スズキ『eビターラ』の新世代インテリアがめざした3つのテーマ「抜き・透き・浮き」とは

スズキ eビターラインテリアデザインスケッチファイナル
スズキ eビターラインテリアデザインスケッチファイナル全 20 枚

スズキ初のグローバルBEV『eビターラ』が、いよいよ日本に投入される。年度内の発売に向けて日本仕様に関する情報が公開された。最大500kmもの航続距離や、力強いエクステリアデザインに、スズキの新たな方向性を盛り込んだ意欲作だが、そのこだわりはインテリアにも及ぶ。

シンプルで直線基調なインパネには大型スクリーンも搭載、異形ステアリングやアンビエントライトの採用など、これまでのスズキ車にはない新しさを感じさせるものとなった。今回はインテリアデザイナーに、そのねらいや見どころを聞いた。

◆抜き・透き・浮き

eビターラのドアを開け室内を見ると、横方向に広がったブラウンを基調としたインパネと大型のスクリーンが目に飛び込んでくる。どちらかというとシンプルな仕上がりのデザインだ。

スズキ商品企画本部四輪デザイン部インテリア課課長の林田崇さんは、「ビターラ(ガソリン車)はSUVで機械式のドライブシャフトがセンターを通っていますので、それに沿って室内にセンターコンソールなどを配し、それがインパネに繋がるT字型となっています。それがとても見やすいプロポーションだったので、そこは引き継ぎました」という。そのうえで、ハイテクな部分として、「IDS画面(インテグレーテッドディスプレイシステム)や、二階建てのコンソールで新しい時代の“EV×SUV”というコンセプトに沿って表現しています」という。

しかしここにたどり着くまでに多くの案に迷うことになる。「実は最終的に4案まで絞りました。そのいずれもが甲乙つけがたく、本当に悩んだんです。環境に負荷を掛けない軽い形状で飛行物体的なイメージや、前に抜けていく、まさに抜けのいい形で、ワープする瞬間みたいな案もありました。また、ガジェット感に行き過ぎない、温かみのあるCMF(色や素材)で仕上げられたもの。ガジェット感が行き過ぎると、未来は感じますが、誰も望まない未来、永遠に来ない未来みたいな表現になってしまいますので、それを懸念した案です。ですので、それらをうまく融合させながら完成させました」と林田さんは語る。

しかし、単に融合させただけではちぐはぐな印象が伴いかねない。そこで林田さんたちデザインチームでは次の世代を表現するために、「抜き・透き・浮きという日本語を解釈してそれを達成するとことをテーマにしました」という。

“抜き”とは、「実際に抜けていたり、抜けの良いというニュアンスで、eビターラではコンソールが2階建てで本当に穴が開いています」。そして“透き”は、「透明であったり、透明素材で表現しました。例えばハザードボタンやスタートスイッチはクリア層を設けています。IDSなども背景が透けているような表現を多用しています」。最後の“浮き”は、「インパネをあえて(ドアパネルまで)全部色をつなげるのではなく、(途中で)矩形でくくりました。その部分とコンソールの下にアンビエントライトを配しましたので、全体がふわーっと浮いて見えるようになるので、EVがスーッと走っていくっていうイメージと重なるでしょう」と説明する。その新しさの上でスズキらしさを模索していったそうだ。

◆エアコンの吹き出し口を「あえて見せる」

スズキらしさと新しさを模索した結果として、林田さんはエアコンの吹き出し口の配し方を挙げる。「トレンドは薄くて見えないベンチレーションですが、eビターラはインドでも販売しますので、暑くてエアコンを思いっきり浴びたいという要望が強い。またSUVの機能性の表現という意味合いも忘れてはいけませんので、あえてアイコニックに見せる形と配置にしました」と話す。

さらに「『ハスラー』は丸3つで配することで記憶に残るようにしていますが、eビターラは4連にしつつも、そこまでコミカルなキャラクターではないので、仕立ての良さを踏まえながら大人びて、かつ機能性然としたところが伝わるように、スズキらしさを表現しています」という。

また、インナードアハンドル部分までブラウンで矩形でくくったのは、「インパネを広く見せるための常套手段です」と林田さん。一方で、あえてドアパネル全部ではなくインナードアハンドルで区切った理由は、「あえてインパネをここまでで見せています。そのドアハンドル周辺からガバッとえぐっているんです。その結果としてアンビエントライトの光と相まって端がどこにあるかわかりにくくなる、ちょっと広がって見えるぞという仕立てです」とこだわりを語る。

そしてブラウンを使ったのは、「最初はガジェット風にという意識からシルバーとか青白い白とかを考えました。ただそのままガジェットを表現してしまうのは違うだろう。EVで洗練された乗り味の中で、タフネスを感じるとのがスズキらしさ。そこで我々のカラーを色々試した結果です。また、インドではNEXAチャンネルで販売しますので上質に感じるニュートラルなブラウンと幾何学系のシボを組み合わせてプリ成形したソフトパッドを採用しました」とのことだった。


《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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