪をそれぞれ独立して、かつ瞬時にトルク制御できる。これがインホイールモータの最大の強みです」

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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